QT(量的引締)が引き起こす「お金」の大移動。ー 「危ない所」から「安全な所」へ。
暗号資産について専門知識は無いが、ビットコインが急落している。一時@$26,000.-を割り込み、高値@$67,000.-から見ると半値以下。「インフレヘッジ」を見込んでいた向きにとってはとんだ誤算。もっともドル・リンクのステーブルコインだったはずの「テラ」はドル・ペッグが崩壊し、▼96%も価値を失ったというから驚きだ。まさに ”紙屑” 。やはり中途半端に「わからないもの」に手を出すのは怖い。
マーケットで29年「資金繰り」に携わってきて思うのは、「お金」は足りなくなると「危ない所」から「安全な所」へ逃げるということ。日本の「金融危機」時にいた邦銀の「外貨」担当もリーマンショック時にいたイギリスの銀行の「円担当」も「危ない所」の代表のようなもの。100%のポンドやクソ高いドルや円を取らされたり、随分寿命が縮んだ(苦笑)。
かつての「金融危機」は押し並べてそうだったが、「お金」を抜かれる方は大変。今もQTの号砲が鳴り、同じ様な状況が作られつつある。
FXは売った買ったの世界だが、現在の様に「お金」が逃げ惑う展開になると「資金繰り」的観点からは「どこからどこへお金が動いたか」、 ”お金レーダー” 的な役割を果たす。
では「お金」はどこから抜かれているのか?
最も「危ない所」が資金力が無い、いわゆる「高金利通貨」。しばらく "奇妙な安定" だった、独自の ”エルドアン理論” 「インフレには利下げ」のトルコリラからも再度「お金」が逃げ出している。南米通貨も然り。
"奇妙な安定" のお陰で低下していた国債金利も再度上昇基調に。
これと対照的なのが「円」。一時@131円台まで突っ走ったドル円は逆に@127円台まで下落。ここに来て「安全性」が再評価されている。 常に「逆の目」はあるⅡ。ー 「円安」の ”良い点” とは?|損切丸|note で「割安感」が際立ったこともありそうだが、何のかんのいってもまだGDP世界第3位の "経済大国" である。
かつてなら「高金利通貨」として標的になったイタリア、スペイン、ギリシャは「ユーロ」に守られ「通貨安」とは無縁。但し国債金利には上昇圧力が掛かり、ドイツとの金利差は拡大。この ”重荷” を背負った分、通貨としての「安全性」は低下しており、「円」との対比が鮮明になっている。
特異な動きを示しているのがインド・ルピー、人民元、それに香港ドル。こちらは違った意味で「危ない所」と認定されつつある。ポイントは 続・「ルーブル」の ”リアル” 。ー 人民元安、インドルピー安による「隠れルーブル買介入」。|損切丸|note 。
まあインドは単純に「安い原油・ガス」を買いたくて手を出したのだろうが、払ったルピーは為替市場でドル転されるわけで、これは「ルーブル買介入」と一緒。他国の「インフレ」+「通貨安」の一部を引き受けている形だが、既に「インフレ」で苦しむ同国には「ルピー安」によるデメリットの方が大きいはず。「ルピー買い介入」を迫られたのは完全に誤算。
一方中国は確信犯的「ルーブル支援」。覚悟を持って盟友を支えるつもりだったのだろうが、戦局や上海のロックダウン含め "大誤算" 。その強大な経済力で抑え込んできた人民元相場も売り圧力にさらされ、香港のドルペッグも怪しくなってきた。介入もしているが、貴重なドルの外貨準備も使わざるを得ず、難しい局面を迎えている。
一方、突如「世界最強通貨」に躍り出たルーブルだが、これも喜べる状況にない。どんなに「最強」でも、マーケットでドルやユーロ、円に換金するのは容易ではなく、買っても「通貨」として使い道がないからだ。ある意味、トルコリラやアルゼンチンペソより深刻。*「ルーブル」の "リアル" を測るには、間接的にルピーや人民元の動きを追う方が適切。
FRBの「利上げ」局面はいつもそうだが、結局「お金」は「ドル」に回帰する。ただ今回は「インフレ」が主眼であり、2020年3月以降の「過剰流動性相場」で膨れた米株、特にハイテク企業を中心としたナスダックは「危ない所」と認定され "攻撃" に合っている。
では「お金」はどこへ行ったのか?
かなりの部分が3%程度になった米国債に流れたとみている。
もちろん「利上げ」によって国債価格が下落するリスクはあるが、「金利投資」の基本。 ー 「お金持ち」の考え方。|損切丸|note に照らせば、余剰資金による償還までの "持ち切り" を前提とする「お金持ち」には関係ない。更に金利が上がれば買い増すだけ。金利水準が上がれば Fixed Income (固定利益)の威力は大きい。
"Cash is King" (現金は王様)
まさに「お金」が枯渇する局面における金言。要はどれだけバッファー(余裕)があるか。決断のタイミングは "紙一重" であり、ここで売らなければいけない人とは「天国と地獄」。改めて相場の非情さを感じる。
こんなに「損切丸」連投して...。
こう思われる読者もいると思うが、それだけマーケットでは考える事が多い(現役時代もそう)。しかも毎日目まぐるしく状況が変わり、1つの見落としが致命傷になったりする。まあ何かの参考になれば、特に今年は。
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