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日銀バランスシートの「未来予想図」。

 日経平均やビットコインが荒れ模様のようだが、ちょっと一息入れて「日銀バランスシート」の考察をしてみよう。

 少し遅れたが@5/10の「日銀バランスシート」

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 ちょっと気になるのが4~5月にかけて±4~8兆円単位で「当座預金」←→「政府預金」の増減が頻発してることだが、「国庫金」とそれを預かる銀行の間でどのような会計操作が行われているのか、知るよしもない。過大な「政府預金」を避けるためなのかどうか、ちょっと訝しい点ではある。

 コール市場もTONARが@▼0.01%台で安定しており、期初としては無難なスタートを切っている。

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 さてそういう細かい事はさておき(苦笑)、この1年の動きを総括してみよう。2020年3月末がこれ ↓ 

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  2020.3.31~2021.5.10の主な変化額(単位:兆円)は:

 (資産)国債+48.7 社債+4.6 株・ETF+6.2 貸出+73.4

 (負債)日銀券+15.9 当座預金+131.6 政府預金+24.9

 やはり一番強烈なのは当座預金+131.6だろう。+70兆円超もの「コロナ対応特別融資」を実行したが、それを遙かに上回る「お金」を個人・企業が貯め込んだことになる。日銀券も合わせると+150兆円近く。これこそ "保険" 大好きの T.I.J .(This Is Japan)。コストを払ってでも安全を優先。

 日本のメデイアでは連日居酒屋など飲食店の苦境を垂れ流す報道が続いているが、全体像は違う。これだけ手元流動性を確保しているのなら、経済状況を考えるとデフォルトは最小限で済んでいるはずだ。70%を超える人の収入が減っていないという、あるアンケート結果は驚異的ですらある。

 「GDP戦後最大の落ち込み」

 2021年第一四半期のGDPをこのように報道していたが、いささか大袈裟の感が拭えない。リーマンショックの時は企業がバタバタ倒れ、世相ももっと暗かった。2000年代前半の「金融危機」最悪期には、都知事の指示もないのに銀座の街灯は消え、人出もまばらだった。今回はマイナスの数値が大きい割にそこまでの悲壮感は感じられない。それもこれも給与が確保されているからだろう。膨大な「剰余金」の賜物かもしれない。

 さてここから「未来予想図」を展望してみよう。まず経済正常化に伴って「緊急」で借りた「お金」を返す。現在でも「両建て」になっている70兆円余りが「貸出」「当座預金」の双方から消えるだろう。更に我慢していた「消費」が反動で爆発状態になり、日銀券、当座預金は減っていくインフレが重なれば「お金」の取り崩しは加速度的に進むはずだ。

 日銀バランスシートの「未来予想図」はこんな感じだろうか ↓ 

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 最低でも2020年3月末の水準までバランスシートサイズは縮小。その過程で日銀は国債の保有高を減らすことになり、JGBの金利は上昇基調に転じる本当の意味でのテーパリングだ。株価が上昇基調にあるのが条件だが、ETF売却の議論も現実的になってくるだろう。おそらく日銀内部でもこういう類いの ”シミュレーション” が行われているはず。

 筆者の個人的な金利予想は下記の通り ↓ 。

 想定条件:@▼0.10%のマイナス付利金利は廃止 → 政策金利の@+0.25%までの利上げをマーケットで織り込む過程

 TONAR(無担コールO/N) @+0.03~0.05%(▼0.016%@5/19)

 JGB: 2年@+0.05~0.10%(現状▼0.14%) 5年@+0.10~0.15%(▼0.10%) 10年@+0.25~0.30%(+0.07%) 20年@0.55~0.65%(+0.44%) 30年@0.75~0.85%(+0.65%)

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 JGBの暴落を防ぎたい日銀・財務省はありとあらゆる手段を用いてマーケットに "介入" してくるだろうが、果たして上手くいくかどうか。実際の日銀+FRBによる利上げと米国債の動向が鍵を握るだろう。

 問題はこの「未来」がいつになるのかワクチンが行き渡った時か、それとも治療薬が開発されてインフルエンザと同等の扱いになった時か「金利」「株」「為替」どちらが先に動いて相互にどんな影響を及ぼすのか、過去に例がないだけに市場の予測も困難を極めるだろう。

 テーパリングをはじめとする日米欧3極の「金融引締」も市場動向によるところが大だ。そういう意味では壮大な「経済実験」が待ち構えており、かなり神経を使う作業になるのは間違いない。投資や相場を手掛ける人達は今この辺りを慮っているところだ。歴史に残る「転換点」になるだろう。

 

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