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"人" も "もの" も足りない。

  "時短解除で人材争奪戦が激化” 

 緊急事態宣言に伴う時短営業の全面解除で、飲食業観光業は諸手を挙げて大喜び、と思いきや、どうも事態はそれ程芳しくないようだ。

 1つは思ったほど客足が伸びていないこと。やはり「自宅放置死」の記憶はまだ生々しく、いわゆる「第6波」への警戒心が続いている。

 そしてもう一つが ↑ 冒頭の記事に代表される「人手不足」。通常営業に戻せば当然「人手」がいる。そこでバイトを雇い直そうとしたがなかなか確保できない「コロナ危機」で解雇された人の中には他の業種に転職した人も多く、雇用需給は逼迫している。

 「今さら飲食業に戻れと言われても...。」

 バイトパートで働いていた人達の中には「問答無用」で首を切られた人も多かろう。中には雇用助成金の手当もしなかった悪質なお店もあるし、戻ったところでいつまた「第6波」が襲って首になるかもしれない。不安定な雇用を強いられる立場に立てば、至極自然な感情だ。

 それでも2015年以前の「デフレ」期なら求人も少なく、多少の「ブラック」も甘んじて受けざるを得なかった。だが ↑ 標題のグラフを見ればわかるが、「コロナ前」の2019年までパート・アルバイト時給は急激な上昇を見せていた。これは「少子化」に加えて8百万人にも及ぶ「団塊」の定年退職を迎え、日本が「構造的人手不足」に突入したことに起因する。コロナショックで覆い隠されていたが ”通常営業” に戻れば当然問題は噴出する。

 *人手不足は何も日本だけの問題ではないイギリスではトラック運転手不足でガソリンが運べず、スタンドが閉店。その後トラック運転手の給料は年収で1,000万円以上に跳ね上がったという。米スターバックスなどグローバルチェーンも給料を引き上げて人材確保に動いている。

  "人" ばかりか "もの" も足りない

 今最大の問題は「半導体」。今や車にも電化製品にも不可欠だ。「コロナ危機」対応で一気に工場閉鎖や減産に踏み切ったが、これも「人手」同様、すぐ元に戻せるものではない長年「価格統制力」の弱さに苦しんできた業界としては、これは千載一遇のチャンス。今後10年、20年を見据えて「値崩れ」しにくい業界構造に作り替え、収益力の安定を図るだろう

 それは「エネルギー」も同じ。「脱炭素」が叫ばれる中、アラブの王族など化石燃料で稼いできた諸国にしてみれば、どのみち石油ガスで食えなくなるのだから、ここは「なるべく高く売って次の "投資" に回したい」WTI@80ドルを超えたが、今度はそう簡単に値崩れしなさそうだ。

 思えば春先の「ウッドショック」↓(木材価格の急騰)はこれらの ”序章” だった。今は木材価格は少し落ち着いているが、それでも住宅価格が高止まり~価格上昇基調を維持する要因にはなっている。

木材(サペリ)価格

 「インフレ」を論じる時、よく ”変動の大きい食品・エネルギー” を物価指標から除いたものを「コア・インフレ」と呼ぶ。食品やエネルギー価格の変動は一時的なので元へ戻るという前提で「インフレ」要因から除外する、という考え方だ。「コロナ前」ならそれでも良かったかもしれないが、今回は当てはまらないだろう。

 キーワードは「反・グローバリゼーション」。効率的なコスト低減を目指し「ディス・インフレ」を構築してきた「グローバリゼーション」だが、その中心的役割を担ってきた「中国」と「アメリカ」が「コロナ後」に対立するに至り、サプライチェーンの分断が進んだ。これは世界中に強烈な「コスト・プッシュ」を迫った

 それでも "もの" だけならそれほど深刻ではなかった。時間が経てばマーケットの自律機能が働いて物価を抑制することは可能。パウエル議長やFRB理事が今年の前半に「インフレは一時的」と主張したのはそういうこと

 だが "人" はそうはいかない「お金」が直接絡んでくるからだ。所得の増加はスパイラル的に物価の上昇を招くので、 ”信用創造" の回転を鈍らせるために「利上げ」が必要になる「マイナス実質金利」の今は油を注いでどんどん回転を速くしてる状態。最近「インフレは持続的」に宗旨替えしたのはこの "人" =人件費の部分が大きい

 まず先進国ではFRBが「利上げ」の先陣を切る( e.g. ブラジルは昨日(10/27)+1.5%利上げニュージーランドカナダイギリスが先を行くかもしれない)が、なぜか売りは2年米国債に集中(e.g. @0.54%)、逆に10~30年債は金利が低下(e.g. @1.54~1.95%)。一方BEI(予想物価上昇率)は高騰が続いており、5年BEIは@+3%に到達

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 まるで "政策金利の上昇は@1.5%で打ち止め” のような "奇妙な相場" 果たして「お金」の高速回転はそれで本当に止まるのか? 株価下落を防ぎたいウォール街の願望が大分入っているように感じるのは筆者だけだろうか。「実質金利」で考えるとFFレートは少なくとも@2.5%まで上がる必要があり、長期国債で@2%以下は「投資」としてはとても買えないが、さて。

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