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物価の上昇は消費マインドの腰を折ってしまうのか?

 7月ミシガン大消費者指数(速報値) 80.8 (予想)86.5 6月 85.5

 ・耐久財購入指数 101

 ・住宅購入指数 良好@30%

 ・1年先のインフレ期待 ↑ @+4.8%

 ・5-10年先のインフレ期待@+2.9% (前月)@+2.8%

 現在の米国を如実に表す興味深い指標が発表になった。昔から通好みの指標として注目されているが、7月ミシガン大消費者指数(U.Michigan of consumer sentiment)が2月以来の低水準に下落耐久財パンデミック直後の昨年4月以来住宅については1982年9月(@9~10%の ”高金利政策” 後にアメリカが大不況に喘いでいた時期)以来の低水準だ。

 この指標から読み取れるのは、*急激な物価上昇で消費者が一旦購入を見合わせている、ということ。直近のCPI高騰も反映してインフレ期待も@+4.8%と2008年8月(リーマンショック直前)以来の高水準となっている。

 一時大騒ぎになった ”ウッドショック” だが、その後価格は大分落ち着いてきている ↓ 。ミシガン指数とも整合的だ。だが過去の平均値に比べるとまだまだ "高値" の水準

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 指標発表直後、米株価は下落したがその後一時買い戻しも入っており、ミシガン指数自体が株価下落(引けにかけ急落)の引金ではなさそう

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 「デフレ」慣れし過ぎている日本人から見ると、こういう動きをすぐ ”景気後退” と読み取ってしまいがち。だが「インフレ」が起点になってる以上「日本化」=「デフレ」とは違う。むしろ「お金持ち」が怖れているのは**「インフレ税」だ。

 **パウエルFRB議長が呼ばれた先の議会証言でも議員の一部から「インフレ税」について言及があった。さすが ”金融リテラシー” の高いアメリカ。こういう事が正々堂々と議論出来る国だからあれほどの経済発展が続くのだろう。国民がおとなしいのをいい事に、巨額の「預金」に「預金税」=「マイナス金利政策」を続ける国とは "雲泥の差" である。

 市場の活気が急に失われた現状から察するに、2021年前半から株などのリスク資産から降りたアメリカの「お金持ち」は多いはず税制上のメリットから「株」保有が多く、「インフレ税」を払うとなると処分対象になる「富裕税」も検討されているなら尚更だ。株価が上がらないと困る投資銀行やファンドはなんとか騰勢を保とうと必死だが、所詮 ”ゼロサム” の世界コアの資金流入がなければ ”張りぼて” に過ぎない

 では株を売った「お金」はどこへ向かったのか? おそらく「現金」もしくは「米国債」だろう。アメリカ人は「貯金大好き」になったのか? ↓ (6/4稿)の説明も付く。利息ゼロの「現金」が嫌な「お金持ち」は「米国債」、それもリスクを考慮して2~5年債を買っていると推定できる。

 この辺りの動き= ”キャッシュフロー” はFRBや米銀からは丸見えFRBも短期金利を押さえつけているし、彼らにすれば米国債金利が上がらないのは "自明の理" だ。だがこれを「インフレ」にならない証、或は「デフレ」=「日本化」への入口と判断すると見誤る「お金持ち」の理屈を考えればむしろ逆。それだけ「インフレ」を怖れていることになる。

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 冒頭の「消費者マインド」の話に戻すと、価格急上昇で一旦買いの手が止まるのはある意味自然な事。いわゆる「様子見」と言うやつである。価格が下がってきて誰かが買い始めれば、物価には再度上昇圧力がかかる。「需要>供給」の構図が変わらない限り基調に変化はない。もう「中国からの安価な製品」の大量流入が望めない以上、「インフレ」は止まらないだろう。

 「低金利下のインフレ」

 アメリカを中心に60年以上続いてきた「金融資本主義経済」かつて起きなかった事態が起ころうとしている。景気が悪化すれば「スタグフレーション」に置き換わるが、いずれにしろ ”大波” は物価が上がる方向に動きつつある。そのベースにあるのは:

 ①2008年以降膨張し続けた巨額債務(約3京円)

 ②「米中対立」を起点とした「反グローバリゼーション」

 端的に言えば「誰かがツケを払う」ということ。「インフレ」も初期は株価を上げる推進力になりえるが、最終的には下落圧力に転化する。無理をする必要が無い「お金持ち」が怖れるのは当然だ。おそらくビットコイン等の「暗号資産」も無力下手をすれば多額の ”ツケ” を払わされる( e.g. 既に年初来のパフォーマンスはダウナスダックを下回っている)。まるで破裂しそうな風船を渡し続ける「爆弾ゲーム」のようだ。

 続・"壮絶" な「サバイバルゲーム」に備えて ↓ (7/9稿)おきたい。


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