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金利は語るⅧ - 「閑散相場」を覆う「金利低下恐怖症」。

 まだ夏休み前だというのに「閑散相場」が続いている。おそらく原因は相場全体を覆っている「金利低下恐怖症」だ。大きな転換点になったのは:

 ①米CPI@+4.2%(4月)、@5.0%(5月)後の米国債金利低下

 ②6/16 FOMCにおける予想外の ”+0.05%利上げ” (@0.05~0.15%)

 どちらも米国債金利の上昇を促す強い要因のはずが、金利は逆行して低下10年米国債金利はピークの@1.78%から直近は@1.46%まで低下している。メディア等の情報を総合すると、長短金利差の拡大に賭ける「ステープニング」取引でファンドや銀行に大きな損失が出ている。

 これは相場で典型的な「織り込み過ぎ」の反動だ。2018年以降、マーケットの主役に躍り出た「インフレ懸念」だが、あまりにも多くの銀行やファンドのリスクが一方向に傾いてしまった。その後起きた「逆流」はいわゆる "Sell the Rumour, Buy the Fact" (噂で売って事実で買え)。

 実際木材( e.g.  "ウッドショック" )、大豆 ↓ 等で価格急騰が起きたので、トレーダー達がそちらへ走りたくなるのも理解できる。しかしその後金利低下と歩調を合わせるように多くの商品相場が ”ミニ・クラッシュ” を起こし、「ステープニング」取引等の「リフレトレード」と同時進行でコモディティも大量に ”仕掛け” ていた事が判明。金利取引以外にも大量の「負傷者」が出たことは容易に想像できる。

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 筆者の現役時代にもマーケットでの ”仕掛け” は良く見られたが、最近は高騰→クラッシュのサイクルが短くなり過ぎている。一時騒ぎになった「ゲームストップ株」↓ が典型(今は値を戻している)で、AIを駆使したシステムトレードが主流になっている影響もあるのかもしれない。

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 では今回の「インフレ騒動」は単なる ”仕掛け” =投機に過ぎないのか。確かにビットコイン金 ↓ は多分に投機的だったし、他のコモデティが下がる中、今度は原油価格  ↓ が上がるのは ”モグラ叩き” のようだ。

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 だが実際世界中でCPI(消費者物価指数)が上がっており、単なる ”投機” かといえば、そういう事でもなさそう「半導体不足」に見られるように、米中景気の急回復をテコに急拡大する「需要」に「供給」が追いついていないのは厳然たる事実。相場はそれを ”デフォルメ” しているに過ぎない。

 今のところ「金利低下恐怖症」の恩恵を受けているのは欧米の株式市場だろう。いつ金利が上がり出すか e.g. FRBの金融引締め時期、ビクビクしながらも「金利が上がらないなら主要市場の株でも買っておこうか」ということになる。従前から書いてるが「投資銀行」というのは "マーケットが動いていないと死んでしまう生き物” なので、こんな相場付になってしまう。

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 だが今回の ”不条理なドル金利のイールドカーブ急変動” に見られたように、一気に儲けを持って行かれる「恐怖」はしばらく消えない。当然「利確」「損切り」のサイクルは短くなるので、神経質で儲けにくい "壮絶" な「サバイバルゲーム」に備えて ↓(6/23稿)おくべきだろう。

 米国債金利市場FRBの金融引締めに備えて、その一挙手一投足に注目していくことになるが、「金利低下恐怖症」を克服してどこで売り=金利上昇方向で入るのか、しっかりとした「シナリオ設定」が求められる過去に大勢の "犠牲者" を生んできた「利上げ相場」では、**少額でもしっかり利益を残すことが "大きな未来" につながる。まさに ”プロ相場"

 **例えばバブル期の日本預金金利が@7~8%もあった時期に「お金」を預金できた人達が "大勝利"を収めた。@8%の10年貯金が複利で倍になった例もある。現在のように「お金」がジャブジャブだと想像出来ないかも知れないが、当時は ”借金だらけ” で預金をする余裕などなかった。ここでいう「大きな未来」とは金利上昇後に訪れる急激な金利低下局面のことで、金利上昇局面を乗り切った人だけに訪れる「未来」である。

 2021~2022年相場は「回収の年」と繰り返してきたが、2018~2020年の「過剰流動性相場」の ”山” が大きかった分、 ”谷” も深そうだ。それが ”ゼロサム・ゲーム” の道理。市場の上下動があるので一見儲かりそうだが、これは一種の ”罠" 「利上げ相場」=「儲けにくい相場」をプロ達は十分理解しており「損してくれる人」を創り出すために躍起になって相場を動かす。こういう相場が得意な人以外は自重した方が賢明だろう。

 これはスポーツなど ”勝負事” 全てに共通するが「ピンチの後にチャンス有り」。守りが次の責めの起点になる。堪えるべき時に堪えるのが勝つために必要なのは「相場」も「投資」も同じだ。

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