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JGBの ”怪” -「利上げ」確実なのに金利が下がる不思議

 2/22衆院予算委員会 植田日銀総裁「賃金上昇を反映する形でサービス価格が緩やかに上昇する姿は続いている」
「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している。そういう意味でデフレではなくインフレの状態にある」

 植田総裁が「インフレ」と言い切ってちょっと驚いた。これは明確な方針転換で、余程のことが無い限り3~4月での「マイナス金利解除」は確定

 さぞやJGB(日本国債)を売りに来るかと思いきや、20~30年の超長期ゾーンはむしろ金利が低下。確かに決算期の2~3月は4月からの新年度に向けて生損保などがJGB残高を積み増す時期ではある。だが、それにしても…

 やはり まだまだもの凄い「金融緩和」-まるで昭和の ”牛歩戦術” 的「利上げ」|損切丸 (note.com) で「マイナス金利解除後、当面は緩和的な金融環境が続く」が効いている財務省や日銀から ”指導” もあったのだろう。市場を荒らさないように着実に買っている印象だ

 だが「緩和的な金融環境」は危うい。それがゼロ金利なのか、@1%なのか、@2%なのかはっきりしないCPIを下回る「実質マイナス金利」なら「緩和的な金融環境」は続く

 これで思い起こすのは2022年初の米銀の米国債戦略の失敗CPIがまだ+5~6%に急騰する前で油断があったのだろうが、FRB「利上げ」のターミナルレート(政策金利の到達点)を勝手に@2~3%と決め付けた。その後の結果はご覧の通り。政策金利は@5.25%まで上昇、シリコンバレー銀行(SVB)などの中堅行が破綻

 20年、30年はとても長い。それだけリスクもあるわけで本来簡単に手が出る代物ではない。ある意味株やFXより危険。それなのに当局に ”指導” されただけでホイホイ買ってしまうのは、最終的な損失を顧客に転嫁できるという甘えがあるから。確かに「デュレーション・マッチング」と言って顧客の保険契約期間に合わせた運用は必要。だが仮にも ”プロ” ならリスクに真摯に取り組むべき。結局「顧客軽視」≓「金融当局重視」と言わざるを得ない。運用成績よりも「横並び重視」である

 まあこういう事情を知っている側からすればホイホイついていかない事「損」しても構わない市場参加者からは「お金」を頂くだけである

 20~30年で 「金利」の ”磁力” |損切丸 (note.com) が働くのはせいぜい@2%からドルが@5%まで上振れした事から鑑みるに、いかに低金利の「円」でも@3%ぐらいまで上昇するリスクは見ておいた方が良かろう。総裁が「右肩上がり」と発言しているのも気になる(筆者も同意)

 長期負債を抱えている生損保が破綻するとは思えないが「預金」など短期負債で「資金繰り」を回している銀行、特に財務基盤の弱い地銀・信金は危ないSVBの二の舞がないか心配だが、そこは日銀・金融庁が ”鬼のモニタリング” でチェックしていくのだろう

 「損」しても構わない市場参加者からは「お金」を頂くだけと書いたが、そうなると「新NISA」も心配になる。月2,000億円のペースで海外株を買っているのにNYダウやナスダック、独DAXなどはそれ程上がっていない英FTは未だに年初来マイナスだ。それだけ「売り」が出ているということ

 「円安」頼みの資産運用には危うさもあるが、まあ「貯金」一本槍も考えもの2023年の運用成績 ↓ を見ると海外の ”プロ” は「日本」に「お金」を突っ込んでいる。筆者も選択肢としては日本株が海外株の前に来る

 折しも「バブル後最高値」をやっと更新した「日経平均」だが、その内容は様変わり ↓ 1989年→2024年の変化で見ると製造業、銀行中心からテクノロジー等に移行しているのが判る。30年間トップで居続けているのはトヨタだけ。今後も「変化」に応じた銘柄選択が鍵になるだろう

 1989年と2024年の違いは「多極化」*「バブル」ではPERが60倍を超え、業績の裏付けもなく何でもかんでも値を上げたが今回は違う上がる株と上がらない株がはっきりしており、インデックスを見るだけではわからない。「賃上げ」もそう

 *不動産「リモートワーク」ブームの時は都心まで1時間圏内の地域が潤ったが、東京が人口流入超に転じてからは逆流が起き「郊外売り・都心買い」に転じている。全体だけ見ていると見誤ることになる

 今回の植田総裁の「インフレ」発言、実は年末の「チャレンジング」を上回る大事件のはずだが、下がる超長期JGBの金利を見ていると正直なんだかなあ…。まあやっと ”本音” を語ってくれことを喜ぶべきなのだろう。「史上最高値更新」の株価を盾に総選挙に売って出る算段なのかもしれない

 「金利+1%上昇で保有国債の評価損▼40兆円」

 こう語っているので+1%の「利上げ」は見据えているのかもしれない。2022年のドル金利相場を見て判ったと思うが、金利は上がり始めると早い「損切丸」@2~3%で「円金利資産」に乗り換えという "大きな絵" を描いているが、そのためにはどう準備していくか「麻雀」と「投資」|損切丸 (note.com) よろしく、牌を切る順番を間違えないようにしたい

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