開けてしまった「パンドラの箱」。- 「ドル売り・円買い介入」が及ぼす「金利」への影響。
"1998年6月17日以来、24年3ヶ月ぶりの為替介入”
遂に日銀(決定するのは財務省)が為替介入に動いた。今度はおなじみの「円売り介入」ではなく、「円安」を止めるための「ドル売り・円買い介入」。大きな時代の転換点に至った。
ドル円は@146円一歩手前から@140円台まで急落。FXに関しては専門家を含め多くのコメントが興奮気味(苦笑)に寄せられているので、「損切丸」では「金利」との連関性について斬ってみたい。
(参照) 大規模介入政策の”歪み”。ー(例)「円売介入」における金利と為替の連関性。|損切丸|note
「米国債金利上昇」と「ドル安」の相互メカニズム。|損切丸|note
財務省為替市場課で管理している通称「外為特会」@2022.3 がこれ ↓
財務省とて ”打ち出の小槌” があるわけではなく、*売るための「円」はFB(Financial Bill、政府短期証券)を発行して市場から調達している。つまり元手は我々の「預金」。
「外為特会」はヘッジファンドも真っ青の「巨額投資ポートフォリオ」。平均持ち値@108円程度とすると**為替で+32兆円も儲かっている。
「介入にはアメリカの同意がいる」
こういう言説をよく目にする。一定の配慮は必要だがアメリカの「許可」は必要ない。財務省が「ポジションの利益を確定をしたい」と言えばそれまで。相場が逆に動いて儲け損ねた場合、責任を取れないからだ。
「介入には効果が無い」
これもどうか。1日の取引量が50兆円とも100兆円とも言われる中で1兆ドル程度の「ドル売り」では効果が無いようにも映る。だがFXのほとんどは短期売買。買った分、必ず売るので相場には中立だ。真の「需給」を決める輸出企業の「ドル売り」や海外旅行の「ドル買い」は多くはない。そんな中、24年ぶりに10兆円単位で出てくる「ドルの売り切り」の意義は小さくない。
さて本題の「為替介入」と「金利」の連関性だが、おおまかには ↓
つまり今回の「ドル売り・円買い介入」は米国債の売り(金利上昇)要因になる。手持ちのドル預金が尽きれば、財務省は保有米国債を売らなければならない。欧米市場で長期債を中心に売りが加速したが、何しろ「世界最大の米国債保有者」である。このぐらいの反応は当然だろう。ここでも「低金利」の大幅修正が始まった。
「パンドラの箱」を開けてしまったのか。
「円」は逆に発行しているFBが減るのでJGBは買い(金利低下)。後輩(現・財務官)から先輩(元・財務官=日銀総裁)へのアシストにもなる。
筆者の理解は「為替介入」は「ドル売り/ドル買い」圧力を一時的に「金利市場」に「ドル金利低下/上昇」として逃がす行為に過ぎず、「金利」を通して「ドル売り/ドル買い」に戻ってくる。つまりFXには中立。
逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸|note でも解説したが、最終的に為替レートは「貿易収支」や「経常収支」に収斂する。
これまでの1兆ドルに上る「円売り介入」は本邦企業が「円高対策」として海外に工場を移転するための "時間稼ぎ" だった訳で、今、その逆が起きている。***「円安」を止めるには「貿易収支」を再度黒字化するような産業政策が必要で、今の「介入」もその "時間稼ぎ" にはなる。
と、こんな ”筋論” ばかり述べてFXトレーダーにはよく煙たがられたが、確かに目の前でドル円が@145.90→@140.90→@142.77… と動かれたら、そんなご託を言っている暇はなかろう(苦笑)。彼らが言っていたがまさに「ゼロヨンレース」。信号が青になって早く飛び出した方が勝つ。
だが大事な「お金」を「投資」しようとするなら ”筋論” は大事。「インフレ」にFRBのターミナルレート(政策金利到達点)、「円安」 etc., etc. 。中長期的に考えなければいけない事がいくつもある。
2021年以降「過剰流動性解消」をテーマに動いてきたが、その点は「7合目」まで来た。 "逆張り" を考えたい所だが日本はまだ不確定要因も多い:
①高く分厚い「財政健全化至上主義」の壁
今回の「金融緩和」+「円買い介入」では為替利益は確定できるし、国債(FB)も減る。 "省益第一" の財務省にとってはいいことずくめだ。もっともその代償で「インフレ税」を払わされる国民はたまったものではない。これでは「財務省栄えて国滅ぶ」だ。
②「利上げ」が進む欧米よりも高い「金利上昇リスク」
③ "隣国" 中・露による「不良債権問題」「戦争」
ここは慎重の上にも慎重を期したい。それにしても今日(9/22)は大変な1日でした。お疲れ様。
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