中華ランチ_郡山

郡山に帰省@11月22日 - 地方は本当に「疲弊」しているのか?

  ある中華ランチ@郡山 900円 - 豚肉とキクラゲの炒め物、油淋鶏、蒸し餃子2個、醤油ラーメン(小)、大盛りご飯、杏仁豆腐+コーヒー

 実家の補修工事があって立ち会いのため郡山(福島県)に帰省した。東京から地方へ行くと物価の違いを感じるのが常だが、↑ のランチの値段には驚愕。900円はちょっと安すぎないだろうか?味もまずまず。ファミレスのBミャン(笑)でもお総菜一皿で800~900円したりするので、これは破格値。(1,000円以下のランチもあるにはあるが、これほどの量と内容ではない)11時過ぎに母と2人でお店に入ったが、その後長蛇の列になった。

 その他にもいくつか*「発見」があったので、ここに書いておく。

 株価だのインフレだのGDPだの、とかく経済や投資に関する話は「頭でっかち」になりがちだ。しかし、街中に出て世の中の実際を随時確認して見ることはとての大事。名所を巡ったりおいしいものを食べるのも良いが、旅先などで少し視点を変えて観察してみるのも、それはそれで面白いものだ。

 まずはスーパーのレジ。いわゆる「セルフレジ」がかなり浸透していて、買い物客はみんな当たり前のように、自分でバーコードでピッ、と会計していた。東京だとパートの方の仕事をただでやってあげているようなものなのに、値引きも無しで良く成立するものだ。それと、よく万引きが横行しないものである。厳重にチェックしているようには見えなかった。

 思うに、郡山ではパートを募集しようにも人が集らないのだと思う。それでやむを得ずセルフレジが普及していったのだろう。それなら時給を上げればいいのではないか?

 想像するに、郡山では「適正」と思われる賃上げぐらいでは人が集らないので、東京並みに時給1,200円とかに「過剰に」引上げると、人は集るかもしれないが、今度はコスト増で価格を大幅に引上げなければならない。

 冒頭の中華ランチの例で言えば、900円を1,000円にするぐらいでは済まず1,200円ぐらいになってしまうので、商売自体が成り立たなくなってしまう。事実ランチで1,000円を超えると客足が遠のいてしまうと言う。結果、やむを得ず「セルフレジ」や最近よく見る「タブレット注文」などでなんとか凌ごうとしているのだろう。

 - 何か経済の循環が間違っている気がする。だが、こんな付け焼き刃的な対応はいつまでも続けられないだろう。

 本来なら人件費を上げる → 消費が活性化 → 価格を上げる → 業績が上がる → 人件費を上げる ...の好循環を示してもよさそうなものだが、需要があるのに「人手不足」がネックになっている。その点は需要不足で苦しんだ今までのデフレ不況とは決定的に異なる。決して地方に仕事がないわけではなさそうだが、人の多い東京などに比べると人材確保が難しく、人件費も過剰に上げないと採用が難しい状況なのかもしれない。

 実家の補修工事の話をすると、たまたま筆者の同級生が担当する事になった。彼は5年前に地元の信金から工務店に転職していた。大手行でもそうだが、50歳を過ぎると銀行では役員候補以外はほとんど外へ出されてしまう今土木・建築業界は需要が堅調で、彼はいいタイミングで転職したものだ。地方の信金などはこれから業績が下がる一方なのに、**最近相次ぐ台風被害などは工務店には「需要増」の追い風にさえなっている。しかし、これで銀行と同様に金融エリートと思われている保険会社が苦境に陥り、反対に、土建業界が潤うというのは何とも皮肉な話だ。このような天災はこれからも毎年続くと考えられ、一過性の出来事ではないだろう。

 **台風19号では、実は死亡人数は福島県が最も多く、阿武隈川やその支流の氾濫で広範囲に被害が及んでいた。筆者と工務店の彼の母校の小学校も水没してしまい、来年春まで違う中学校で間借り授業を余儀なくされている。この復旧工事にも彼の工務店は関わっているという。こんな事は初めてだが、これからはこの「史上初」が毎年続くのだろう。

 そこで「人手の確保が大変でしょ?」と質問したのだが、返ってきた答えが「去年ベトナムから6人研修生で来て、来年も6人予定している。みんなやる気満々だよ。休みの日も出てきて仕事してるし。」-ベトナム!折しも人件費の上がってしまった中国からベトナムへの工場移転が進んでいる、と言うニュースが流れているご時世、こんな田舎で世界とつながっていたとは。この会社では***「ベトナム支店開設」まで視野に入れているという。

 ***この工務店の社長も筆者と同世代の2代目。せっかく技術を伝えるのだからベトナムでも商売にしたい、と思うのは同然だろう。別の高校の同級生の1人もやはり父親のリフォーム会社を継いで積極経営に乗り出し、最近吉祥寺にショールームをオープンしたらしい。おそらく「人集め」の面で東京の方が有利だったのだろう。酒蔵や飲食店チェーンなども団塊世代の後を継いだ40~50歳代の若い経営者が新しい事業を広げる事例が増えている。それも都市部ではなく地方で、だ

 つまり、デフレ不況時とは異なり地方は決して「疲弊」しているわけではない。むしろ需要は増えているのに働き手の不足が経済の足を止めているように感じる。確かに筆者の母も含めて高齢者が増えているのは事実だが、それは東京も同じ。****それに伴う「高齢者需要」もまたあったりする。

 ****例えば、80歳の母は車の運転が随分おぼつかなくなってきて、あちこちぶつけて車は傷だらけ。池袋の事故のようなことがあっては嫌だから(最もうちは上級国民ではない(笑))、もうそろそろ免許を返上して欲しいのだが、なかなかそうもいかない。なぜか。地方出身者なら判るだろうが、地方では車がないとどこにもいけないからだ。

 UBERとまではいかないが、スーパーや飲食店を回る「乗合バス」のようなものを立ち上げて、各企業とコラボすれば新しい産業モデルになりうる。これに行政が乗ってくれればなおいい。実際にそういう取り組みを開始した自治体もあるようだし、今後の地方の新しい形として期待できよう。

 ただ、ここでも鍵はやはり働き手の確保だろう。それでなくてもバスなどの運転手は慢性的な人手不足で、超過労働が原因で痛ましい事故が起きたりしている。いくつかの自治体は減税措置など「移住促進策」を施行しているが、移住者の雇用をこういった事業と組み合わせれば上手く回るかもしれない。高齢ドライバーによる事故も減って、まさにWinWinだ。

 デフレ時代には「シャッター街」があちこちで見受けられ地方は本当に疲弊していたが、経営者も代替わりを果たしつつあるし、今は更新需要とも相まって確固とした需要がある。冒頭のランチの例で言えば、値段が安いとはいえ、平日の外食ランチに人が並ぶのは「疲弊した街」の様相ではない。少なくとも駅前が荒廃していたデフレ不況の時には見なかった光景だ。

 今度帰った時に冒頭の中華ランチが1,200円になっても成り立っていれば、それは郡山復活の証と言えるのかもしれない。年金暮らしの方々は支出が増えて少し大変になるかもしれないが、「乗合バス」で車がいらなくなればかなりのお金が浮くはず。その時には街中にベトナム人等のアジアの人達が溢れていたりして。あと5年ぐらいが地方経済復活の正念場かもしれない。

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