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もう「利上げ」停止? ー 興味深いFOMC@7/27へのマーケットの反応。

 昨日のFOMCでは予想通り+0.75%の「利上げ」が実施されたが、その後のパウエル議長の記者会見(下記抜粋 ↓ )に対するマーケットの反応が興味深かった

 "While another unusually large increase could be appropriate at our next meeting, that is a decision that will depend on the data we get between now and then(今後の政策決定はデータ次第). We will continue to make our decisions meeting by meeting and communicate our thinking as clearly as possible. As the stance of monetary policy tightens further, it likely will become appropriate to slow the pace of increases (今後利上げペースはゆっくりになる)while we assess how our cumulative policy adjustments are affecting the economy and inflation.

 これを「利上げは峠を超えた」と大方の市場関係者は解釈。「利上げ」予報では "@3.5%で停止" になっている。


 株式市場は諸手を挙げて大歓迎NYダウ、ナスダックに加え、ビットコイン(BTC)も急伸しており、ウォール街は "万歳三唱" (苦笑)。

  確かに直近の米住宅指標は悪化が目立ち、パウエル議長を心配にさせるには十分だったろう。 ↓ 

 ・6月 米中古住宅販売指数  前月比▼8.6%(前年比▼19.8%) 予想▼1.0% 
 ・6月住宅購入契約キャンセル(米不動産サービス会社レッドフィン):約6万件、6月発効の契約の@15%
 ー いずれも2020年4月=「コロナ暴落」直後以来最悪

 ・6月に売りに出された住宅物件数 +18.7% 2017年以来の急増

 ・7月第1週30年物住宅ローン固定金利(フレディマック、連邦住宅貸付抵当公社)平均@5.3% ← 前週@5.7%。1カ月ぶりの低水準

 だが米国債市場の反応はひと味違う「損切丸」同様、パウエル議長に対してはかなり "辛口" だ。米国債の表面金利だけ見ているとあまり動いていないように見えるが、①イールドカーブ②物価連動債(TIPS)を見ると、随分違う風景が広がる。

 FOMC前後(7/27,7/28  )の名目金利をご覧頂きたい。2~10年の ”逆イールド” はフラットニング(平坦化)し、10~30年スティープニング(傾斜化)している

 これをもっと如実に現しているのがTIPS ↓ 。FOMC前に@2.58%だった5年BEI(予想物価上昇率)は約@2.69%に上昇「インフレ」再加速を示唆している。つまり議長を信用していないということ。

 やはり2021年の「インフレは一時的」発言が脳裏に焼き付いて離れない元・弁護士のパウエル議長を責めるのは可哀想かもしれないが、今や「金融政策の失敗」は誰の目にも明らか。続・ ”バイデンフレーション” の衝撃。ー 意外な「日経平均」の健闘振り。|損切丸|note の責任は免れない。

 「今回も大統領中間選挙を見据えた政治的配慮ではないのか…」

 そう思われても仕方が無いところ。それほどマーケット、特に米国債市場の不信感は根深い。実際、せっかく下がりかけた原油価格もWTIが@98ドル台後半まで戻し、小麦なども反騰している。「また同じ過ちを繰り返すのか」疑心暗鬼になるのは当然だろう。

 とはいえ、「金利」より「量」。 ー FOMC@5/4より。|損切丸|note で「QT」(量的引締)は今後も続行されるので、引き続きコモディティ(商品市場)や住宅市場など「現物市場」の動きは注視していきたい

 ただ*政治に過度に忖度した金融政策が失敗に終わるのは、この日本が証明済み。直近の「XXXミクス」然り、「バブル」の誘因になった「円高対応」の不要な「利下げ」然り。ろくなことにならない

 *日本銀行法第四条:  "日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない" 。これが全て。政治からの独立などはなから無い

 猛烈な批判を跳ね返して「利上げ」(1994.2~)を敢行したグリーンスパン元・FRB議長「ゼロ金利解除」に踏み切った福井元・日銀総裁のような果断な金融政策が望まれるが、それも時の政権のサポートクリントン大統領小泉首相)あってこそ。今の「バイデンーパウエル」コンビには無理。昨日(7/27)のTIPSの動きを見ているとそういう思いを強くする。

 ウォール街を筆頭に「利上げ」停止は一時的には歓迎されるだろう。選挙対策としては "有り" かもしれないが、結局最終コストを負うのは国民だ。「インフレ」に関しては、マーフィーの法則通り、e.g. 「失敗する余地があるなら、失敗する」「落としたトーストがバターを塗った面を下にして着地する確率は、絨毯の値段に比例する」、ではないが、あまり良い結果になりそうにない。生活者としては心してかかるしかなかろう。

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