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マーケットの「脱・中国」 ー ウィルスから ”経済パンデミック” へ?

 「我々の尺度では計れない国」

 前稿 ↓ ではそういう表現で書いた「中国」。投資、マーケットの世界ではトランプ大統領時代の「米中対立」から「脱・中国」的な動きも見られたが、対中投資そのものを見直す機運までには至らなかった。

 だが「香港」の強制的制圧以降は大きく流れが変わり、「お金」は "エグゾダス" (exodus、出国、退去)の様相を呈している。株価指数を見ると一目瞭然で、年初来名目値でマイナスに陥っているCSI300ハンセン指数を始め、日経平均やKOSPI(韓国)もドルベースでマイナスに転落「中国有事」の際、最も影響を受ける国々の株価が下落している。

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 *「中国」と繋がりの深いブラジル・ボベスパ指数も不調 ↓ 

ブラジルボベスパ(3ヶ月)

 *「反米国家」の筆頭格で国民の約4分の3が ”極貧民” に転落したと推定されるベネズエラあれだけ石油資源があるのだから「中国」から「お金」が入っても良さそうなものだがそういう話は聞かない。尖閣や南シナ海で海洋資源を狙うよりは余程 ”安上がり” だと思うのだが...。そういう理屈で考えると、あれは「皇帝」の面子を保つための軍事行動とも読める。報道官がけんか腰で悪態をつくのも同様だろう。

 それでは企業はどうだろう。日本なら中国向け売上が50%を超える村田製作所、TDKの ”二大巨頭” 米国ならアップルドイツならフォルクスワーゲンが有名どころだろうか。それぞれの直近の株価は:

村田製作所(1ヶ月)

TDK(1ヶ月)

APPLE(1ヶ月)

Volkswagen(1ヶ月)

 いずれも▼10%を超える大幅な下落(フォルクスワーゲンは6ヶ月)。「恒大ショック」に対する短期的反応もあるが、最近の「米国株の下押し圧力の継続」+「日経平均の急落」を併せると「脱・中国」が本格的に始まったと考えるのが妥当。実際欧米投資家にそういう風潮が広がっている。

 それでは「脱・中国」した「お金」はどこに向かっているのか?

 筆頭はやはり「商品」だろう。例えば原油(WTI)天然ガス ↓ 

WTI(1年)

NY Gas(1年)

天然ガス価格推移

 「インフレヘッジ」の代表、「金(Gold)」などの金属はどうか。

Gold(1年)

Copper(1年)

 「金」はドル高の影響もありむしろ下落基調。工業材料として需要の高い「銅」も最近は頭打ちだ。考えて見れば ”必需品” である原油やガスと違い「中国有事」の際需要の減少は避けられない

 「中国有事」を前提として最近1人気を吐いているのがビットコイン ↓ 

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 約1ヶ月前の@$40,000.-割れから "不死鳥" の如く復活してきたわけだが、皮肉にもこの急落が今の高騰の原動力となっている。急落のきっかけは中国政府が暗号資産取引を禁止したこと。逆にこれが中国人の保有残高を減らし「中国有事」でも売りが出ないという ”安心感” に繋がっている模様。「有事のドル買い」ならぬ「中国有事のBTC買い」だ(もっとも1日で±10~20%も動く代物なので油断は禁物)。

 そして最も不人気なのは国債や社債などの「金利商品」。元々「実質金利」が低すぎる上、「インフレ」に全く対応できない今回の世界的株価の下落でも金利低下の傾向は見えてこない。それだけマーケットに「お金」が不足してきている証拠だ。

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 特に**「デフォルト」が絡む局面での「高金利商品」は要注意。例えば「有事」の起点である中国国債の「実質金利」が並外れて高い、e.g. 10年@+1.62% > アメリカ@▼3.98%、ドイツ@▼4.41%、のはそれだけ「お金」が足りていない証拠でもあり、リスクが高いとも読める。10年国債が@11%を超えるブラジルでさえ実質金利はマイナスであり、中国の "それ" がいかに高いか、お判り頂けると思う。

 **「中国恒大」の社債が急落して "利回り" が20%とか30%とか言われているが、こういう時「金利」に着目してはダメ。格付が「C」まで落ち「破綻」確実になれば、問題は「元金」が返ってくるかどうか。例えば額面@100円の3年社債が@40円で取引されていれば、利回り計算は:(100円-40円)÷3年=@20%。だが明日「倒産」した時「解散価値」40%が分配されてやっとゼロ20%しか分配されなければ投資元金は半分になる大損だ。法律や契約概念が我々と異なるだけに、「精算」がきちんとなされるかどうか不明な点も大きなリーガル(Legal)リスクとなる。

 欧米の銀行やファンドが11、12月に決算を控え、風雲急を告げてきた「10月相場」国慶節で中国市場が8日まで休みのため、ヘッジとしてやむを得ず日経平均先物を売らざるを得ない向きもあろう。個人投資家の「祈り」も虚しく、日経平均は今日も▼800円を超える急落(前場)で7日連続下落

 これが「相場」と言ってしまえばそれまでだが、パンデミック同様、ちょっとした「気の緩み」が大惨事に繋がる。この ”経済パンデミック” を凌ぐべく、腹を決める時のようだ選挙向けの「大型経済対策」に希望を託しているなら期待薄だろう。起きている事象はそれより遙かに大きい


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