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「エネルギー安全保障」と「脱・中国」。

 首相が「原発新設+再稼働」を切り出す中、監督官庁である経済産業省から「蓄電池」について面白い資料 ↓ が出ていたので、今回はそれに基づいて note. してみようと思う。

 battery_chukan_torimatome.pdf (meti.go.jp)

 いつも感心するが、こういうプレゼン資料、なかなか良く出来ている。日本の官僚が優秀な証でもあるのだが、これのために一体何十人の職員が何百時間残業したことか...。邦銀でもそうだったが、*1つの書類が出来上がるまでにチェック、差し替えが繰り返されるので、このレベルの資料が出来上がる時間を考えると気が遠くなりそう。

 ちなみに外資ではそういう時間は "無駄" 。1段階目の資料は担当者に委ね、その後プレゼンや会議で議論して修正を加えていく。これも「性悪説」主体の欧米流の良い所最初から100%を求める日本流の「性善説」的やり方では、間違いが減る分どうしてもスピードで劣る100万個の部品に1つも不良品を認めない日本的文化も再考すべき時に来ている。

 この中で目を引いたのが各国のシェア争い日本はいつもそうだが、開発など初期段階では技術力を発揮するが、その後普及する段階で「おいしい所」を他国に持って行かれる「蓄電池」の例では中韓に "鳶に油揚げ"

 ここにかつての電器メーカーの雄「日立」「東芝」がないのが何とも寂しい限りだが、どちらも「原発村」の主のような存在。「そういう事か…」と思ってしまうのは筆者だけではあるまい。パナソニックやソニーなど比較的事業モデルチェンジに成功した企業群に比べ、財務に余力が無いのだろう。

 ただ2050年には「100兆円市場」にもなると試算されているだけに、日本としても手をこまねいている訳にもいくまい。増してこの「円安」千載一遇のチャンスと言っていい。**使用済み燃料の処理や地震、津波などの事故対策に加え、テロや戦争リスクの回避に何兆円かかるかわからない「原発」に比べると「畜電池」は「未来」のある事業には違いない。

 **例えは悪いが「子育て」と「老人介護」に似ている。どちらも大変なのは一緒だが、前者が明るい「未来」に向かうのに対し、後者は終わりが見えず疲弊してしまう。国の行く末を案じるなら、やはり「未来」にもっと「お金」をかけるべきだろう。旗を振る経産省内も、あながち「原発村」一色ではないのかもしれない。

 こう書いていると "良い事尽くめ" にも聞こえてしまうが、資料では「問題点」もきちんと洗い出している。鍵になるは「原料」の調達だ。

 原料の段階ではチリ(南米)やインドネシア(東南アジア)、コンゴ(アフリカ)が主体だが、 ”製錬” ”生産” の段階に降りてくるとある国の寡占状態なのがわかる。そう、「中国」である。原料埋蔵国のほとんどは経済的に「中国」が深く関わっており、サプライチェーンが出来上がっている。これを突き崩すのは簡単な事ではなく、一口に「脱・中国」といってもいかに難事業かを端的に示している。10年単位の取組になるのは間違いない。

 ここで「切り札」になりそうなのが「全固体リチウムイオン電池」

 幸い技術面では日本が先行しているので、今度こそ "鳶に油揚げ" は避けたい。「円安」で交易条件も優位だ。おそらく最大の障害になるのが「人手不足」。企業が本気でこういう事業に取り組むなら、政府から言われずとも海外から労働者を呼ぶことも含め「賃上げ」は不可避中国進出企業が着実に減る中 ↓ 、日本の「本気度」が試されている

 マーケット的観点から考察すると、こういう諸々の状況を反映しているのが「為替」レートであり「金利」「株価」になる

 例えば「全固体リチウムイオン電池」を中心に日本が「蓄電池市場」で中心的役割を果たすような「状況」になれば、「ドル円」は一気に@110~120円レベルまで戻し、「日経平均」も@3万円どころか@4万円、@5万円も見えてくる。満更 ”夢物語" でもない

  ”競争相手” の「人民元」や「ウォン」が「円安」を追いかけて「通貨安」になっているのも「国家の意志」と考えるのが自然。このまま「円」の独歩安を見過ごせば、オセロのように全てがひっくり返る「金利」を見る時も、各国の金融政策が「国策」とどう結びついているかの考察は必須だ。

 「為替」も「金利」も「株価」もそういう「条件闘争」の結果と捉えるとマーケットも少し違って見えてくる。言わば武器を使わない「戦争」。日々ただ上がった、下がったと一喜一憂するよりも少しは面白くなるだろう。

 日本は「老人」=「既得権益」を優先するのか、「未来」=「脱・中国」を買うのかの選択を迫られている。58歳になった筆者ももう「老人」の部類なので(苦笑)古いものを軽視するつもりはないが、要は「バランス」=「優先順位」の問題「子供」「若者」の「未来」は巡り巡って「老人」にも返ってくる。この「蓄電池事業」は、10年、20年先の国家像を示せるかどうか今後の日本を探る上で良い「リトマス試験紙」になるだろう。

 思えば今の「戦争」も「脱・中国」「脱・炭素」が引金日本だけでなくどの国も生き残りに必死だ。目先の電気代や食品の「値上げ」ばかりに拘泥するのではなく、「ドル円」が@140円を超えた今 "10年後の日本" にも想像力を働かせたい。因みに筆者はまだ「日本の未来」を捨ててはいない

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