中国は「香港」をどうする気だろう。
米国債やJGB(日本国債)、NYダウなどかなりドタバタしたので少し目線を変えてみよう。正直疲れた(苦笑)。
今回は「香港」について。その簡略な成り立ちは ↓ :
1839~1842年:アヘン戦争を経て「南京条約」で香港島を清朝からイギリスに永久割譲。
1856~1860年:第二次アヘン戦争が勃発。「北京条約」で九龍半島南部の市街地を新たに割譲
1945年:日本の連合国軍に対する敗戦によりイギリスの植民地に復帰
1983年:アメリカ合衆国ドルとのペッグ制(US$1 ≓ HK$7.8)を開始。
1997年:7月1日、イギリスから中華人民共和国への返還および譲渡
2007年:人民元の対米ドルレートが香港ドルを上回る
いわゆる「ドルペッグ制」で香港ドルは1ドル@7.75~7.85内に管理され、そのため金融政策は香港の景気動向に関わらずアメリカに追随。今回のFRBによる急速な「利上げ」にも香港ドルはきちんとついて来ている。それが今上限レンジの@7.85に張り付き「ドル売介入」が続いている。ちなみに香港の外貨準備高は約4,500億ドルで日本の半分弱。
1997年7月に「1国2制度」が始まった時、人民元は香港ドルとほぼ同価(若干安かった)。その後*中国からアメリカへの輸出が拡大するにつれ、徐々に人民元高に相場が振れ、2007年に価値が逆転、現在に至っている。
現在は「米中対立」の流れを受けて金融・貿易構造が大幅に転換。 「分断」に向かう世界 Ⅱ。ー 「新・鉄のカーテン」とマーケットの「二重化」。|損切丸|note でも書いたが、中国は「ドル経済圏」とは別の市場に移行しようとしており、"マーケットの二重化” が進んでいる。
一方の日米欧も「経済安全保障」から「レッドチーム」に依存しない「サプライチェーン」の再構築に動き、双方とも ”敵陣営” から買う物は高くなり「インフレ」を助長。今までのように同一の「グローバル」基準では評価出来なくなった。
この大きな流れの中で「香港」の位置づけは極めてグレー。かつては 中国にとって「金の卵」香港。|損切丸|note 中国にとって「金の卵」香港 - 貿易編。|損切丸|note だったが、今では「お金」も十分に集まらない。それどころか「香港国家安全法」の施行(2020年6月)以降、「お金と人」の流出が始まった。ハンセン指数の株価チャート ↓ を見れば一目瞭然だが、これが現在の「ドルペッグ」維持問題に直結している。
「集金能力」が落ちれば「香港」はただの一地方都市に没落していくだけ。元々中国内では「北」と「南」が閥を作って「内ゲバ」を繰り返しており、50年単位で「お金と人」は「上海」と「香港」を行き来している。今は「北」が主導権を握っているので香港衰退を放置しているようにも映る。
「中国から抜けていく工場が増えそう」
先日2年ぶりに会食した時に、電気メーカーに勤める筆者の同級生がポロッとこぼした。やはり今回の「上海ロックダウン」の影響は甚大。移転先はベトナムやインドが有力だが、中国ほど産業インフラが整っておらず、おまけに "撤退" となると中国の工場設備やほとんど捨てていかなければならない。中小企業には悩ましいところだ。
既に中国都市部の人件費は日本を上回っており、このような「円安」状況下、人材さえ確保できれば日本回帰も選択肢になる。観光産業は人手確保に手当増額に動き始めているが、製造業でも思い切って人件費を上げるところが出てくるだろうか。やはり政府の後押しは重要である。
今や「香港」の「ドルペッグ問題」は中国から出て行く「お金と人」の象徴にもなっている。本当にアメリカなしで内需経済を回すなら(人民元も含め)「ドルペッグ」は解消すべき。だがこの辺りでウジウジ「ドル売り介入」を続けるところを見ると、まだ「ドルへの未練」も垣間見える。*今後の中国の行く末を占う意味で「香港」が鍵になりそうだ。
「何かあれば持っている米国債を売る!」
かつて橋本龍太郎首相が日本刀を持ったパフォーマンスでアメリカに啖呵を切ったことがあるが、「主要通貨ドル」を握るアメリカに「円高」で "恫喝" されあえなく撃沈。結局アメリカの軍門に降った。今の中国に違いがあるとすれば増強した軍事力だが、果たしてそんなことで状況をひっくり返せるだろうか。今の「戦争」を見ていると甚だ怪しい。少なくとも「お金の戦争」で勝ち目はなさそうである。
そして現在の日本は誰からの "恫喝" でもない「円安」で勝手に転んでいる印象。5月も▼2兆円を超える巨額の貿易赤字を記録し ↓ 、我々国民の懐は痛む一方。だが一方で ”狙い通り” 「円安」「インフレ」で借金が目減りしてほくそ笑んでいるのは財務省。 今の「値上げ」は「インフレ税」。結局は「お金」の問題。|損切丸|note と認識しなければならない。
"恫喝" してくる相手は今は中国だろう。「日本車を買わない」と宣言されたらダメージは深刻(もっとも先方にも相応のダメージ)。バイデン、岸田、習近平、プーチン、...。お互いがやり合っているうちに状況がドンドン悪化しそう。1929年世界大恐慌 → 株暴落 → 第二次世界大戦のパターンを想起してしまうのは筆者だけだろうか。やはり ”嫌な感じ” だ。
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