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まだまだもの凄い「金融緩和」-まるで昭和の ”牛歩戦術” 的「利上げ」

 1/23 植田日銀総裁 「マイナス金利解除後、当面は緩和的な金融環境が続くと思うが、どのくらいの長さになるかは言い様がない」

 これは "FACT" (真実)。▼0.10%をチャージされているのは500兆円余りの日銀当座預金のうちたったの30兆円程度であり、「マイナス金利解除」だけではとても「金融引締め」とは言えず象徴的意味しかもたない

 「マイナス金利解除の予告」と受け取った向きが一旦ドル円を売ったが、考えてみれば仮に日銀が+2%「利上げ」してFRBが@4%まで「利下げ」してもまだ「実質金利」で日本はアメリカを上回らない。冷静に考えればその後@148円台半ばまで「円売り」が進んだのも当然

 ところが今朝(1/24)JGBは猛烈に売られている。なぜか?

 ポイントは「展望レポート」のCPI見通しと「国債買入オペ」↓

 今日の「国債買入オペ」では1-3年、3-5年、5-10年、10-25年ともに12月と同額に据え置いたが、10-25年、25年超のオペ回数をそれぞれ3回(12月4回)、2回(同3回)に減らした事が地味に効いている。年べースで見れば12月対比これで▼3兆円10月対比ならもう▼20兆円も減っている年70兆円は保有国債の償還額とほぼ同額で、これで日銀のバランスシートの膨張がやっと止まる

 更に「下限金額」まで引下げれば年間60兆円を割り込むため、立派な "QT" (Quantitative Tightening、量的引締め)になる。この事を理解しているから生損保勢は「長期債を買わない」と言っている訳で、JGBの金利上昇はある意味自然な流れ

 これを「CPI見通し」↓ と合わせて考えるとどうなるか

 今回の展望レポートで2024年度見通しを+2.8% → +2.4%に引下げているが注目すべきは2025年度の+1.7%→+1.8%。これを徐々に目標である「+2%」に引き上げ、 ”牛歩戦術” (昭和の政治で採決を遅らせるために野党が取った投票の遅延行為)的「利上げ」に転じようとしている。春闘、春闘といっているが日本の「人手不足」「賃上げ」傾向は既に2016年から始まっており、 "何を今更" 感満載

 ガッチリ財務省とタッグを組んでいる日銀としてはターミナルレート(利上げの到達点)を@1.5%程度に留めようと "演出" していると考えると辻褄が合う。1999年から「ゼロ金利政策」で20年以上世界の「過剰流動性相場」を牽引してきた日銀としては、「利上げ」がグローバルにどのような "化学反応" をもたらすかは未知数の部分もあり、慎重を期すのも判らないではない。もし日銀が動くならその分FRBやECBの負担は減ることになる

 この辺りは T.I.J. (This is Japan、日本固有の特性)でもあり、その独特な ”呼吸” は海外勢には理解し難い日経平均を売ってきたのは「日本金融村」がJGBに ”呼吸” を合わせたからであり、日本株を買っていた海外勢はやや虚を突かれた恰好。ドル円を慌てて売り戻したのも同じ

 昭和の法則:「金融緩和」≓「円安」≓「株高」

 日本経済が「内需主導型」に転換したと言われて久しい。工場を海外移転し「貿易赤字」が目立つこの日本で「通貨安」は "害" 以外の何物でも無い「インフレ」を機に「投資」に目覚め 「預貯金」では「インフレ」に追い付けない!|損切丸 (note.com) に気付いた日本人の「お金売り」は当面止まるまい「インフレ税」を防ぐための経済行動としては至極当然

 ”赤信号、みんなで渡れば怖くない”

 これは筆者が海外の同僚にT.I.J. の説明をする時に良く使った例えだが、今回の「JGB売り」にはその臭いがプンプンする。いつもケンカ腰(日本人にはそう見える)でギャーギャー言い合っているイギリス人からすると、議論もせずに一気に同じ方を向く日本人はまさに "宇宙人" 。特に「金利」は国内の金融機関が主導するマーケットでもありJGBは彼らにとっては "鬼門" 。今回も嫌々日経平均やドル円の売りに付き合わされているはずだ

 ドル円もJGBも「金利差」を理由に「キャリートレード」を積み上げているのは「理論派」を自負する欧米の投資銀行やファンド。彼らが「損切り」に動くなら「他人の損切りは拾え」「バブル」の一時期を除き海外の ”ハゲタカ” にむしられてきた日本人だが、ここは「相場で勝つ」希有なチャンス1,000兆円もの「預金」という膨大な "予備軍" を抱えているのが強味だ

 続・「憧れのアメリカ」の終焉 ー 「アジアの時代」到来か?|損切丸 (note.com) なんて note. も書いたが映画も音楽も日本の復権は著しい"Rising Sun" (日出ずる国)とまではいかないまでも「日本復活」の足音が聞こえてくるようでもある。半分期待も込めて


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