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「中国」から聞こえてくる "足音" Ⅱ。ー「お金」は米国債へ「質への逃避」。

 何やら米株式市場の "腰付き" が怪しい8月の米CPI(消費者物価指数)は年率で@+5.3%もあり「鈍化した」というのは誤報 「米景気が減速」「9月FOMCでのテーパリング見送りは確実」と続くが、2~5年米国債の利回りはほとんど変わっておらず、もうこれはFRBへの "嘆願" にしか見えない。それだけ株価の下落で困る人達が多いのだろう

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 *ウォール街「ストラテジスト」「エコノミスト」の類いはかつて無い程の「失職」の危機に瀕している3京円を超える未曾有の「大借金」「インフレ」になっても「利上げ」しない中央銀行...。正統派の「マクロ経済学」からはかけ離れている。いくら有名大学の経済財学部卒でMBAを取っていても、これでは説明のしようがない。

 元・金利トレーダーの意見としては、「米景気減速」を議論するのは10年米国債が@1.14%(2020/11高値)を割り込んでから。(参考:”材料無し” の中上昇した米国債金利。↓ )。米株の下落で@1.26%止まり(9/14)なのは、むしろ頭が重い印象だ。おそらく米国債トレーダーは「テーパリング」11月開始に向けて身構えているはず

 そしてもう一つ、米株に影を落としているのが中国の「不良債権問題」。不動産開発大手「中国恒大集団」のデフォルトに関するニュースが遂に日本の大手新聞にも載るようになり、大分 "足音" が大きくなってきた

 9/13[深圳(中国)ロイター] ”中国南部の深圳市にある不動産開発大手、中国恒大集団の本社に金融商品の償還やその他債権の返済を求めて約100人の投資家が押しかけ、現場は緊迫した雰囲気となった”

 中国メディア 財新] "恒大は投資家に対し、満期を迎えた商品の元本と利息の10%をまず支払い、残りは四半期ごとに10%ずつ分割して償還することなどを提案した。同社は9/10、満期を迎えた理財商品をできる限り早期に全額償還すると約束していた。"

 近々期限の到来する400億元(約6,800億円)の*「理財商品」償還に向け ”動き” が具現化しつつある。@13%程の「高利回り」で集めた「お金」だが、デフォルトになれば投資元金が返ってこないかもしれない。マンション等開発物件も不良物件が多発し、引き渡しが頓挫するなど問題だらけだ。

 *中国では金融商品の相互投資制度WMC(クロスボーダー・ウエルス・マネジメント・コネクト)=「越境理財通」を通じて「理財商品」を販売。集めた「お金」は多額の不動産に投資されている。

 現状の社債市場の動向から、市場はデフォルト時の返還額を@15~25%程度と見積もっているようだ。**30兆円にも上る債務総額のうち、4.5~7.5兆円しか回収されない計算になる。

 **日本のバブル崩壊時の実例を紐解くと、「不良債権」というのは蓋を開けるまで最終的な回収額は全く判らない(まるで癌の開腹手術のよう)。優位な担保設定をしている銀行と違い、個人投資家など小口債権者は "取りっぱぐれで泣き寝入り" もしばしば「倒産」の現場は修羅場である。

 米景気減速とか「テーパリング」とかいう以前に、これは大きな「クレジット・イベント」。加えて、迫り来る「インフレ」。 ー 「減少するお金」の奪い合い? ↓ (9/11稿)にもなっており、「お金」はいわゆる「質への逃避」(Flight to Quality)で米国債に向かった。ただあまりにも金利が低いので、一部ビットコインなどにも溢れ出している。

 金利の話に戻すと、「質への逃避」で金利が低下する欧米国債に比べ、中国国債の「金利高止まり」が目を引く10年の「実質金利」は@+1.77%で、アメリカ(▼4.11%)やドイツ(▼4.34%)を+5%以上回っているそれだけ「お金」が足りていないということ。

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 「資金繰り」を回すだけなら中国人民銀行にも策はある輪転機を回して「人民元」をばらまけば良い。これで銀行や不動産会社はデフォルトを免れ一息つけるが、***代償として制御不能の「インフレ」が訪れるだろう。

 ***これは「円高対応」で日銀が不要な利下げをした結果「バブル」を生み、その後クラッシュした日本と同じ轍を踏むことになる。実質「ドルペッグ」の人民元をドルの裏付けもなく増発するのは極めて危険だ。 ”被害” は ”日本流" に「広く薄く」なってしまい、「内乱」を怖れる独裁国家としては取りにくい策。むしろ限定的デフォルトを選択するのではないか。そうなると「利下げ」「金融緩和」には走らないことになる。

 では中国のデフォルトは「インフレ」抑制になるのか?

 筆者の意見は「否」。そもそも今回の「インフレ」の発火点は「米中対立」に端を発した「サプライチェーンの分断」安価な商品を大量供給してきた中国の信用リスク増大は商品の供給力を更に減らし、むしろ「インフレ」を助長するリスクさえある

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 景気減速下の「インフレ」=「スタグフレーション」

 「損切丸」では note. を初めて以来、「中国の不良債権問題」をことある毎に追ってきたが(マガジン「中国編」ご参照)、やはり最終的に「スタグフレーション」に行き着いてしまう。特異な政治体制日本の「バブル」を凌駕する規模のため、展開がなかなか読みにくい。

 おまけに「マクロ経済学」を無視した「異常な低金利」。本来なら ”逃避先” になるはずの国債等の金利資産もうまく機能しない「エコノミスト」のみならず、トレーダーもヘッジファンドも投資家も頭が痛いのは一緒。ここは「先入観」を捨て、いつでも動けるように準備をしておくしかない。どこかへの ”抜け道” が見えてくるまでは。


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