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"うまい話" には「裏」がある。ー「ルーブル高」の "カラクリ" 。

 「おっ、ルーブル滅茶苦茶上がってる!」

 一時@150台まで上がったドル/ルーブル(=ルーブル安)が毎日値を下げ、昨日(3/29)は遂に半値近い@83台まで急落「停戦合意が近いから?」「@150で売っておけば倍になったのか...」などと思うなかれ。当然この動きには「裏」がある。

 筆者は個人でFXを手掛けたことはないが、今のドル/ルーブルまともに取引可能なのだろうか。そういえばアジア時間は取引禁止のままだし、ターン(売買いの価格差)も ”ゼロ” 。何か変だなぁ...。

 技術的な面を確認してみよう。FXの仲介会社は取引相手の銀行の間をつなぐだけだから、例えばルーブルの取引相手はどこかの銀行。今ルーブルを扱う銀行は限られており、しかもそのほとんどは ”SWIFT" から除外されている。仮に相手方が制裁から除外されているズベル銀行として、こちらの「ドル売・ルーブル買」は受けてくれるだろう。

 だが「ドル買・ルーブル売」はどうだろうか

  ”SWIFT" 制裁以来、「外貨売り」が禁止された国内銀行「外貨買い・ルーブル売り」の一方通行。これは株式市場も同様で「外国人売買禁止」「空売り禁止」で「株買い」の一方通行「損切り」したくても出来ない状況だ。それでも上がらない株価は、それだけ深刻とも読める。仮にFX「両側通行」に戻したら、海外から「株売り」+「ルーブル売り」が殺到して一気に逆噴射するはず。

 それでもこのスクリーン・プライスを動かしているのものは何だろう。

 人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのかⅢ。ー  "非友好国" に「ルーブル買介入」強制?|損切丸|note を参照して頂ければ分り易いが、中国インド天然ガスを購入した場合、受け取った人民元やインドルピーをルーブルに換える必要 ↓ がある。これはヨーロッパがガス代金で渡すユーロも同様

 何でも国内業者は外貨売上の80%を「ルーブル転」する義務を課せられているそうで、これを中央銀行相手に行った場合、こういう "ターンゼロ" の「一本値」国が決めた国内のみの「固定レート」になる。一方国外で自国通貨をそんな "安値" でルーブルと換えたりする銀行はない。つまり*「国内」「国外」の二重相場構造に分断されていると言う訳だ。

 *「1ルーブル=@400円の時代にベルリンで円に換えようと思ったら@33円にしかならなかった」。こういう話を目にしたが、昔からそうだったのだろう。「信用」の裏付けのない「お金」は本当に「怖い」

 FXでも小口なら対応できる欧米の銀行もあろうが、100億単位の市場取引ともなれば話は別。「天然ガス代金」「ユーロ債償還」をルーブル決済、などと勝手な事を言い出しているが、G7も投資家も拒否しているのが何よりの証**「ルーブル保有」による為替リスクを "外" に転化しようという "企て" であり、「お金」に厳しい欧米勢はこんなあからさまな ”罠” には引っ掛かからない「どうしようか」などと悩んでいる日本人とは違う

 **「円建5年債@15%(但し元利金はトルコリラ渡し)」。この手の「高利回り仕組債」で大事なのは括弧内の ”但し書き” 。実は「トルコリラ買」の為替リスクを負わされており、FXで「リラ買・円売」を持ってるのと一緒。いや「金利」でマージンを抜かれている分割りが悪い@15%などリラ安進行で吹き飛んでしまい、円建で元本割れが大量発生。筆者は香港勤務時に、フランス系の銀行がいつもこの手の「怪しい商品」を持ち込んできて辟易としたが、彼らにとってこれはノーリスクでマージンだけ確保するおいしい商売。要は引っ掛かる "間抜けな奴" が悪いのである。

 「銀行の人が勧めるから大丈夫だと思って...」

 一昔前に  の「仕組債」や「外貨建商品」で「元本割れ」が社会問題化。今では金融庁も目を光らせ、裁判で銀行側が負ける判例が相次いだが、未だに「昭和世代」を中心に日本人は「お金」に甘い。これは「リスク」に対する認識が低いからであり、筆者が「損切丸」を始めた大きな動機だ。

 ルーブルの例で言えば、ロイターFX***スクリーン・プライス(  標題)でいつでも取引出来ると信じがちだが実際はそうではないドル円日経平均はまだしも、こういう ”怪しい代物” には特に注意が必要。まして今は「非常時」FXで果敢に挑むのも良いが、常に「逃げ道」を確保しておくことが大事になる。

 ***「フル・アップ」=信用枠が一杯で貸せないあるはずのプライスで取引出来ないストレスは「無担保資金」を取引するマネーマーケットが最大だろう。とにかくブローカーが示すプライスで「マイン!(取るよ!)」と言っても信用枠が一杯なら取引は成立しない。これは無担保であるが故の「貸し手優位の原則」なのだが、実際には信用枠が余っていても、例えばもっと金利をつり上げられると貸し手が思えば「フル・アップ」と言ってもいいブローカーも銀行名を明かす必要が無い。筆者が「欧州通貨危機」で「やばい!」と思ってポンドを取り始めた時、最初は@20%だったが「フル・アップ」が何回も続き、最後に取ったのは何と@150%。後に英銀に転職してロンドンのポンド担当者に言ったら「あの時は儲かったなあ」だって(苦笑)。かくも非情な世界なのである。

 「世界は残酷なんだから」

 今回の "侵略" で身に染みた日本人も多いと思う。国内は平和そのものだが、 ”壁外” に出れば取って食おうとする輩がうじゃうじゃしている。まあ国内も「利回り@8%の不動産投資」「85歳でも入れる保険」(多分今後問題化する。筆者の母は止めた。苦笑)等等 ”罠” が張り巡らされており、油断は禁物。 "うまい話" には必ず「裏」がある

 「魂は細部に宿る」と言うが、こと「お金」に関しては小さく書かれた ”但し書き” に要注意。確かに「投資」には一歩踏み出す勇気が必要だが、あくまで「リスク」を十分認識した上での事「非常時」は尚更である。

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