見出し画像

「ビッグマック指数」2020(備忘録)

 「The Economist」が毎年発表している「ビッグマック指数」の2020年版が発表されたので備忘録として記しておこう。

ビッグマック指数2019

 日本は@25位。近年は大体この辺りをうろうろしているが、2000年には堂々の5位 ↓ 。アメリカを上回っていた。急激なインフレに見舞われているレバノンは例外として、消費税率の高い北欧諸国など上位常連のメンバーには日本ほどの大きな変動はない。

ビッグマック指数2000

 もともと「ビッグマック指数」は各国の「購買力平価」を計るために考え出された指標で、これは1人当たりGDPとかなりリンクする:

1人当たりGDP2019

 2019年で見ると日本は奇しくも「ビッグマック指数」と同じ@25位。これも2000年はこうだった:

1人当たりGDP2000

 2000年と言えばまさに「デフレ」の入口に差し掛かっていたわけだが、その時は@2位でまだまだ余裕があった。そこからたった20年でこれほど生活が苦しくなるとは、ほとんどの日本人が想像しえなかっただろう。

 未だに「日本は裕福な国」と信じて疑わない人が多いのはGDPがまだ世界@3位だからだろうか。 ↓ 

画像5

 GDP@2位の中国@5位のインドも急激に伸びてきているのは事実だが、1人当たりGDPで見るとまだ@67位@144位に過ぎない。急激に豊かになっていると言われるタイも@80位だ。

1人当たりGDP2019 (63~80)

1人当たりGDP2019 (120~145)

 基本的に「金持ち」比率の高い欧州の順位が高いのは別として、@7位のアメリカなどは貧富の差の拡大も顕著で、一口に「豊かさ」といっても定義するのは難しい。中国、ロシア、タイ、インドなども「富」が一部の「超富裕層」に集中しているのが特徴なので、全体的な「豊かさ」が広がるには結構時間がかかるかもしれない

 一方「理想の共産主義国」「総中流社会」と言われた日本だが、それ故に「デフレ」をきっかけに「豊かさ」ではなく「貧しさ」が広がっているのが問題だ。2015年以降は消費税に社会保険費、加えて人件費の上昇に伴う「生活費」の増大が人々の生活を圧迫しており、さしずめ「緩やかなスタグフレーション」の状況といって良い。

 元・金利トレーダーの意見としては、やはり2010年以降の異常な低金利、特に現・黒田総裁の下で ”不当” に続く「異次元緩和」「マイナス金利政策」が広く浅く国民生活を圧迫していると考えている。

画像8

 家計の借入・ローンを「預金」が大きく上回る日本では、これは「隠れ増税」@1%当り+10兆円(=消費税@+2%に相当)もの「利息収入」を国によって削り取られているのだから消費が伸びるはずはない本来「金利」が持つべき ”利益分配機能” を放棄している。

 「インフレ目標」を掲げながら、下方バイアスのかかったCPIを放置するのは「国債管理政策」のための「確信犯」だ。そのせいで10年国債の「実質金利」は@+0.77%という、*先進諸国の中では「異常値」になってしまう。これこそ「無理は通っても無理」

画像9

 *「皆さん、円は金利が高いですよ、どんどん買って下さい!」と世界中の為替トレーダーに宣伝するようなもの。「実質金利」でドルが円に追いつくには米10年債金利は@0.94%→@2.30%(+1.16%)も上昇しなければならないAIプログラムトレードを駆使するクォンツ系ファンドなら迷わず「ドル円売り」の指示が出るだろう。(名目)金利を下げようと思ってしたことが逆に(実質)金利の高騰を招く ー 皮肉なパラドックスである。

 まあこれらのデータについては様々な解釈もあるので、ここでは 1 note. ライターの意見に留めておこう。大事なのは出ている「数字」= 事実(Fact)。読者の皆さんもこの「数字」を自分の生活に照らしてみるなど、様々な思いを巡らせてみるのもいいかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?