"壮絶" な「サバイバルゲーム」に備えて ー 論点整理。
いよいよ "壮絶" な「サバイバルゲーム」開始の様相を呈してきた。昨日(6/21)NYダウは6/18のいわゆる ”トリプルウィッチング” の下げをほとんど取り戻した格好だが、2020年までのように ”ほとんどの投資家が笑顔” とはいかないようだ。来たるべき「戦い」に備えて論点整理をしておきたい。
1.「インフレ」は死んではいない
まず2021年相場をリードしてきた「インフレ」について。米CPIが年率@+4.2%(4月)、@5.0%(5月)となったように、物価は急激に上がってきた。というより、パンデミックの収束が見えてきて「需要の正常化」が始まったと考えるのが妥当だろう。
問題は「供給力」。多くの店舗、企業の淘汰が進んで「供給力」はパンデミック前に比べて極端に落ちている。その代表格は「半導体」だが、これは一朝一夕で克服できるものではない。そこへ「米中対立」が重なっているため、今までのように「グローバリゼーション」の恩恵も受けられなくなっている。だから「インフレ」は死んではいない。木材も銅も足りないままだ。
ミスリーディングなのは米国債、特に10年超の長期金利の低下だ。金利が下がると「景気減速」を想起しがちだが、今回の現象はあくまで「損切り」「レパトリ」が主因。6/16 FOMCの ”ビックリ+5BP利上げ” が引金にはなったが、「BEIトレード」≓ e.g. 5年TIPS買+T-Bond先物売(7年米国債相当)や「スティープニング」取引などにポジションが偏りすぎていた。 ”理論派” トレーダー達は「自信満々」だったわけだが、得てしてこういう時に「逆を付かれる」ことが多い。米長期国債の売りがあまりにも多かったと言う事。
2.もはや "お金" は余っていない
「あり余った "お金" が株式市場に流入している」
株価が上昇すると未だに "したり顔" でこういうことを言うエコノミストやメディアが散見されるが、一体いつの話をしているのか。もはや「お金」は余っていない。
「損切丸」では「政府預金」の謎。↓(2020.9.14稿)が解けた2020年9月に「過剰流動性」は終了したと分析している。発信地は「過剰流動性」の震源地「日本」。↓ (2020.10.22稿)
2013年の「黒田バズーカ」以降、邦銀はJGB(日本国債)を日銀に奪われ、手元に余った「円預金」を押し出されるように「外債投資」に振向けてきた。その額実に400兆円。為替直先や通貨スワップ市場を通じて「ヘッジ付外債」という形でそのほとんどはドル債投資に向かったため、米国投資家はいわば巨額の*「フリーマネー」を手にした。それが株式市場に向かっていたのだから相場が下がる訳はない。
昨日はさすがに日経平均が▼1,000円以上下げてETFの買いに乗り出したようであるが、3月の「金融政策総点検」以降「日銀バランスシート」はほとんど動かなくなった。事実上の「出口戦略」は既に始まっている。
米国債金利の上昇そのものが「過剰流動性」終了の証拠。金利が上がった下がったと大騒ぎしているが、現在の米国10年債金利は@1.49%。2020年9月にはたったの@0.67%しかなかった。これを「過剰流動性」と呼ぶのであって、今は全然「過剰」ではない。金利市場はきちんと機能している。
つまり「限られたお金」を各市場が奪い合っている訳で、投資の巧拙で勝ち負けがはっきりしやすい。株等の急落時に「押し目買い」もいいが、2019~2020年とは状況が大きく異なっている点は認識しておくべきだろう。
3.「損切り」「レパトリ」
米国債の「祭り」はほぼ終了。昨日(6/21)アジア時間の壮絶な「踏み上げ」e.g., 30年債@1.95% が終了のサインだった可能性が高い。「投げ」が先行していた物価連動債(TIPS)だが、5年BEIが一時の@2.40%割れから@2.46%まで戻している。
つまり「インフレ」見通しそのものには変化がない。筆者はこのBEIに米国債の名目金利が近付いていく相場を想定している。大分酷い目にあったので、トレーダーも金利上昇方向の取引については慎重に取り組んでいくだろう。基本的にはFRBの利上げに平仄を合わせていくことになる。
さて、他に「苦しんでいる市場」となると「日経平均」だろうか。「インデックス連動」「毎月積立型」のような運用をしている人が苦しそうだ。「日経平均」と言っても一部の銘柄の比率が高かったり、**必ずしも「インフレ」に対応しているとは限らないからだ。
アメリカでも中国でも「国家主権」から忌み嫌われている「ビットコイン」も苦しそう。昨日は直近安値近辺の@32,000.-割れ。テスラ社が「車代金支払に採用する」と発表したときには一筋の光も見えたが、その後撤回。何せ「通貨」としての ”リアル” に乏しく、価格の変動が激しい ”悪魔的” 側面ばかりが際立っている(6.20.「お金」に思う。↓ ご参照)
さてこのあたり頭を整理して「戦」に臨むとしよう。それでも「晴天の霹靂」「驚天動地」が数多あるかもしれない。マーケットは「感情」や「欲望」を揺さぶりにくるだろうが、頭をクールに保ちつつ、あくまで ”FACT” に基づく判断を継続していきたい(ちょっとしんどそうだなぁ💨)。
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