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なかなか訪れない「ドル安」。ー "偽りの逆イールド" は風前の灯火。

 ”利上げ見送り、年内にもう1回利上げ”

 昨日(9/20)のFOMCの決定はマーケットも含めほぼ "満場一致” 。イベント通過で株も買い戻しが入り、無難に終えるかに思えた。ところが思わぬ伏兵がいた。FED Dot Plot(  標題)である。

 注目されたのは2024年の政策金利見通し@5%以上が10/19人もいたのは想定外。これで一気に2年米国債が@5.2%近辺まで急落し、長期債も連れ安(金利は上昇)。 "偽りの逆イールド" は風前の灯火だ。FXではドル円が@148円台に急反発「ドル安」がなかなか訪れない。前日比プラスで推移していたNYダウは反落し、金利に敏感なナスダックも売り込まれた。

 この動きにガッカリしているのは財務省・日銀ではないか。今日、明日開かれる政策決定会合で仮に「マイナス金利廃止」などの "サプライズ" を演出しても、これでは「円安」阻止効果は薄い。それどころか「出尽くし」で更に円が売り込まれる怖れまである。「ドル売介入」も同様だ。

 「利上げ」で「通貨安」防衛に動いているトルコ、ロシア、ブラジルなども溜息が出るばかり。何しろ「ドル」が足りない不良債権対策で「利下げ」に動いている中国でさえ長期金利には上昇圧力がかかり「お金」が足りない状況が続く。本来「ユーロ安」歓迎のドイツも肝心の中国向け輸出が振るわず痛し痒し。日本同様「インフレ」を考えると必ずしも良くない。

 現状を喜んでいる財務・通貨当局は皆無だろう。まさに 「行って欲しくない方に動く」相場の原理Ⅱ。ー 「何もしない」を許さないマーケット。|損切丸 (note.com) 。この流れを汲むと、現在NYで開かれている国連総会でウクライナ「停戦」「和平協定」の動きがチラホラ見え隠れするのも頷ける。来年大統領選のアメリカとしては事態の打開を図りたいはず。もっとも独裁国家にとってはそこが攻め所にもなりうるだけに難しい局面ではある。

 悩んでいるのは大量に米国債を保有している欧州の年金ファンドだ。ひょっとしたらGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や生損保、そして日本の個人投資家の一部もそうかもしれないが、米国債の下落でMTM(時価評価、Mark-to-Market)はボロボロ「ドル高」でその一部を補っている

 「利下げ」による債券価格の回復を待ちたいが、そうなると今度は「ドル安」が襲う。売り所は非常に難しい。今までも散々 "偽りの逆イールド" に踊らされて売り場を逃してきただけに、大分目が曇っていることだろう。

 元々確率は低かったが、これで日銀は今回 "サプライズ" 「マイナス金利廃止」などには動きにくくなった。おそらく "市場予想通り" 政策維持になるだろう。だがマーケットは待ってはくれない

 今日(9/21)も10年JGBは@0.74%をつけ ”高値” を更新5年も10年も20年も30年も毎月のように入札があって市場には "JGBの雨" が降り続ける。銀行や生損保の消極姿勢が続けば 日本国債(JGB)入札の異変。ー ”禍転じて福と成す” 精神が肝要。|損切丸 (note.com) が起き、 "石橋を叩いて渡る” 日銀。|損切丸 (note.com) などと悠長なことは言っていられなくなる。これでは完全に ”Behind the Curve” (対策が後手に回ること)。

 「インフレは一時的」などと言い放って、結局政策金利を@5%以上まで引き揚げなくてはいけなくなったパウエル議長日銀も本来+2%程度で済むはずの「利上げ」が「円安」で追い込まれればFRBのようにプラスアルファを求められるかもしれない

 返す返すも昨年2月に発動した「国債・無制限指し値買いオペ」が痛かった。はっきり言って▼30円以上もの「円安」の "起爆剤" となった大失策。このツケを取り戻すのは容易ではない。筆者個人の感覚で言えば「利上げ」は既に半年以上遅れており、きっちりFRBの後を追っている遅れれれば遅れるほどコストが嵩むのが金融政策というもの「財政健全化至上主義」で低金利に固執し過ぎた財務省にも ”天罰” が下りそうな気配だ。

 (参照)「国債・無制限指し値買いオペ」はマーケットの ”最後の貸し手” ? - 「円」を犠牲にして唯一人「過剰流動性」を供給し続ける日銀。|損切丸 (note.com)

 「戦争」といい中国の巨額の不良債権問題といい、「円安」「インフレ」だけでなく世界中で問題は山積している。過去、市場の "クライシス" のほとんどは「利上げ」が巻き起こしてきただけに嫌な予感もする。特に追い込まれての「利上げ」は最悪。だから動くのは早ければ早い方がいいのだが...。70代のお爺ちゃんでは無理かもしれない。

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