遂に始まった ”切り捨て” の時代と ”返ってきた円安” 。
筆者の地元・福島県で起きた事故が珍しく全国ニュースになっている。実はこの件で実家の母と一悶着起きた。
80代の母は視力低下が著しく、筆者も周りの友人も「もう運転は止めた方がいい」とずっと言ってきた。池袋の事故以来真剣に説得してきたが、そこへこの地元の事故。ニュースを見れば見るほど状況が酷似している。
そして本人の "抵抗" の理由も一緒:「車がないと生活できない」
突き詰めていくと結局「お金」の話に辿り着く。どこの田舎もそうだが住居は幅広く点在しており、どこかへ行こうとタクシーを使えば1回2,000~3,000円はかかる。母は2日に1回運転しているのでそれだけで月5万円。そうでなくても介護保険料の年金からの天引きや医療費の自己負担が増えているのに、追加の月5万円は厳しい。まさに「命のお金」。
それでも事故を起こされて数千万円~数億円の賠償責任が発生するリスクを考えれば、結局家族がその「お金」を負担することになる。自動車税・保険料・車検費用などの維持費を差し引いても年間50万程度は持ち出し。これを負担できる家計はどれくらいあるのだろう。しかも長生きすればする程 "コスト" は累積するので、こちらも「命のお金」だ。
そのタイミングでこのニュース。要介護1,2の対象者を国の保険適用から外して地方公共団体の管轄に変える、と言う事のようだが、地方財政にそんな余裕があるはずが無い。はっきり言って体の良い ”切り捨て” 。法案が国会を通ってしまう見通しのようだが、筆者も含め介護者を抱える家計の反発は必至。家計によっては「死刑宣告」になる。
最近政府・財務省がやってくることは怖ろしくて身震いがする。確かにこのままでは年金も国民皆保険も介護保険も維持は不可能なのは理解出来るが、選挙が無い「黄金の3年間」に一気に国民を ”切り捨て” に来ている。
しかも質の悪いことに、現首相も財務官僚も自分達のやっていることが正しいと信じて疑わない。これでは誰も止められないし本当に ”殺される” 。財政破綻を免れても国民生活が破綻すれば元も子もない。結果「借金」は回収できなくなるが、そんなことを慮る様子が全く無い。本当に恐ろしい。
話は少し飛躍するが、こういう国内の「お金」の状況を反映しているのが「円安」だ。FRBの利上げの "峠" が見えて一時137円台まで落ちたドル円だが、気が付けばあっという間に@142円台。今回は何の騒ぎもなくスルスルと上がっているだけに不気味。「安心するのはまだ早い」というマーケットの警鐘だろう。少なくともどこかの総裁のように「(円安修正は)大変結構なこと」などと他人事のようにうそぶいている場合ではない。
海外の投資家に福島の事故や国内の介護保険の詳細はわからない。だがそういう「お金」の状況を象徴するのが「金利」、特に国債(JGB)。今回ドル円が反落して「円安は日銀のせいではない」などと声高に叫ぶ向きもあるが、それは認識不足だ。CPIが+3.7%、 ”体感物価” では+6~10%にもなるのに、未だに「マイナス金利」を維持していること自体が異常。「金利が払えないほど日本は危ないです」と世界中に触れ回っているようなものだ。
おまけに「国債無制限買取オペ」で10年金利を串刺し。自然体の金利体系からかけ離れたイールドカーブ ↓ は仕掛けるにはおあつらえ向き。こういう ”歪み” を解消しない限り何度も「円安」が襲う。
「将来の "お金" が無い」の深刻度。- 「長生きリスク」にどう対応するのか。|損切丸|note は増し、「円安」で追い詰められて、いよいよモデルチェンジを迫られる「日本型」。|損切丸|note は待ったなし。
地方の介護に話を戻せば、乗合の巡回バスを作るとかやるべき事はたくさんあるが、 ”票” にならないので政治家は動かない。「旅行支援」など一部業界に偏ったバラマキは「お金」のかけ所が間違っており、このままでは国民の大多数がドンドン追い込まれる。
世界レベル=マーケットに視線を向ければ、こちらも ”切り捨て” の嵐が吹き荒れる。@80ドル割れに急落したWTI(NY原油先物)が代表的だが、「脱炭素」で ”切り捨て” られるのは産油国。今起きている「戦争」も、巨額の費用をかけたサッカーワールドカップ招致も生き残りを賭けた戦いの一環。「過剰流動性」ゲームが終わった「暗号資産」も中国株の売りもそう。アメリカもヨーロッパも他国の面倒を見る余裕はない。
その観点から「円安」は「日本切り捨て」の動きとみて間違いない。防衛費増加を企業に負担させようという案も出ているようだが、これでは「国内回帰」どころか「お金」に次いで「人」も逃げ出すことになる。若年層が「外」に動き始めたらこの国は「完全にアウト」。筆者は70歳で免許返納しようと思うが、娘を日本に留めることができるだろうか(苦笑)。
もっとも政治家も官僚も自分の庭を掃くとこばかりにご執心で一向に変る気配がない。このままだと前に見た映画の「プラン75」(75歳になったら特別待遇と引き替えに自然死を選べる、という架空の未来の話)の如く、「姥捨て山国家」まっしぐら。既に現実とかなりオーバーラップする。
筆者の "デジャブ" は、目先の対応に終始して倒産した会社と今の「後期高齢国家」日本が被る事。国の株価下落に当たる「円安」はそのバローメーターになるが、早く下の世代にバトンを渡さないとあまり時間が残されていない。マーケットは再三再四そうメッセージを送り続けている。