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「人民元」がおかしいⅢ。 ー 「利下げ」見送り、苦渋の選択。

 "上海「ゼロコロナ」達成宣言"

 6月の経済活動再開に向けてこう宣言を出したが、続く急激な資本流出=人民元安+中国株安に危機感を覚えたのだろう。このままでは「資金繰り」がおぼつかない。実際住宅販売国内3位の不動産大手「融創中国」が4月に期限を迎えていたドル建オフショア(海外)債の利払いの一部を、30日間の猶予期限内(5/12)に履行できなかった。つまりはデフォルト

 この苦悩は中国人民銀行の金融政策にも現れている。市場の大勢は5/16に1年物MLF金利(現行@2.85%)を▼0.05~▼0.15%小幅利下げを予想していたが、見送られた。明らかに人民元安に配慮した措置であり、本来景気下支えに必要な大幅な「利下げ」に踏み切れない

 人民元が香港ドル同様「実質ドルペッグ」(米ドルにリンクさせた通貨制度)なのは周知の事実であり、FRBが「利上げ」を進める中で反対の「利下げ」は難しい香港の金融政策も、景気動向に関わりなく単純にFRBの金融政策に沿って「利上げ」「利下げ」してきたのを何年も見てきた。そもそも「ドルペッグ」とはそういうものであり、これで「米中対立」は時期尚早10年米国債@2.99%>10年中国国債@2.84%では「お金」が集まらない

 まあロックダウンはいずれ終わる訳で、 "先読み" の観点から一旦人民元安は止まっている。加えてポンド・ドルの動き ↓ に見られるようにドル金利上昇→ドル高の一方的シナリオにも陰りが見えてきた。

 ただ「ドルペッグ」通貨として金利がドルを下回っているのは致命的欠陥でもあり、人民元→ドルへの資金流出は粛々と進む可能性が高い。香港ドルも上限値@7.8500が狙われる展開が続き、金利水準をドルと同程度、あるいはそれ以上に引上げない限り不安定な状況は避けられない

 現状中国景気は実質マイナス成長に陥っており、不良債権問題国内銀行の「資金繰り」を考えれば日本のような「ゼロ金利政策」まで「利下げ」してもおかしくない状況だ。だがそんなことをすれば「ドルペッグ」は崩壊。つまり*金融政策の独立を図るためには「アメリカに輸出しなくてもやっていける自立経済」を確立しなければならない

 実は日本も同じ歴史を辿ってきた。アメリカに「円高」を仕掛けられて結局軍門に降ってしまったが、「輸出主導」から「内需型」に転換するまで20年の時間を要した。その結果が今の「円安」でもあり、これを利することができるかどうか、”次のステージ” に差し掛かっている。

 「米中対立」が先鋭化する中、「共同富裕」アメリカとの決別を図るための策だが、まだ一人当りGDPが@1.2万ドル < アメリカ@6.9万ドル、日本@3.9万ドルでは時期尚早と言わざるを得ない。国内政治の関係で急いでいるのだろうが、まだまだアメリカから儲けを分けて貰わないとある程度の生活レベルを維持していくのは無理だろう。

 「円高」対策として日本は国内工場をアメリカや中国に移して為替変動のリスクを軽減させていったが、今度は中国の番だ。「サプライチェーン」の再構築で東南アジアを中心に工場が移転し始めているが、最近の「人民元安」はそれを反映し始めたと言える。これは短期的な動きではなく、もっと根本的、長期の変化になる。

 これは日本にとってはチャンス。ここまで「円安」が進むと本邦企業も中国に工場を建てたり投資をしたりする必要はなくなる「経済安全保障」の観点からも様々な "国内回帰" が進むだろう。日経平均が運用成績で健闘しているのは偶然ではない(とはいってもまだマイナス。苦笑)。特に中国株との対比でいえば、明らかに「お金」は中国 → 日本へ "回帰" している。

 この状況をひっくり返すには「円以上に安い人民元」が必要だが、7,000兆円を超える過剰な借金で苦しい「資金繰り」事情を勘案すれば、それは「金融危機」に直結する。「お金」が余って困っている日本とは対照的だ。

 投資相場では「天邪鬼」「逆張り」はいつでも有効な訳ではないが、2022年のような「大変動期」には 常に「逆の目」はあるⅡ。ー 「円安」の ”良い点” とは?|損切丸|note のような視点も大事になる。

 「必要なモノ」「不要なモノ」は何なのか、「過剰流動性」で膨れた資産は何なのか、etc.。

 戦争が起きたり一部の暗号資産が「 "デジタル" 屑」になって数兆円吹き飛んだりと「大荒れ」に見えるマーケットも、結果は意外に合理的リスクを取る方も "先読み" の中で、考えに考え抜いて「後悔」しないように努めたい考え方に "穴" がなければ必ず結果はついてくる

 筆者は信心深くはないがマーケットに「神の手」は存在する。短期的変動は別として、中長期的には必ずあるべき値に収束する問題はそれに向き合う「人」の方であり、 最後は「自分との対話」。ー 何度も ”生き直す” 相場の中で。|損切丸|note 。スポーツの練習同様、どこまで突き詰めて自分を信じられる状態にできるか。特に今年のような「厳しい年」はそうで、他人を出し抜けば逆に大チャンスにもなる。


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