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「インフレ」は放置? ー「物価連動債」(TIPS)は "Behind the Curve" シナリオに回帰中。

 “the economy has made progress toward these goals, and the committee will continue to assess progress in coming meetings.”

 昨日のFOMCについて「テーパリング、利上げは遠のいた」というニュアンスの報道が多いようだが、「ご都合」の面が強く出過ぎている。実際には ↑ (抜粋)「今後注視、検討していく」と述べただけであって、状況が変われば年内にもテーパリングに動く可能性は残されている

 実際米国債市場も株式市場も ”穏当” な反応だった。

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 余り目立たないが、実は変化が起きつつある市場もある。物価連動債(TIPS)だ。密かに「買い」が復活

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 TIPSのラリーでBEIは上昇5年は再度@2.70%に達し10年は@2.40%に乗せてきた中国株急落など新たな懸念要因はあるものの、*投資家は米国が「インフレ」から「デフレ」に転換=「日本化」するような事態は想定していないことになる。

 ちなみに最近発表されたオーストラリアの4~6月期CPIは年率@+3.8%と前四半期の@+1.1%から急伸。改めて物価上昇圧力の強さを示した。

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 むしろFRBの対応が遅れる "Behind the Curve" で「インフレ」になるシナリオが根強い「米中対立」の結果もアメリカの「返り血」は限定的で、むしろ「インフレ」が問題になる、との読みだろう。その意味で相変わらず株価への "ネガティブインパクト" への警戒心が強く、普通米国債にはしっかり「お金」が入っている状況が続く

 FRBテーパリング利上げなど具体的なアクションを起こさない限り、「米国債の低金利」は続くだろう。投資家は「金利収入」も欲しい。だが**TIPSは理屈が全く違う「金利収入」の面からも買う "必然性" がある

 **TIPSのリターンについて簡単におさらいしておこう。通常国債は額面@100で期日に償還されるが、TIPSは物価に連動して元金が上乗せされる。例えば6月の米CPIは@+5.4%だったが、仮に5年間同じ上昇率が続けば5年TIPSは@127(5.4%×5年)償還される。つまり100万円投資すれば127万円返ってくる訳で@5.4%の債券を買ったのと同じ ”高利回り” になり得る

 現状市場は5年間のCPI平均を@2.70%と見ているここからの売買いは実際の物価が "@2.70%" を上回るか下回るかの勝負CPI平均が@3.0%や@3.5%になれば「勝ち」、逆に株価の急落等で物価が@2.0%以下に急落するような事態が起きれば「負け」となる。

 そう言う意味ではFRBの対応が遅れ "Behind the Curve" になることはTIPSの「買い要因」になる。「インフレ」を放置すれば物価の上昇は止まらないのだから2018~2020年ではまずはTIPSがラリーし、後追いで普通米国債の名目金利が上がってきた。その再現となるかどうか。

 「インフレ」が最大の脅威だった1970~90年台と違って、今や先進国の中央銀行の最大の敵は「デフレ」=「日本化」。仮にここから「インフレ」が台頭して株価急落やクラッシュを誘発した場合、FRBやECBは非常に難しい政策選択を迫られるだろう。

 現在の米国債市場を見ているとFRBが「インフレ」抑止を優先して前倒しで利上げを進めていくとは考えにくいおそらく非常にゆっくりとした "アクション" が取られるため、 "Behind the Curve" を織り込もうとするTIPSの動きは理にかなっているとも言える。

 日米欧ともにそうだが、これを "生活民" の視点から考えると、本来「インフレ」に見合う「金利」を貰う事で調整されるべきところが、「金利」が貰えず物価だけが上昇する、いわゆる「スタグフレーション」的な展開も懸念される。はっきりいって「最悪」。これによって「大きな利」を得るのは巨額債務を抱える「国家」という ”カラクリ” だ。

 筆者も対「インフレ」では「金利」が上がる局面で債券など「金利系資産」への乗り換えを「メインシナリオ」にしていたが、どうやら考えを改める必要がありそう。やはり①不動産等「現物資産」②TIPS③株なら「インフレ銘柄」を真剣に考えないと「資産」は守れないかもしれない

 ただ「クラッシュ」は理不尽な「損切り」や「レパトリ」を誘発する事も多く、特に「買われ過ぎ」や買いポジションが集中している銘柄は危ない史上最大の「過剰流動性相場」の後始末なだけに、あまり過去の常識に囚われず、細心の注意を払って臨む覚悟が必要になるだろう。

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