見出し画像

米国債金利の「現在地」そのⅡ。 ー  株価「高値恐怖症」のパウエル議長は(いつ?)動くのか。

 米国債金利の「現在地」。↓ (6/4稿)の続編。

 7月米雇用統計:

 非農業部門雇用者数 +94.3万人 予想+87万人 前月+93.8万人 ← +85万人
 失業率 @5.4%  予想@5.7% 前月@5.9%

  "ようやく" 米国債金利は上昇、10年は@1.30%に乗せた。カプラン・ダラス連銀総裁のように過剰なリスクテークを防ぐため「テーパリング」(資産購入の段階的縮小)の早期開始を主張する理事もおり、7月の雇用統計はそれを ”支援” する内容となった。

 2年、5年の米国債金利から逆算した利上げシミュレーション ↓ は:

①2022年秋口からテーパリング開始

②2023年初に利上げ開始(+0.25%@FOMC)

③2025年に政策金利が@1.25%に到達

画像1

 <相場の教室:利上げ局面の米国債ショート(売り)戦略>
 我が家の奥さんを始め、相場に疎い人は株でも国債でも「売りから入る」というと「ピンと来ない」ようだ。ここでは米国債ショート(売り)「お金」の貸借りに例えて説明してみよう。
 5年米国債金利が上昇する方に賭けて「@0.77%で売りから入る」のは「0.77%で5年ローンを借りる」と同じ。借りた「お金」「毎日@0.05%(=O/Nレポ金利)で預金する」ことになり、100億円ショートで、毎日100億円×(@0.05%ー@0.77%)×1日÷360≓▼189千円コストがかかる
 それでも ↑ シミュレーション通りに金利が上がれば損益は "ゼロ" 利上げの時期が早まったり幅が大きくなれば「勝ち」でその逆なら「負け」。相場がすぐに下げ(金利が上昇)ればいいが、そうならなかった時は米国債を投資家から借りてくる賃貸料も別にかかるため、コストがかさんで苦しくなる。つまり利上げ局面では「正しい相場見通し」が必要で、利益を上げるのが難しい。ここで収益を上げるのが ”本物” の金利トレーダーである。

 物価上昇率を直近のCPI e.g. 6月@5.4% の代わりに5年BEI(予想インフレ率)@2.61%を用いると10年米国債の「実質金利」は@▼1.41%「ゼロ金利復帰」に+125~150BPの利上げは整合的と考えていい。

画像2

画像3

 問題は株価「高値恐怖症」のパウエル議長FRBが「お金」の Slack(緩み)を解消しないため、株も国債も同時に上昇する「ミニ・流動性相場」が起きている(前稿 “一体感” なき「熱狂」 ↓ ご参照)。

 3月以降、米国債トレーダーはパウエル議長に裏切られ続けてきた。だがFRBだけでなくECBも日銀も ”蛇口開けっ放し” の史上空前の「過剰流動性相場」の後始末なだけに、慎重になるのは当然かも知れない。株価が10年で5倍になるというような事態は過去になく「経験則」が全く当てはまらない

 短期的 " Crash & Build ” のケースも散見されるが、暗号資産や木材や金属、原油等商品にも「お金」が流入し相場は荒れ模様。このまま Slack を放置すれば、「通貨価値」が相応の減価を見るまでこの状況は続く。ECBも日銀も ”蛇口開けっ放し” なため、過去のクラッシュ時に問題になった「ドル安」を併発しないのが唯一の ”救い" か。

 米国債金利 "ようやく" 上がったのは、今回の雇用統計「テーパリング」開始を補強する材料になったから。過去の利上げ局面で何度か相場の ”火付け役” となった「ジャクソンホール」(8/26~28)で議長は講演するようなので、 "とりあえず" 注目してみたい。

 現在の米国債金利シミュレーションでは「テーパリング開始は2022年秋口」と ”超保守的" だが、仮にこれが「年内開始」となれば:

画像4

 2年債@0.21%→@0.58%、5年債@0.77%→@0.91%への金利上昇が見込まれる。当然だが、特に短期の2年債への影響が甚大

 問題はこの金利上昇に株価が耐えられるかどうか

 市場の「副反応」が大きければ「利上げ」は先送りになるだろうが、「ミニ・流動性相場」なだけに Slack(緩み)を解消する「テーパリング」のインパクトは馬鹿にならない

 「市場との対話」がこれほど重要な局面はない。だがここまでの言動を見ると "パウエル議長では不安" がマーケットの本音だ(まるでどこかの国の首相のよう。苦笑)。金利上昇前に "米国債ショート" が構築されていれば衝撃を和らげる "緩衝材" (=米国債の売りを受け止める買い需要)ともなりうるが、そもそも「テーパリング」を開始出来るのかさえ怪しい。それほど米国債トレーダーの "疑心暗鬼" は深く「軟着陸」は容易ではなかろう「胴体着陸」にならなければ良いが...。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?