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相場は待ってくれない。- マーケットを信用しない日銀。

 1日当りの日銀の国債買入額が5兆円超とまた過去最高を更新1/12,13の2日間で10兆円も買ったことになる。年初の10年、5年JGBの入札が2.5兆円毎なのでおよそその倍。本当にこんな馬鹿げた「無制限買取オペ」を続けるつもりなのだろうか。総裁交代の4月までマーケットが持ちそうにない。

 一時@0.545%まで売られた10年JGBも一旦は@0.51%まで戻っている。だが性急なマーケットは今月の政策決定会合で「YCC廃止」が行われるかもしれないと先走る12月に意表を突かれているだけにやむを得ない反応だろう。*ドル円は一気に@127円台まで突っ走りまさに「催促相場」の様相。

 *現在の急激な「円高」はFRBに対する「年内の利下げ開始」というやや過剰な期待が後押ししている部分もあるので、突っ込み過ぎの感も強い。米国債の「逆イールド」からくる ”逆鞘” が効いてくるまでもう少し間があるので、落ち着くまで時間がかかるだろう(一旦相場の上昇(金利低下)が止まれば大きく調整するはず)。

 仮に ”流れに棹さす” 「無制限買取オペ」を続けるとすれば、1ヶ月で100兆円年内には国債全額1,200兆円を日銀が買占める可能性まである。

 本当にそんな事が可能なのか?「資金繰り」で考えて見よう。

 2022年末の時点で日銀の国債保有額は564.1兆円。仮に国債1,200兆円全額買うとなると:

 テクニカルに言うと追加で国債635.9兆円買う分、銀行は「お金」を同額押付けられるので「当座預金」も増え、日銀も「資金繰り」はつく。しかしこれは同時に+635.9兆円分ものマネーサプライ ≓「異次元な量的緩和」が行われることを意味し、金利は低下するかもしれないが「円」の価値は失われる。おそらくFXは今の反応とは真逆の急激な「円安」で反応するだろう。

 ただこれは「机上の計算」日銀のバランスシートが膨張する過程で何が起きるのかは余談を許さない1つ心配されるのは「当座預金」がそのまま600兆円以上も増えるのか、という点。

 日銀「当座預金」の大元は取りも直さず皆さんの「預金」「貯金」。仮に日本「インフレ」で 「お金」から「モノ」の時代へ。- 「貯める」から「使う」へ。|損切丸|note へ転換していけば「当座預金」は減っていくし、外貨投資や貿易赤字が増えれば「お金」は海外に流失し続ける

 そこで日銀の「資金繰り」が▼50兆円なり▼100兆円なりショート(不足)すれば、日銀は市場から再調達しなければいけなくなる。つまり供給した「お金」を自分自身で吸収することになり短期金利の上昇要因になる。つまり**「金利を下げるために金利が上がる」という矛盾に陥る。

 **そもそも「量的緩和」なるものが日銀、ECBやFRBで実施可能なのは「お金」があるからデフォルトの危機に瀕するアルゼンチンやレバノン、トルコ、エジプトなどでは出来ない。だから「お金」を海外から引っ張ってくるための「通貨安」が必要になる。「円安」が示唆するのは日本がそれらの国の仲間入りをするということ。「お金」が尽きれば終わり

 ”バズーカ” の後始末 ー 「10年日本国債@0.25%無制限買取オペ」の深層。|損切丸|note で2/14「10年日本国債@0.25%無制限買入オペ」が実施されて以来疑義を呈し続けてきた「損切丸」。いずれ「YCC廃止」をするなら一刻も早く止めた方が良い相場は待ってくれない

 未だに ”投機筋” 呼ばわりで「ヘッジファンド悪玉論」が国内では強いようだが、それもどうだろうか。「ロクイチ国債暴落」(e.g., 1980年4月、@6.1%の国債が@9%まで急騰)などの印象が焼き付いた78歳の総裁はマーケットを信用していないのだろう。

 だが今は決済システムも高度化精緻なAIプログラムも運用されている。「売られ過ぎ」のプロダクトには直ぐさま買いも入る”自然体” の10年JGBは@0.86%程度と見ているが、本当に「悪玉」かどうかはそこで判明するだろう。「救世主」になる可能すらある。

 それよりも問題なのはJGBの買い手が「日銀一極集中」になっている事「流動性規制」で銀行には1つの貸し手に依存しないように指導している立場の日銀「一極集中」の危険性は十分に認知しているはずで、かつてLTCM破綻(1998年)、あるいはリーマンショック(2008年)で金融危機に至った経緯を忘れたわけではあるまい。

 今日銀がやっているのは「壮大なナンピン買い」であり、危機のリスクを高めているだけ。厳しい事を言えば、今 ”投機筋” なのは日銀自身。民間の金融機関と違うのはそのコストを全額国が負うという点。つまり我々の税金が投入されることになる。

 日銀ももう少しマーケットを信用してみてはどうか”味方” につければこんなに心強いものもない

 FRBやECBが必死に「引締め」で「インフレ」を抑えようとしても、たった2日間で+10兆円も「お金」を市場に流し込まれてはまさに「ゲス抜け」(方言で穴が開いた状態のこと)。ビットコインなどがはしゃいでいるのと全く無関係でもあるまい。ここでも日本は「昭和脱却」≓ "社会主義的金融政策" とはオサラバする時に来ている。

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