「日韓徴用工基金案検討に着手で合意」がフェイクニュース? - 「悪しき腐れ縁」を断つ難しさ。

 今回はマーケットを少し離れて「悪しき腐れ縁」について少しばかり。

 KD通信が10月28日に流した「日韓徴用工基金案検討に着手で合意」の報道がフェイクニュースだとネットを中心に炎上している。まあフェイクニュースというよりも、おそらく世論の反応を見るための観測気球だろう。日韓の政府間でそれなりのやり取りがあったのは事実だろうし、落しどころを探りたい勢力がメディアも含め国内にも数多く存在するのは事実。

 しかしKD通信社には何のメリットがあるのだろう? 政権与党内の一部から頼まれて記事を書いたのか、韓国から資金的な援助でもあったのか(少なくともネット上ではそう疑われている)。スクープのような見出しで一時的なヒット率は稼げた(=広告収入が増えた?)かもしれないが、これではじり貧だ。実際ネットでは「KD通信の記事はもう信じない」という反応がほとんどだ。これはメディアにとって由々しき事態ではないのか失った信用は簡単には戻らない

 一時期「B春砲」などと持ち上げられて売上が伸びていた週刊誌もこのところさっぱりである。新聞の売上もテレビの視聴率も落ちる一方で全ては目先の売上や視聴率、ヒット率などに安易に傾倒していった結果だろう。やはりネットの登場によりメディア業界が追い詰められているという事なのか。デジタル通貨に追い詰められる銀行界と構図が似ている。大手のメディアも銀行も、自分達が世の中を動かしているという「思い上がり」は早く捨てた方がよい。その大部分をネットやITに取って代わられつつあるのだから。

 さて本題の「悪しき腐れ縁」であるが、昨今の日韓のやり取りを見ていると、筆者はかつての銀行と「総会屋」の関係を想起してしまう。役所広司さん主演の*「金融腐食列島 呪縛」という映画があったが、そこで描かれていることは**結構リアルだった。

 若手の銀行員を中心に「悪しき腐れ縁」であった総会屋と手を切ろうとするが、揉み手で擦り寄ってきたかと思えば、行員の家族を脅したり、役員に手を回したり、あの手この手を使って妨害工作をしてくる。駅のホームで「後ろには気をつけた方がいいですよ」なんてシーンも。銀行は長い間太い金づるだったわけだから向こうも簡単には手放さない。現実の出来事と重なって衝撃だったのが副頭取が自殺するシーン(これは本当にあった出来事)。「悪しき腐れ縁」を断ち切るには血が流れる「覚悟」が必要、と作中の銀行員も語っていたが、まさにその通りだろう。
 **というのも、劇中の「朝日中央銀行」のモデルになった日本の銀行は筆者の出身母体で(どこの銀行かわかってしまいますね、 ♡ の銀行(笑))、元同僚に現場の話を良く聞いていたからだ。例えば検察が行内に乗り込んでくるシーン。通常業務中にも関わらず「動かないで!」と強く言われ、ガンガン鳴っている電話も取れず、デスクの引出しや個人のロッカーの中に入っているモノは洗いざらい全て段ボール箱に入れて持ち出されたそうだ。まるで「半沢直樹」の世界だが、若干の誇張はあるものの、銀行界の現実とそう離れてもいない。よく取材されているなぁ、と感心しているぐらいだ。

 日韓も戦後70年、歴史問題を抱えつつ日本が補償の意味もあって一方的に韓国に経済援助しながら両国とも経済発展を遂げてきた。今の政権の中枢にいるベテラン議員と官僚、それに経済界は、様々な「しがらみ」の中でそれなりのメリットを「国益」の名の下享受してきたのも事実だろう。だから同じような対応=補償のためにお金を払う、を繰り返してきたわけだが、そろそろ潮時ではないか。同じやり方を繰り返すのは、今後特に日本にとって利益より不利益の方が大きくなるだろう。日本も韓国もそれぞれ自立して、「悪しき腐れ縁」から「正常な隣人」へ変わるべき時期だ。

 「悪しき腐れ縁」を断ちたくない人々は、「危機」を煽ったりあの手この手で関係の継続を仕掛けてくるだろう。これはかつての「総会屋」と同じ手法だ。しかし、近視眼的に目先の利益だけを追えば後々禍根を残すのは現在のメディア業界が証明している。「正常な報道」「正常な隣人」に立ち返るためには、「悪しき腐れ縁」の断絶は避けては通れない道だ。

 かつての銀行が総会屋にしたように、日本も何でも「お金」で片をつける、という「悪しき風習」を止めるべきだし、韓国はもう日本無しでも自立してやっていけるはず。(そもそも借金の膨らんだ今の日本にこれ以上渡せるお金などない!)***一時的な損失や障害は止むを得ないと「覚悟」を決め、その上で経済交流も是々非々でやり直せば良い。

 ***8月の日本ビールの韓国向け輸出が99.9%(=8億円程度)減るなど、いわゆる「不買運動」の影響も出ており、一方の韓国でもLCCが日本線の減便で経営危機に追い込まれるなど、経済において既に血は流れている。徴用工判決による資産売却が始まれば、もっと血が流れるかもしれない。

 折しも中国の台頭にアメリカ覇権の弱体化等、世界情勢はもの凄いスピードで変化している。デジタル通貨の登場も大きな金融変革を迫る可能性があり、****「しがらみ」「腐れ縁」にしがみついている場合ではないだろう。マーケット同様、終わったことに価値はない。これからどうなるか、どうするか、であろう。リスクから目を背けるのではなく、正面から向き合うでこそ道は開ける(=収益が上がる)というもの。ここが踏ん張りどころだ。

 ****「昔はよかった」は幻想 - 昭和の高度成長期にも「光化学スモッグ」「食品添加物」で人類は危機に直面する、と言っていた。今も「地球温暖化」などが危機感を持って伝えられているが、太陽光等の自然エネルギーや蓄電池、LEDが普及したり、電気・水素自動車の開発も進んでいる。石油などの化石燃料は近い将来なくなるかもしれないし、食品に関して言えばレトルト技術の向上から、添加物が必要ない時代が来るだろう。既得権益からの妨害工作はいつの時代にもあるが、少しづつでも前進することが大事。人類もまんざら捨てたものではない(と信じたい)。

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