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「お先に!」 ー 着々と進む日銀による「ステルス・テーパリング」。

 巷では「いつFRBが "テーパリング" を始めるか」に注目が集まっているが「お先に!」とばかりに先行している中央銀行がある。そう、日銀だ。

 6/29夕刻に "こっそり" 発表になった7~9月の「国債買入予定額」が月当たり▼1,000億円も減額完全に「予想外」だったが、メディアも含め騒ぐ人はほとんどいない(少し寂しいね...)。

 <日銀による7~9月国債買入額予定>

 「残存期間1年超3年以下」1回当たり4,500億円 ← 4,750億円、▼250億円  

 「同5年超10年以下」4,250億円 ← 4,500億円、▼250億円

 「同10年超25年以下」1,500億円 ← 2,000億円、▼500億円

 「日銀の資金繰り」を認識していれば当然と言えば当然の措置10年超の国債買取減額が大きいのも「資金繰り」が不足している点から至極妥当だ。「株・ETF」同様、行く行くはゼロにしたいところだろう。

 「コロナ危機対応貸出」(129.2兆円@6/18)の返済状況にもよるが、「政府預金」=短期国債発行による45兆円もの「資金繰り」支援を受けている現状を考えるとこれ以上のバランスシート膨張は避けたい。そうしないと今後「追加緩和」が必要な時に「打てる玉」がなくなってしまう

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 6月償還の国債が15~20兆円ほどあるので、6月末時点で「資金繰り」は改善する。月▼1,000億円×12か月=年間▼1.2兆円だが、日銀の「資金繰り」は改善させるには

 年間「総買入額」68.64兆円 =月5.71兆円×12か月+変動利付債1,200億円(2021年7~9月ベース。↓ ご参照)

日銀国債買入額(2021.7~9)

 年間の「総買入額」を「償還額」以下にすることが先決今回の減額でほぼトントンまで来たと推察する(日銀としては一安心)。

 「過剰流動性」の震源地「日本」。 ↓ (2020.10.22稿)が「損切丸」の自説なので、本来日銀による「テーパリング」は大きな変化なのだが「日本」を知らない市場参加者は見落としがちだ。

 例えば2020.9~現在まで10年米国債金利が@0.67% →(ピーク)@1.78%まで上昇したのは、実はこの「日銀テーパリング」が "出発点" 2013年の「黒田バズーカ」以降、日銀にJGBをもぎ取られた邦銀が「ヘッジ付外債」という形で日本国外に流した「お金」が約400兆円それが「逆流」するのは、実は無視できない大きな市場ファクターだ。

 その「逆流」をきっかけにまず「低すぎた米国債金利の修正」=金利上昇が起こり、「インフレ懸念」と相まって株価の頭を抑えている今回の日銀による「国債買入減額」も、時間をかけて ”冷酒” のように米国市場に効いてくる各市場での「流動性争奪戦」はますます激しさを増すはずで、FRBの「テーパリング」が ”追随” するなら尚更である。

 日銀の「ステルス・テーパリング」は今回で一段落しそうなので、後はFRB、更にはECBの動向が鍵を握るだろう。双方とも迫り来る「インフレ懸念」をどこまで我慢できるか、今後の市場の焦点になる。

 こうやって「流動性」と「金利」の側面から分析していくと、なるほど「お金持ち」がリスク資産を減らすはずである。史上最大の「過剰流動性実験」からのEXIT(出口)だけに不確定要素が大きすぎる

 筆者はグローバルな国債金利は再度上昇すると "想定"  ↓ 

 米国債: 5年@0.91% → @1.50%、10年@1.50% → @2.00%

 JGB:  5年@▼0.10% → @0.10%、10年@0.05% → @0.25%

 Bunds(ドイツ):5年@▼0.56% → @0%、10年@▼0.17% → @0.30%

 FRBと米国債が主導する展開となるだろう。本来「インフレ鷹」であるECBもどこかで牙を剥くかも知れないおそらく日銀の引締めが最後だ。 

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 この "想定金利" は明日とか来週の話ではなく金利トレーダーの "性" だが)6か月~1年後辺りを見据えた「先読み」。昔も今も「明日の結果」を求めるFX等のトレーダーには「不評」だ(笑)。「中国」等不確定要素もあるので「先読み」に変更がある時は、タイムリーなアップデートを心掛ける。

 とにかく2021年(おそらく~2022年)は大変な年になる

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