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止まらない「過剰流動性」ゲーム - バローメーターはビットコイン

  "CPIショック" はちょっと大袈裟だが確かにマーケットの雰囲気は一変した。特に米国債とJGB(日本国債)。売り=金利に上昇に弾みがついている

 米国債については「逆イールド」から一気に「フラットニング」(イールドカーブの平坦化)「スティープニング」に向かう勢い。「年内利下げ」期待は剥落しつつあるのが現状。このままCPIや雇用統計が上昇基調を維持すれば2年以降の米国債金利は@5%越え、下手をすると「利上げ」を言い出す市場関係者も出てきそうだ

 「暫く利上げはないだろう」

 虚を突かれたのはJGB。これは筆者も指摘したが「利上げ」局面で金融関係者のコメントなど当てにならない。特に金利上昇で保有JGBや固定金利の住宅ローンで「損」を被る銀行は多分に "感情" が入る。いわゆるポジショントーク。「利上げ無し」は "希望的観測" "願い" に近い。そうやって破綻したのがシリコンバレー銀行(SVB)だ

 財務相、財務官はしきりに為替介入を臭わせているが効果が薄いのは百も承知。もっと言えば「インフレ税」で1,200兆円もの「借金」の実質負荷を減らせる財務省として "本音" は「円安」ウェルカム。だから*FX市場も「円売り」を止めない"返済" を迫られるのはいつも "納税者" 

 *ドル円を見ていると売っても売っても買いが湧いてくる印象金利差が5%いうことは、買ったドル円は毎日の値洗いで▼2銭ずつ持ち値が改善@153.20で買えば1ヶ月後に@152.60(▼0.60)、2ヶ月後に@152.00、1年後には@145.50。これなら多少の相場の振れには目をつぶって誰でも「円売り」ポジションをホールドしたくなる。みんな儲けたいのである

 マーケットの焦点はいつまで「過剰流動性」ゲームが続くのか

 今回の "CPIショック" で金利が上昇し、NYダウやナスダックが下落したのはある程度想定内だが、少し驚いたのがビットコイン(BTC)。米株に連れ安になったと思ったら急激に値を戻した。まさに ”不死鳥” (フェニックス)。元々金利が付かないのでまあ金利の影響を受けにくいとも言えるが、筆者は「過剰流動性」のバローメーターとして注視している

 元々「インフレ」を先取りしていた米株価は「買われ過ぎ」との指摘も多く上値は詰まっていた。事実NYダウは年初来+2%しか上昇していない

 そこに絶妙のタイミングで "認可" されたのがBTCの現物ETF。これこそウォール街の "都合" 。金利上昇が怖くて米国債に向かえない「お金」の "受け皿" としてはうってつけ。事実BTCは年初来+60%超、2022年終値比では+300%(4倍!)を超え "令和の錬金術" と化している

  "受け皿" としてはWTI(NY原油先物)や(Gold)等のコモディティも同様だが、こちらは「インフレ」に直結。つまり過剰に放出された「お金」が回収されない限り「インフレ」=貨幣価値の下落は収束しない。そう言う観点からBTCを見つめるのも興味深い

 それなのに...。ECBは6月「利下げ」方針、バイデン大統領はFRBの年内「利下げ」を "断言" FRBとECBの ”蛇口” を再び開けるなら やっぱりアメリカで燻る「インフレ」の ”種火” Ⅱ。|損切丸 (note.com) に薪をくべる行為。だから やっぱり「インフレ」しかない|損切丸 (note.com)

 そこで「インフレ」抑制の役割を託されたのが日銀本音ではもっとゆっくり「利上げ」に向かいたかったのだろうが、こういう相場になるとそうも言っていられない。想定通り さらば "異次元" - 次に待ち受けるのは「利上げ」催促相場|損切丸 (note.com) になりつつある

 ”金利は上がりだすと速い”

 ちなみに「円買い介入」は円を市場から吸上げるオペであり「金融引締」効果を生む。ただ一方で「ドル」は市場に供給されるので「お金」の収支はトントン。保有米国債を売った分金利は上昇するかもしれないが、需給の面からは「過剰流動性」≓「インフレ」解消には貢献できない

 最終的には700兆円強に膨張した日銀のバランスシート ↓ を減らすしかない、つまり600兆円近い保有JGBの圧縮2014年末にはそれぞれ300兆円、250兆円しかなかったので、そこまで "正常化" するには約▼400兆円を市場から回収する必要があるが、その過程でどれだけJGBが売られるのか。ちなみに400兆円はこの10年で外貨投資に向かった額とほぼ一致する

 植田総裁の勇ましい言動とは裏腹にその行動は慎重そのもの。市場の一部で懸念されていた「国債買取オペ」減額も見送られた「マイナス金利解除」だけであれだけ時間を要したのもJGBの急落が怖いから。ただこのままだと「円安」も「インフレ」も「過剰流動性相場」も止まらない。チキンレース状態のマーケットは崖に向かってアクセルを踏み続ける。どの時点で海に落ちるのかは誰も判らない。もっとも「インフレ税」でホクホクの財務当局は高見の見物落ちるのは庶民だけである

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