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気になる「ドル高」の行方。 ー 重視すべきは「金利」か「インフレ」か。

 今回は生意気にも(苦笑) "専門外" のFXについて考察を加えてみたい。もちろん元・専門の「金利」を通して

 「ミセス・ワタナベ」一派のFXの皆さん、特に「ドル円」を手掛けている方はじりじりしていることだろう。FRBの「テーパリング」で「ドル買い」と思っていたら昨日(9/16)突如@109.20台に。世界を一周してきたらまた@109.70台。どうにも捉え所が無い。

 ドル先物指数(標題 ↑ )を見ても上へ行くのか下へ向かうのか微妙なところ。上値は@93.30近辺で "ダブルトップ" を形成しているようにも見えるが抜ければ上。逆にチャートが下に折れれば@90.00割れもある。

 ポイントは決め手が「金利」か「インフレ」か

 ヒントは「イールドカーブ」にある。昨日(9/16)の米国債の動きは5~10年債の金利上昇幅が30年債を上回る「ベア・フラット」

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 これは米国債市場がFRBの「金融引締め」、ここでは「テーパリング」が早期に起こることを示唆している。理屈で言うと「金融引締め」が早ければ早いほど「インフレ」が抑制され「通貨価値」が保たれる。昔から「ベア・フラットは買い」と言われる所以でもある。実際3月以降、5-30年米国債の金利差は直近最大160BP程度から100BP近辺へ縮小している ↓ 

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 だがここからどちらに向かうかは微妙だ。昨日発表の米小売売上高 ↓ も強かったし、物価指標を見ても確実に迫り来る「インフレ」。↓ 

 8月米小売売上高 前月比+0.7% 予想▼0.7% 前月▼1.8%減 ← 速報値▼1.1%減 *自動車を除くベース+1.8%増加 ー 5ヶ月ぶりの大幅増

 元・金利トレーダーの筆者には、これは「テーパリング」のみならず「利上げ」を急ぐようマーケットが催促しているように映る。5年債の上昇で政策金利が@1.00%に到達する時点は2023年内まで前倒しになっている。

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 ただ早期の利上げは「ドル高」の副産物。↓ という別の問題を引き起こす。10年国債金利が@11%を超えるブラジルなどはなんとか「通貨安」を ”前倒しの大幅利上げ” で抑えているが、ドル金利が上昇すればひとたまりも無い新興国全体で86兆ドル(≓9,400兆円)もの「ドル建債務」があると推計されており、利払い負担もかなりのものトルコリラなども同様の問題を抱えており、下手をすればデフォルトまで有り得る。

ブラジルレアル(1年)

トルコリラ(1年)

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 このような状況下、FRBは非常に困難な選択を迫られている。今中国恒大集団のデフォルトで揺れている中国も「人民元」は基本「ドルペッグ」相応の「ドル建債務」もあり、ドル金利上昇の影響は免れない

 一方「利上げ」を遅らせれば火が着つきつつある「インフレ」を助長し、「イールドカーブ」「ベア・スティープ」=「金利上昇下での長短金利差拡大」に転じるだろう。こうなるとまさに「悪魔のシナリオ」金利上昇下でドル安・株安を引き起こす「トリプル安」世界恐慌やブラックマンデーで起きた「クラッシュ」と同じパターンだ。

 今の「ベア・フラット」→「ドル高」を見ていると、最終的に「悪魔のシナリオ」は避けるだろうとマーケットはFRBを ”信頼” しているようだ。だがかつてと大きく違うのは、米国を始め世界中の債務残高が3京円を超える巨額になってしまっていること+1%で利払い負担が▼300兆円も増えてしまい、もはや新興国だけの問題ではない債務負担軽減のための「低金利」「インフレ」への引力は強烈に違いない。

 未曾有の「コロナ危機」同様、マーケットも前例のない苦難に直面していると言っても過言ではない。株価や暗号資産が上がって浮かれる向きもあるが、それが*「インフレ」の対価だとすれば喜んでばかりもいられない。

 かつてテスラ社のマスク社長Tweet していたが「ビットコインは現金より多少マシな程度」というのは言い得て妙。やはり「お金持ち」には一般人に見えない風景が見えている

 さて我々「小市民」「日経平均が31年ぶりの高値」などの文言に踊ることなく "事実" を見つめていきたい。実際「円」は対ドルで年初来▼6%も減価年初@103.44→@109.70)。「ドル建日経平均」も@$280でキャップされており、 ”騒ぐ程でも無い”

ドル建日経平均(5年)

 そして今後マーケット全体の "鍵" になりそうなFXでの「ドル」の行方。ここは「イールドカーブ」の 「ベア・フラット」vs 「ベア・スティープ」を1つのヒントとして違った角度から見ていくと面白いかもしれない。まずは9/21のFOMC待ちである。

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