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続・「法定通貨」VS「暗号資産」再び。 ー 10年米国債@1.80%が壁に?。

 2021.3.4.「法定通貨」VS「暗号資産」再び。↓ の続編として。

 再度金利上昇方向に動き出した米国債。3/30の東京時間で売りが出たところを見ると、日本の銀行業界で言う「期初の売り」=決算期初めの処分売りかもしれない。「10年米国債@1.80%」を目指す展開となってきた。

 なぜ「10年米国債@1.80%」が注目されるかというと、かつてフェイスブック主導の暗号資産「リブラ」が取り沙汰された時に「法定通貨」側の銀行が「通貨主権」を守るために「金利」を "武器" に”潰し” にきたからだ。事実10年米国債が@1.80%を超えるあたりから「リブラ」の議論が "自然消滅" していった経緯がある。

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 イールドカーブの形状が大分違うので一概には比較できないが、金利を見ている投資家にとっては「金利収入」が最大の関心事。やはり「名目金利」は高いほど良い「金利」の効果は「リブラ」潰しで実証されているため、今回も同じ "武器" を使ってきたというわけだ。

 今回の相手はビットコイン(BTC)。勝手が違うのは裏に電気自動車という実物商品を売る「テスラ」が付いていることだろう。これは厄介だ。メーカーが代金としてBTCを受け取ると言っている以上、中央銀行など規制当局も圧力はかけにくい。一部の銀行がカストディ(管理業務)を引き受けたり、VISAなどが「テスラ」に追随したりと小さな ”謀反” が続き、「リブラ」の時ほど金融界も一枚岩ではない

 実際米国債の金利上昇を嘲笑うかのようにBTCは高値を維持しており、今のところ「金利上昇」によるダメージは軽微と言って良い。今回は@1.80%では足りないかもしれない「通貨主権」がかかる銀行界も徹底して対抗してくるだろうが、果たして今回も思い通りになるのか、定かではない。

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 この1年に渡る「金利上昇局面」を見て、多くの方が「金利」は一旦動き出すと ”長くてしつこい" と認識して頂けたと思う。これは「物価動向」に20年、50年の長期循環があり「金利」がそれをフォローするからだ。未曾有の「コロナ危機」をきっかけとした今回の「インフレ」→「金利上昇」は50年単位の「大転換」であり、金融史に残る出来事といっていいだろう。

 だから「金利」の場合、この大きなトレンドを見誤ると損失がとてつもなく大きくなる(経験者談。苦笑)。その規模は時に為替の損失を遙かに上回る。特にこういう ”歴史的転換点” では ”大きな絵" が必要だ。

 「10年米国債@2.0%」はただの通過点の可能性も高く、中途半端な ”レベル感からの押し目買い” が最も危険。実際今回の金利上昇局面でも@1.0%越えで買ったトレーダーは「損切り」を余儀なくされた。筆者が見る ”大きな絵" 10年米国債なら名目金利で@3.0~3.5%。それでもヒストリカルには十分過ぎるほど低金利である。

 以前の投稿で米国の「潜在成長率」と「中立金利」の話をざっくりした。グローバリゼーションの恩恵で物価が穏当に抑えられ、1990年代までの「潜在成長率」@2.0%は@1.5%に落ち、「中立金利」も@2.5% → @2.0% に低下したという認識が金利市場では専らだ。

 ところが今起きている「米中デカップリング」はまさにこれを逆流させる動き「潜在成長率」「中立金利」共に+0.5~+1.0%程上昇シフトすると考えるのが妥当だろう。そうなると「利上げ」時のFRBの「中立」政策金利は=@2.5~3.0%に達すると考えるのが筋で、場合によってはもっと上もあるかもしれない。e.g.  ↓ 7y - 3y (7年先3年)概算@3.06%

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 ただその過程で市場には大きな「化学反応」が起きるはずだ。特に「インフレ」=「法定通貨価値の毀損」を織り込んで上昇してきた株式市場だが、どこまで「金利上昇」に耐えられるだろうかBTC為替大きな影響を受けよう。銀行界も「BTC潰し」はいいが、株が急落して金融危機になってしまっては元も子もないFRBは難しい舵取りを迫られるだろう。

 「インフレ資産」を保持して資産の目減りを防ぎ、金利が "十分" 上昇したところで預金や債券などに乗り換える ー これが「理想」だが、この "十分" の判断が難しい。次にFRB日銀「利上げ」に踏み切る時は「低金利」にどっぷり浸かっていた分、想像を超えるパニックが起きるだろう

 そのような事態に備えるために「損切丸」では時間をかけて金利市場の動きを一つ一つ丹念に拾ってきた。出来ればパニックを回避して「損切り」に追い込まれないよう先回りしたいが、さて...。

 「相場」に大切なのは「完璧」ではなく「割り切り」

  "100%" を求めて全部失うような ”愚” を犯すよりも、せめて70%ぐらい納得する結果は残せるよう心掛けたいものである。

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