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「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ16 保険編③

 <予定利率引き下げの暴挙>

 ご記憶の方もいらっしゃるかもしれないが、デフレの最悪期、2003年4月に日経平均が7,600円台にまで落ち込んだ後、生保各社が運用の失敗から経営に行き詰まり予定利率の引下げに踏み込んだ事があった(5月に保険業法の一部改正案が閣議決定)。あれが保険契約者軽視の最たる例であろう。

 最近の話題で言えば、社会問題化しているアパートのサブリース契約問題に構図が酷似している。30年で一括借上契約して家賃を保証していたはずなのに、10年目に突如一方的に家賃を引き下げたり、解約通告をしたりしてトラブルが相次いだ。まさに後出しじゃんけんである。保険会社はより社会的責任やステータスも高いので、顧客に対する責任はより重い

 その後生保不振の拡大から解約や新規加入者の減少などが相次ぎ保険料収入も激減。多少の反省はあったかもしれないが、さて本質はどうだろうか。長らく続いた顧客軽視の業界文化が大きく改善したようには見えない。

 資金の運用責任(今は株価が上昇基調なので見えにくいが)もそうだが、純粋にコアである保険の部分についても未だに保険を払い渋る保険会社が多いのには辟易する。保険会社は契約者のお金を自分たちのお金と勘違いしているのではないだろうか。ただ、どうもこれは日本的発想のようである。

- 保険発祥の地イギリス  -                                                                                 ロイズなど保険の仕組みを生み出したとされる英国では、この発想が全く逆であるという。つまり、保険をどんどん払うことによって顧客はさらに保険をかけてくれるから喜んで払う、という。支払いが増えても、それは保険リスクが上がった事を意味するので、その後見合った保険料に引き上げれば良いだけ、と考えるそうだ。                                                                               日本の保険会社のように単純に保険金の支払いを減らす努力をしたり、運用に失敗したからといって原契約の利率を突然引き下げたり、などという行為は、英国流で言えば言語道断、保険というビジネスの基本理念に沿わない事になる。彼の地では保険事業主は個人であっても無限責任を負い、失敗の上の破産は当たり前。顧客が事業主を見る目もはるかに厳しい。

 資金運用に関しても、日本と違い欧米の金融機関では専門のプロとして役割、責任がきちんと明確化されており、運用成績によってトレーダーの給与、ボーナスは大きく増減する。下手を打てば最悪「首」であり、そもそも日本のサラリーマントレーダーとは取り組む覚悟が違う。だから会社の都合で突然転勤などさせない。(「首」にすることはある!)

 残念ながら日本ではそういう仕組みが確立されておらず、運用技術の巧拙に関する検証は曖昧だ。これではとても大切なお金は預けられまい


 <お勧め商品のセールストーク>

 保険会社(あるいは投資信託等)が運用型の商品を推奨するときには、必ずと言っていいほど「過去」の運用成績を持ち出してくる。株式編でも書いたが、終わってしまった「過去」そのものは投資や運用にはあまり重要ではないこれからどうなるか、である

 穿った見方をすればこれまで好成績だった商品はこれからむしろ成績が悪化するかもしれない大切な「お金」なのだから、金融機関に対し納得いくまで質問するのは決して恥ずかしいことではない。明解な説明がなければセールスはきっぱりと断るべきである。

 繰り返しになるが日本の金融機関には覚悟を持った本当のプロが殆どいない。覚悟のないリスクテイクなど、その運用成績は極論すれば運否天賦であり、思いつきでする投資と同じ、あるいは(他人事である分)それ以下だ。

 パンフレットをよく見て欲しい。小さな文字で最後の方に「運用成績や利回りを保証するものではありません」「元本は保証されておりません」「最終的な運用の判断はご自身で行って下さい」。これが彼らの本音である。

 金融機関のいいなりでは、ただの餌である。日本の顧客も金融機関に対してはもっと厳しくなるべき。 

其ノ17からは不動産編。

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