見出し画像

益々 ”つけあがる” マーケット。 ー 増長する「モラルハザード」。

 昨日(12/21)の欧州市場 → 米国市場の動きをご覧になっていた方はいらしゃるだろうか? てっきり年末休暇入りでおとなしくしているかと思ったら、FTDAXなど欧州の主要株価指数が▼3~4%も急落ダウ先物も一時▼$900近く下げる場面があった。

 きっかけはアジア時間でも既に出ていた「ロンドンでコロナ変異種の感染が拡大」。英国発の飛行機を入国拒否、なんてニュースもあったが、今更それで株価が下落? そもそもパンデミックで株が売られるならこんなところまで株価は戻っていないはずだ。

画像1

 株価の急落を受けて*米10年国債は@0.88%まで買われたが、NY市場までマーケットを追っかけたらNYダウは▼100~200ドル程度米10年国債@0.92%まで売り戻され、引けにかけて前日比ほとんど変わらずまで戻した。昨日の欧米市場の流れを見ずに今日東京市場を見ている人には何事もなかったかのように映るだろうが、何とも人を喰ったような相場である。

 昨日米国債と米株価の「シーソーゲーム」が繰り広げられて、それはそれで面白かった。まず①急落していたダウ先物は米国債が買われた(=金利低下)のを見て急速に買い戻しが入り②今度は買い戻された株価を見て米国債トレーダーが売る(=金利上昇)、というような最近良く見られる展開。やはり「金利」が今後の鍵を握っているのは間違いない。

画像2

 これは「金利市場」が正常に機能し始めている証でもあるが、同時にマーケットの「モラルハザード」の増長を強く感じさせる。

  ”株価が下がれば FRB が何とかしてくれるはず” 

 ロシアのデフォルトに端を発した1998年の「LTCM危機」「損切丸」はまさに ”当事者” だったわけだが、ドル円は3日間で▼25円落ちるは、筆者の手元にお金が一気に+2兆円も返ってくるは、勤めていた銀行は▼数百億円損失を出すは、で大わらわだった。

 「これに懲りて投資銀行業界も変わるだろう」

 当時そう確信したが結果は逆方向に向かう銀行団とFRBが「奉加帳方式」で1ヘッジファンドを救ったのがまずかった。これで銀行は「何があっても最後には FRB が出てくる」とつけあがってしまったのだ。その10年後に「リーマンショック」が炸裂するのは当然と言えば当然だったのだろう。

 さすがにその後「資本規制」「流動性規制」「ボーナス規制」など金融機関に対する締め付けは厳格になり、邦銀を追うように欧米銀も「儲からない業種」になっていった。規制コストだけで1行あたり数千億円もかかるのでは儲からなくて当然。高給取りのトレーダーも続々辞めていった。

 今度こそ「銀行発の金融危機」はなくなるだろうと信じていたが、それをあざ笑うかのような今回の「コロナ危機」。確かに「銀行発」ではなくなったが今度は「国」が主役である。1,000兆円を上回る財政・金融政策の発動は規模、内容とも2008年を遙かに凌駕している

 標題添付の挿絵はあの有名なイソップ童話の「オオカミ少年」のものだが、繰り返す危機とイメージがダブる。違うのは本当に「オオカミ」がやってきた時に ”助け” が入ってしまうこと

 最初の「オオカミ」(LTCM危機)が来た時は堅牢な建物を作って守った。次にもっと大きな「ヒグマ」(リーマンショック)が襲った時は漁師が撃ち殺して難を逃れた。そして今度はもっと大きい「ゴジラ」(コロナ危機)。「メカゴジラ」でも作って戦うつもりだろうか(古くて御免なさい。笑)。

 今回真剣に株式投資を手掛けている人の多くは悔いているだろう:

 「3月の暴落時( e.g. 3/19 日経平均@16,552.83)に買うんだった...」

 これは日本に限らず、個人も含め世界中で同じ。それも急落前を上回って株価が上昇するなんてことは完全に想定外だ。昨日の欧米の株式市場の動きを見ていると**「モラルハザード」が世界中に広く拡散したと強く感じる。「国」が主導しているならなおさらだ。プロもアマチュアも関係ない。

 **最近毎日平気で±5%もの急騰急落を繰り返しているビットコイン(BTC)のその一部。 ”何でもあり” の様相である。

 この状況、個人的には大変居心地が悪い。金利が上がったと言っても現状程度の金利水準では株価上昇の阻害要因にならないので、***「カタストロフ」があるとしても大分先になるかもしれない。

 ***「カタストロフ」の最終形はベネズエラやイラン、レバノンで起きたような「ハイパーインフレ」。その時中央銀行は株価が暴落しようが景気が後退しようが「利上げ」一択になる。アメリカドイツ中国日本レベルの国でそれが起きたら...。余り考えたくない事態ではある。

 何しろ今回現われたのは「シン・ゴジラ」で、歴史上誰も見たこともない「未確認生物」。対処方も「メカゴジラ」で正しいのかもわからない。映画の中でどうしていいかわからず役人も庶民も右往左往するシーンあるが、そういうことのないよう、出来る準備(心構え?)はしておきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?