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日米金融政策の絶望的 ”差” 。ー @22 Jun ’22 パウエル議長の議会証言から。

 「FRB、積極利上げを継続」

 昨日(6/22)、パウエル議長の議会証言直後の日本語のヘッドラインがこれ。「ドル金利上がってるんだろうな」と思ったら全く逆米国債金利は特に1~2年ゾーンが大きく低下し、7月以降+0.75%「利上げ」は一旦消滅

 証言では、マーケット、特に米国債やドル金利市場にとって変化を促す重要な要素が盛り込まれていたので、抜粋でご紹介しておこう。

 Testimony by Chair Powell on the semiannual Monetary Policy Report to the Congress - Federal Reserve Board

  " Recent indicators suggest that real gross domestic product growth has picked up this quarter, with consumption spending remaining strong. In contrast, growth in business fixed investment appears to be slowing, and activity in the housing sector looks to be softening, in part reflecting higher mortgage rates." (強い米景気と住宅など今後の減速傾向)

 ② " The labor market has remained extremely tight, with the unemployment rate near a 50‑year low, job vacancies at historical highs, and wage growth elevated." (強い米雇用)

  “ It’s certainly a possibility that a rapid tightening of monetary policy will force the US economy into reverse. Frankly, the events of the last few months around the world have made it more difficult for us." (リセッションの可能性)

  "Achieving a “soft landing” in which policy tightens without severe economic circumstances such as a recession, will be difficult" (景気軟着陸の難しさ)

 the policy rate, even after last week’s 0.75% increase, is still at a relatively low level and we want to get up to a more neutral-ish level.”
e.g. “Neutral” is considered roughly @2.5% (中立金利)

 議会証言というと日本の国会質問のようなイメージを持たれるかもしれないが、アメリカは全然違う質問に立つ議員は金融・経済やマーケットを熟知しており、中には*米国債の「逆イールド」等に踏み込む質問もある。指摘は非常に専門的で厳しく、証言台に立つFRB議長は「大幅利上げ」の根拠等の ”集中砲火” に対し、理論立って ”防戦” しなければならない。

 *1月の証言時にはFRBも米国債の状況を注視している旨説明が為されており、金融政策運営の指標としてマーケットを重視している事が判る。「無制限買取オペ」で無理矢理金利を抑えつけているような国とはベクトルが全く逆。おそらくYCC(イールドカーブ・コントロール)のような一種の「介入政策」は余程のことが無い限りアメリカでは是認されないだろう。

 大体日本の国会議員が「イールドカーブ」なんて言葉を発するのを聞いたことがない。裏を返せば日本では国民の「金利リテラシー」が低く興味が薄いのに対し、「投資」に真剣なアメリカ国民はそういう情報発信を要求しているということになる。

「国民は自分達のレベルを超える政治家を持つ事が出来ない」

 まさに国会議員は国民の鏡写し政治家もメディアも国民も「勉強不足」で、今更「バズーカ」批判をしようにも論破できるだけの地力に欠ける。だから官僚に上から目線で舐められてしまう。経済運営が上手くいかないのもここが原点で、日米の絶望的 "差" を感じざるをえない。

 まあ、バイデン大統領も大概 "経済音痴" だが、今は中間選挙で頭が一杯。ガソリン税減税に加え、あれだけ「敵国認定」している中国向けの関税引下げまで言うのだから「物価引下げ」のためなら何でもアリ

 もし今「戦争」が終わったら...。 ー 最大の ”楽観シナリオ” に備える。|損切丸|note を書いたのも「戦争終結」が「インフレ」抑制の即効薬だから株、原油、為替等、どうもそちらに向かっている気がしてならない。

 筆者が1つ注目したのは ↑ ①「住宅市場減速」の件。住宅ローン金利が@6%を超えてさすがに利用者が減り不動産価格に頭打ち感が出てきた。@6%で20年間借りると支払う利息が元金の2.3倍 ↓ 。さすがに断念する家計が増えている。JPモルガンも需要の減退に合わせて住宅ローン部門の人員を▼1,000人程減らすらしいし、これはかなり ”リアル” だ。

 @2%複利(1ヶ月利払い) 20年 @49.1328%
 @6%複利(1ヶ月利払い) 20年 @231.0204%(!!)

 ちなみに "Price to Rent ( or Income) Ratio" などのリスク指標で見るとアメリカ(7位)ニュージーランド(1位)などと並んで住宅市場が過熱している国 ↓ でありクールダウンが必要日本(18位)とは状況が異なる。

 パウエル議長も言及しているが、問題は2つ

 ①本当に「インフレ」を抑え込めるか
 ②リセッションを回避できるか


 この相反する2つの目標を同時に成し遂げるのは至難の業CPIが+8.6%にまで ”燃え広がった” 現状では、彼のグリーンスパン元・議長でも難しかろう。まして現・議長は2021年前半に ”ボヤ” を消すことに失敗している。両極端のどちらか(あるいは両方=「スタグフレーション」)に転びそうで、あまり楽観できない

 もっとも我が国はアメリカのことを言っている場合ではない「円安」「インフレ」は政治問題化しており自民党内でも「XXXミクス」を巡って暗闘が繰り広げられているようだが、そんなに時間的余裕はない日銀内も「バズーカ派」と「反・バズーカ派」のせめぎ合いがあるようだが、正直もういい加減にして欲しい来る参議院選挙で "鉄槌" が下るか、それとも現状がダラダラ続くのか、海外の日本を見る目は思っているより厳しい。


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