見出し画像

意外と効果的? "利食い" の「ドル売り円買い介入」。- 財務省・為替市場課は世界最大の "官制ヘッジファンド" 。

 ”10/31 財務省:直近1カ月(9/29~10/27)で総額6兆3,499億円の為替介入を実施したと公表。記録を開示する1991年度以降、1カ月の円買い介入としては過去最大規模”

 「財務省・為替市場課は世界最大の "官制ヘッジファンド" だね」

 「損切丸」がロンドン本店のマネー関連のトップを財務省に連れて行った時にこんな "ジョーク" を言われた。当時東京支店では多額の「ドル預金」を預かっており(おそらく邦銀、外銀全部含めて1番多かった)、本店はホクホク1つの「貸し手」としては断トツの1位で、「流動性管理」上多過ぎて問題になったぐらいだ。

 ”ミスター円” 榊原財務官から "巨額介入" の溝口財務官等々、@80円割れまで買い下がった1兆ドルは平均買値が@108円程度と推定されている。日本でも「含み益+37兆円」とようやく国会の議論の俎上に載るようになったが、アメリカイギリスではこういう「お金」の話を「議会証言」等でガンガンやるのが常識なので、日本ももっと公の場で明らかにすればいい

 「為替介入」のメカニズムについて、筆者は依然 なぜ「円買い介入」は効かないのか? -「円」の需給からアプローチしてみる。|損切丸|note  の立場だが、切り口を「相場」に変えると少し違ってくる。「誰かの "損切り" は拾え」とよく言うが、裏を返せば「 "利食い" 千人力」になる。

 これで前月の介入と合わせれば約10兆円、「外貨準備」の@10%を処分したことになる。*確定された為替利益は+3兆円を超え、1991年以降30年で得られたドルと円の「金利差益」は+30兆円は下るまい。まさに世界最大の ”円キャリートレード”ヘッジファンド真っ青の素晴らしい運用成績だ。

 *財務省3ヶ月FB(短期国債)を発行して「円」を調達しFXで売る。その時の発行金利が仮に@0.1%、買った米国債の平均金利が@2%とすると:
金利差益=外貨準備100兆円×($@2%-¥0.1%)=+1.9兆円/年間
これを毎年政府の収入として繰り入れており貴重な財源となっている。

 今後残り90兆円の「ドル円売り」+「米国債売り」がマーケットに浴びせられる可能性があるが、+兆円単位の "利食い" はトレーダーにとって恐怖でしかない。「介入なんて効かない」とたかをくくっていると大火傷の可能性もあるイギリス人がよく言う "Never Say Never" だ。

 今回の「介入」のマーケットへの影響を考える時、見逃せない視点が 「ドル覇権」衰退の兆しと「ドル高」で "輸出" される「インフレ」。|損切丸|note1985年の「プラザ合意」に始まり、日本が「円高不況」で苦しんだ1990年代以降、*アメリカは「ドル安」を使ってさんざん "悪さ" をしてきた一大消費地・アメリカに輸出する以上やむを得ないとはいえ、「通貨高」で苦しむ各国をよそ目に、アメリカだけが潤ってきた

 最も悲惨だったのが「主要通貨ドル」を借りなければいけなかった発展途上国アルゼンチンメキシコタイ、etc., etc。FRBが「利上げ」する度に「金融危機」が襲った金利差による「ドル高」は「ドル建債務」を膨張させ、経済力の無い国は「デフォルト」に追い込まれた。それでもIMF(国際通貨基金)を通じて債務整理に応じている間はまだ良かったが、「アメリカ・ファースト」の限界。- 「年老いる世界」はどこへ向かうのか。|損切丸|note でもう他国のことを構っている余裕はない"ツケ" を回すようになってから「アメリカ憎し」が増大している。

 ある意味今回の「ドル高」容認は歴史的転換点「インフレ」に耐えられず止むに止まれぬ選択に追い込まれた。今後「アメリカ1強」は続かなくなる日本や中国、インドが保有する「ドル」を売って「利益」が出るのがその証拠でもあり、その "ツケ" はアメリカが払っていることになる。

 皮肉にも「戦争」で「ドル」との交換を事実上断たれた「ルーブル」が「人民元」や「ルピー」を介して原油やガスの「実質・物々交換」に移行している。今後は「円安」も対ドルだけでなく、多面的に捉える必要が出てくる。例えば年初来対ドルでは▼29%の「円安」だが、対ユーロなら▼16%、対人民元・ポンドで▼14%、対ウォンで▼9%になる。

 アメリカの軍事産業は「戦争」「ドル高」で自国の武器が高く売れて喜んでいるが、これは "特需"値段が高過ぎるエネルギーは主に国内向けで「ドル高」の恩恵はあまりない。むしろ価格競争力の低下がこれから徐々に顕現化し、2023年にやってくるリセッションでは思わぬ "落し穴" が待っている。「インフレ」「高金利」に苦しんだ1970年代を彷彿とさせるが、スペインイギリス同様、定石通り「覇権国家」衰退の道を辿ることになる。

 本来ここで「次の覇権国家」になるはずの「中国」は、「毛沢東的覇権国家」を急いだために自らコケてしまった。今後は「アメリカか、中国か」という選択だけでなく、多極的に取り組んで行く事が肝要。そう言う意味では「日本」は面白い立ち位置にあり、決して悲観一色ではない。

 ①育った「内需」の活用
 ②LEDの普及など「省エネルギー」技術の推進
 ③一足早く訪れた「高齢化社会」への対応ノウハウ

 1ドル@200円、@500円などと "煽る" 記事も散見されるが「損切丸」は組みしない。まあ一種の ”警鐘” と捉えておこう。「円安」は舞い降りたチャンスでもあり、 現に大手輸出企業を中心に増収増益が続出している。時間がかかるが今後「賃上げ」も進むだろう。

 ただ米中経済が揺らぐ中、「円安」頼りでは今後の難局を乗り切れない。↑ で示したような戦略をどう生かしてしていくのか、日本人 の "地力" が試される。アメリカは10年で株の時価総額が3.5倍になったが、同じ様な "変化" は日本にも起こりうる「(国債で)借金してお金を使いまくるシルバー世代」が若干心配だが、世代交代でようやく "変化の兆し" も見える。

 「強気相場は "悲観" の中で生まれ、"懐疑" の中で育ち、"楽観" の中で成熟し、"陶酔" の中で消えていく」(米著名投資家ジョン・テンプルトン)

 「円安」に襲われている日本は今まさに "悲観" の状態"懐疑" を経てパクス・ジャパニーズ(日本による平和)が訪れる事を祈りたいが、さて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?