見出し画像

「リスク」と「リターン」の考え方。 ー 「安全資産」を疑ってみる。

 怒濤の1週間が過ぎた。FOMCだけかと持ったらECBの緊急会合にスイス、日銀のおまけつき。さすがに疲れたので「基本」に立ち帰って頭を整理してみよう。欧米では投資の ”勉強” で必ず出てくる "Risk & Return"

 「銀行預金は株より安全」

 高齢者を中心に日本ではこう信じて疑わない人が多いが、これは本当か?

 答え: うそ

 「インフレ時代」突入で最近気がつき始めた人が増えてきたが、「現金」「預金」は「安全資産」などではない銀行が力を持っていた「昭和」に国民に擦り込んだ "常識" なのだろう。なぜならその方が銀行が儲かるから

 ここでいくつか代表的な「リスク」を挙げて考察を加えてみよう。

 1.価格変動リスク

 「リスク」≓「価格変動リスク」が日本人の常識。毎日ドル円日経平均のニュースが流れるため、価格が変動する= "危ない" となっている。

 2.金利リスク

 みんな銀行口座を持ち、住宅ローンなどを利用する人も多いのに、なぜか「金利」に無頓着な日本人が多い「損切丸」では随分色々書いてきたが、欧米では投資の ”勉強” の時に「金利」はトップ項目"Risk & Return" は「金利」を軸に計られるからだ。今の「マーケット資本主義」の根幹をなしていると言っても過言ではない。

 例えば今マーケットを振り回している米国債だが、10年@3%ということは、30,000ドルの元金が10年後に39,000ドル(単利)になることを意味する。同じ金額をNYダウ@30,000ドルに投じた場合、株価が@39,000ドルを超えなければ米国債の勝ちになる(配当金を除く)。

 「米株は10年後には必ず上がる」

 こういう事を言う人は良く考えて欲しい。今の「金利」で10年後に「名目株価」が+30%以下なら「元本割れ」だ。日本人がドル建投資をする場合も同じで、米国債の「リターン」が米株を上回るケースも十分有り得る。これが「金利が上がると株が売られる」理屈であり、事実「お金持ち」を中心に徐々に「お金」は国債等「金利資産」にシフトし始めている

 これらは「物価リスク」と読み替える事もでき、*見た目の「名目金利」とは違う物価上昇率込みの「実質金利」の考え方に繋がる。

 *「マーケットは常に "誰も儲からないプライス" に調整されている」

 以前こういう事を書いた。「あれっ、じゃあ "金利が上がるからドル高" はおかしくない?」。ご指摘の通り。なかなか鋭い(笑)。

 アメリカは「インフレ」だから「名目金利」が上がっているのであって、10年国債の「実質金利」日本@▼2.28% > アメリカ@▼5.37%本来なら物価が上昇した分、ドルの価値はドル売り(円買い)で相殺されるはず

 取引量の少ないトルコリラは実際そういう動きになっている「名目金利」は@20%でもインフレ率は@+73.5%で教科書通り「通貨安」「利下げ」なんてすれば当然状況が悪化する。結果、トルコ国民は「借入金利」か「通貨安」か究極の2沢を迫られている。

 今の「ドル高」昨年のビットコイン同様、一種の "ブーム" に近い。取引量と市場参加者が多い分長く続いているが、おそらくFRBの「利上げ」終盤で ”リセッション” 騒ぎになり、反動=「ドル売り」が待っている。

 3.信用リスク

 これがいつも日本人の盲点。最終リスクが「デフォルト」、つまり「潰れるかどうか」。冒頭の「預金と株」の話に戻せば、100万円を地方の(経営状態の良くない)信金に預けるのとトヨタ株を買うのとどちらが ”危ない” か。言い換えれば「どちらが潰れやすいか」。普通に考えれば信金の方が "危ない" (もっとも預金保険で元本1,000万円までは「保証」)。

 この "危ない" の度合いを測るのも「金利」「資金繰り」が苦しくなると、どんな企業も「お金」を集めるために「金利」を上げる。銀行も例外ではない。最近なら不良債権に苦しむ中国の不動産会社が@20%台の社債を発行していたのがそう。「高金利」≓「高リスク」と考えてほぼ間違いない。

 この「信用リスク」への理解が進めば、日本でも「マルチ商法」のような詐欺が減るはず。どんなに「高収入」「高利回り」を謳っても、運用している会社自体が潰れればそれまで。何年か前の「カボチャの馬車」が典型だ。

 「金利」日本人が苦手な 2.金利リスク、3.信用リスクの双方を内包する。日本では「ゼロ・マイナス金利」が長すぎる弊害もあり、その "穴" を埋めようとこんな「損切丸」を遮二無二書いてきた(苦笑)。とかく急落した、暴落した為替ばかり取り沙汰されるが、「円安」で「現金」「預金」も価値が変動している事に気が付いたのは、まあ一歩前進と言える。今は「何もしないこと」が大きなリスクになっている。

 一つ注意点を挙げるとすると、人民元やルーブルは「ドル経済圏」の枠外で動き始めており、中国を中心とする、いわゆる「レッドチーム」寄りの国々に関しては、ここで書いたような金利為替の理屈では計れなくなってきた。対ドルの為替レートを無視するように「利下げ」に動いているトルコ安い原油を買い漁るインドもそうかもしれない。突然「ルール変更」されるようでは「リスク」も「投資」もあったものではない

 日本は当然「アメリカ組」と思われているが、こと金融・財政政策に関しては極めて「専制国家的」。例えば10年JGBは海外では@0.30%台なのに日本に戻ってくると@0.20%台前半。まさに ”二重マーケット” 。相変わらず「不思議の国・日本」だが、今の政府・日銀のやっている金融・財政政策は訳が分らない。こうなると欧米は日経平均の扱いに困るかも知れない。

 マーケットが混乱する中、「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。|損切丸|note の観点は常に必要だが、仮にFXで「ドル安」反転しても、必ずしも「円高」とは限らない"不美人投票" 的相場の中で「ドル安・円安」だって有り得る。

 「損切丸」はさっさと引退して後進に席を譲ったが、プライドだけで突っ張っている60~80代の方々も、もういいのではないか。いつまでも「昭和」のままでは「令和」の時代に適応できない。この国も早く「普通」に衣替えしないと心ある20~50代は早晩この国を捨てて出ていくことになる「姥捨て山」に残されるのだけは嫌だ(苦笑)。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?