見出し画像

金利が上がる時。 ー 「インフレ」か、「危ない」のか、それとも「お金が足りない」のか。あるいはその全部?

 「金利」の基本の話。|損切丸|note(2021.2.28)などを参考に読んで頂けると興味深いかもしれない。

 改めて「金利」の3大要素を書いておく:

 ①物価 ー e.g., 「インフレ」「デフレ」「スタグフレーション」
 ②信用リスク ー e.g., 「デフォルト」「倒産・破綻」
 ③「お金」の需給 ー e.g., 「過剰流動性」「テーパリング」

  金利が上がる時 ー その要因は大きく3つ。

 ①インフレ
 ②危ない
 ③お金が足りない

 この3要素は完全に分離されるべきものではなく、相互に密接に関わっている。例えば「シリコンバレー銀行」(SVB)の破綻の例なら、②「危ない」と噂の出た銀行の預金金利が上がり③「お金」が足らなくなって破綻している。「物価」だけが金利の決定要素では無い

 ここに「期間」の概念が入ってくるので「金利」は余計ややこしくなる

 例えば今の米国債の「逆イールド」(  標題グラフ)。①「物価」について短期では上昇するものの長期では低下する、という解釈が成り立つ。TIPS(物価連動債)が示すBEI(予想物価率) で見ても、(当るかどうかは別として)マーケットは現在+5%台の米CPIが+2%台まで下がると予想していることになる。

 この「逆イールド」②信用リスクの観点で捉えると、短期的にアメリカは「危ない」が長期的に見ると「安定」、となる。「ドル安」の兆候も見られるFXだが、ドル円を見てもドルが大崩れする環境にないのはそのため。崩れそうで崩れない米株価にも同じ事が言える。逆説的に言えば「逆イールド」が解消してアメリカの長期金利が上がる時が「危ない」わけで、1970~80年代の「ドル安・株安・債券安」の「トリプル安」の再現になる。

 ③「お金」の需給で見ると米国債の「逆イールド」はまだまだ「お金」が余っている証拠。2022~2023年の投資が上手くいっていない事の裏返しでもあるが、政策金利を▼1.5%も下回る10年国債を買う投資家がいるのは異常行き場の無い「お金」が彷徨ってると考えて良い。その一部が流動性の低いビットコインやWTI(NY原油先物)に流れ込んでいる

 ①「インフレ」もしくは「スタグフレーション」が③「お金」余りによる原油など商品相場の上昇、あるいはもっと大きな視点で言うと3京円もの「大借金」でばらまいた「お金」が多過ぎて価値が陳腐化しているとすると、政府・中央銀行は余った「お金」を回収=「金融引締」and/or 「増税」するしかない。前者対応がアメリカで「金利」が「上昇」し、後者対応の日本では消費の減退で「金利」は「低下」する

 どちらの処方箋が正しいとは言えないが、政府の立場で言うと「大借金」の解消に「インフレ税」は不可欠「お金持ち」や消費者の力が強く「利上げ」を選んだアメリカに対し、日本は「増税」路線。結果としてJGB(日本国債)はきれいな「順イールド」(=長期金利が短期金利を上回る状態)を形成している  。

 これを②信用リスクあるいは③「お金」の需給で考えると、長期的に日本/円は②「危ない」あるいは③「お金」が足らなくなる、と読める。だから「円安」が続くYCC(イールドカーブコントロール)で*10年JGBを無理矢理抑えこんでいることも影響しているだろう。

 *植田新総裁によるYCCの修正「マーケットへの副作用を取り除く」、とする論調が目立つが、そんな矮小な話ではない。これは「日本」を今後5年、10年どうするのか、の話であり、「金融政策」はその端緒になる。

 筆者も含め「資産」のほとんどを「日本円」で「預金」「現金」など所有する日本人にとって、日銀の金融政策は決定的に重要「インフレ税」を「円安」で取られるのか、あるいは「金利」で取られるのか。いずれにしろ「預金」「現金」を含む「円建金利資産」が "危ない" のは間違いない。1,200兆円もの国債を発行している財務省の立場で言うと、国益 ≓ 国民の損であり、一般庶民の最大の敵は政府・財務省ともいえる。

  ③「お金」の需給で言うと、もともと余っていた「日本円」に「黒田バズーカ」以降500兆円もの「過剰流動性」を供給してきた日銀の責任は重いそのほとんどはドル建資産となって米株式市場などに流れ込み、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」政策とも相まって巨大な「過剰流動性」バブルを引き起こしてきた。タイミング良く(悪く?)100年に一度の「コロナ危機」も重なり、風船は更に大きくなっている。

 さはさりとてこれを一気に潰せば日本の「バブル崩壊」の二の舞FRBも日銀も慎重な対応を迫られる。一方「インフレ」の火の手は既に上がっており、こちらも待ったなし。パウエル議長の言う "narrow path" (狭い通り道)であり、ほとんど曲芸に近い。SVBやクレディスイスの破綻が典型だが、ある程度の犠牲は覚悟しているはず。「お金持ち」まで損失を負わされている状態なので、小市民はもっと気を付けなければいけない。

 反面、米国債にしろBUNDS(ドイツ国債)にしろJGBにしろ、まだ買われる=「金利」が下がるということはまだまだ③「お金」が余っている証拠。これを解消し無い限り 燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸|note は残り続ける。「実質金利」=名目金利ー物価上昇率もまだまだ低く、結局「利上げ」は不可避になる。

 「損切丸」でも何度か書いているが、今は後に経済史の教科書に載ること間違いなしの歴史の転換点。それも過去の経験が通用しないような未知のゾーンに突入している。だから相場が難しくて当たり前。多少損を被ってもへこたれることなく粘り強く対応していきたい。特に「金利」は多くの情報をもたらしてくれるはずで、米国債やJGBの動向は大事なヒントになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?