”チャレンジング" な日銀「資金繰り」 ー 国債買取オペは続行不能?
まずは最新の「日銀バランスシート」@30 Nov 2023 ↓
「うわっ、遂に国債が600兆円を超えたか...」
9月末比では+13.2兆円増えただけだが、やはり "大台" を超えた見た目のインパクトは凄い。ここで各項目別に詳細な分析を加えて見よう:
1.「国債」
まずはこれを参照して欲しい ↓
「お先に!」 ー 着々と進む日銀による「ステルス・テーパリング」。|損切丸 (note.com)
YCC(イールドカーブ・コントロール)の上限金利を上げてきた日銀だが、実際にはまだ年間70兆円近いJGB(日本国債)を買い取っている。だから総裁も理事も「金融緩和を継続」という文言を消すことが出来ない。
その反面期日で償還されるJGBも年間▼70兆円程あり、e.g., 推計3/9月▼20兆円、6/12月▼15兆円、本当は保有額が600兆円になんて届かないはずだった。やはり「国債無制限指値オペ」の最後っ屁が効いている。
12月も買取+6兆円ー償還15兆円≓▼9兆円ほど減るだろうが750兆円に膨張したバランスシートは当面減りそうもない。ここまでは「貸出」 ↓ が▼60兆円減った分を「国債」に充てて何とか「資金繰り」をつけてきた。
2.「貸出」
「コロナ支援」≓「ゼロゼロ融資」終了で150兆円から一気に80兆円まで減った「日銀貸出」。だがここに来てジワジワ97兆円まで増加。
「ゼロゼロ融資」も返済不能に陥っている貸出先も多いと聞くし一気に減らせないのだろう。倒産の多発を防ぐにはやむを得ないのかもしれない。
3.「政府預金」+「売現先」=円資金市場からの「資金吸収」
「政府預金」は財務省が日銀に預けている「お金」でTB(短期国債)発行分がほどんど。短期の「お金」なのであれこれやり繰りはしてはいるが、実質 ”日銀の資金繰り支援" に等しい。これを日銀が直接金融機関と取引する「売現先」と合わせた額は円資金市場からの「資金吸収」と見ていい。
11/30時点で「資金吸収額」は▼32兆円程だが、これだけコール市場から「円」を引き上げると政策目標であるTONAR=無担保コールO/N平均金利に上昇圧力がかかる。今年も度々@0%に接近 ↓ 「政府預金」+「売現先」の増減と連動していることが見て取れる。
30兆円JGBを買うのに▼30兆円マーケットから取ってくるのでは、まさに ”ヘビが自分の尻尾を喰っている" 状態。循環式温泉ではないがもう水位は上がらない、つまり「金融緩和」効果はゼロ。11/30も+13.2兆円増えた「国債」の「資金繰り」のために「政府預金」が+12.6兆円増えており、これでは何をやっているかわからない。
「資金繰り」改善方法は大きく3つ:
2,3が選択困難な事から、やはり1.国債買取オペの変更が現実的。筆者は現在の規模の買取オペはもう続行不能と見ている。このまま放置すればTONARがプラス金利に転じるなど「意図せぬ金利上昇」が起きる。それはさすがに不味い。
とこんな note. を書いていたら、タイミングが絶妙というかなんというか(苦笑)、国会で植田総裁がこんな事を言って市場にショックを与えている。昨日の氷見野副総裁のコメントと合わせ「年内マイナス金利廃止」とマーケットは受け止めた。「損切丸」的にはこれでも遅いぐらいだが、マーケットは「金融引締めの前倒し」と捉えた。
「過剰流動性」天国と信じられていた日本が思ったより終わりが近くなり、JGBと日経平均が急落している。最近の米国債金利の大幅な低下でも@147円台を保っていたドル円も急落。やはり「円安」是正には日銀のアクションが必須であることを如実に物語っている。
ここで筆者が書いた「資金繰り」の事情は日銀の事務方がもっと詳細に執行部に伝えているはず。制御不能に陥る前に動こうとするのはいかにも日銀らしい。「意図せぬ金利上昇」など起こしたら責任追及は必至。財務省とも協力しながら前総裁の無茶振りも何とか凌いで「資金繰り」の綱渡りをしてきたが、この辺りが潮時。国会発言はそういう風に筆者には聞こえる。
しかし毎度の事ながらJGBのドタバタぶり。「日本金融村」か、はたまた「キャリートレード」を増やしていた ”黒船” か、 "犯人" がどちらかわからないが、来年の春まで動かないと信じていたなら "間抜け" と言う他ない。現状は "常時戦場" 。いつ「利上げ」が始まってもおかしくない。
日経平均も「過剰流動性」プレミアムの剥落で▼1,000円ぐらい下げても「円安」是正のメリットも考えればどうってことはない。大事なのはここで止めないこと。海外不動産の投資も久々に1兆円台に復活 ↓ 、「お金」の流れは着実に変わってきている。かつてのように銀行や財務省が世の中を牛耳ることは不可能。時代は変わったのである。
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