意外と効果的? "利食い" の「ドル売り円買い介入」。- 財務省・為替市場課は世界最大の "官制ヘッジファンド" 。
「財務省・為替市場課は世界最大の "官制ヘッジファンド" だね」
「損切丸」がロンドン本店のマネー関連のトップを財務省に連れて行った時にこんな "ジョーク" を言われた。当時東京支店では多額の「ドル預金」を預かっており(おそらく邦銀、外銀全部含めて1番多かった)、本店はホクホク。1つの「貸し手」としては断トツの1位で、「流動性管理」上多過ぎて問題になったぐらいだ。
”ミスター円” 榊原財務官から "巨額介入" の溝口財務官等々、@80円割れまで買い下がった1兆ドルは平均買値が@108円程度と推定されている。日本でも「含み益+37兆円」とようやく国会の議論の俎上に載るようになったが、アメリカやイギリスではこういう「お金」の話を「議会証言」等でガンガンやるのが常識なので、日本ももっと公の場で明らかにすればいい。
「為替介入」のメカニズムについて、筆者は依然 なぜ「円買い介入」は効かないのか? -「円」の需給からアプローチしてみる。|損切丸|note の立場だが、切り口を「相場」に変えると少し違ってくる。「誰かの "損切り" は拾え」とよく言うが、裏を返せば「 "利食い" 千人力」になる。
これで前月の介入と合わせれば約10兆円、「外貨準備」の@10%を処分したことになる。*確定された為替利益は+3兆円を超え、1991年以降30年で得られたドルと円の「金利差益」は+30兆円は下るまい。まさに世界最大の ”円キャリートレード” 。ヘッジファンド真っ青の素晴らしい運用成績だ。
今後残り90兆円の「ドル円売り」+「米国債売り」がマーケットに浴びせられる可能性があるが、+兆円単位の "利食い" はトレーダーにとって恐怖でしかない。「介入なんて効かない」とたかをくくっていると大火傷の可能性もある。イギリス人がよく言う "Never Say Never" だ。
今回の「介入」のマーケットへの影響を考える時、見逃せない視点が 「ドル覇権」衰退の兆しと「ドル高」で "輸出" される「インフレ」。|損切丸|note。1985年の「プラザ合意」に始まり、日本が「円高不況」で苦しんだ1990年代以降、*アメリカは「ドル安」を使ってさんざん "悪さ" をしてきた。一大消費地・アメリカに輸出する以上やむを得ないとはいえ、「通貨高」で苦しむ各国をよそ目に、アメリカだけが潤ってきた。
ある意味今回の「ドル高」容認は歴史的転換点。「インフレ」に耐えられず止むに止まれぬ選択に追い込まれた。今後「アメリカ1強」は続かなくなる。日本や中国、インドが保有する「ドル」を売って「利益」が出るのがその証拠でもあり、その "ツケ" はアメリカが払っていることになる。
皮肉にも「戦争」で「ドル」との交換を事実上断たれた「ルーブル」が「人民元」や「ルピー」を介して原油やガスの「実質・物々交換」に移行している。今後は「円安」も対ドルだけでなく、多面的に捉える必要が出てくる。例えば年初来対ドルでは▼29%の「円安」だが、対ユーロなら▼16%、対人民元・ポンドで▼14%、対ウォンで▼9%になる。
アメリカの軍事産業は「戦争」「ドル高」で自国の武器が高く売れて喜んでいるが、これは "特需" 。値段が高過ぎるエネルギーは主に国内向けで「ドル高」の恩恵はあまりない。むしろ価格競争力の低下がこれから徐々に顕現化し、2023年にやってくるリセッションでは思わぬ "落し穴" が待っている。「インフレ」「高金利」に苦しんだ1970年代を彷彿とさせるが、スペインやイギリス同様、定石通り「覇権国家」衰退の道を辿ることになる。
本来ここで「次の覇権国家」になるはずの「中国」は、「毛沢東的覇権国家」を急いだために自らコケてしまった。今後は「アメリカか、中国か」という選択だけでなく、多極的に取り組んで行く事が肝要。そう言う意味では「日本」は面白い立ち位置にあり、決して悲観一色ではない。
1ドル@200円、@500円などと "煽る" 記事も散見されるが「損切丸」は組みしない。まあ一種の ”警鐘” と捉えておこう。「円安」は舞い降りたチャンスでもあり、 現に大手輸出企業を中心に増収増益が続出している。時間がかかるが今後「賃上げ」も進むだろう。
ただ米中経済が揺らぐ中、「円安」頼りでは今後の難局を乗り切れない。↑ で示したような戦略をどう生かしてしていくのか、日本人 の "地力" が試される。アメリカは10年で株の時価総額が3.5倍になったが、同じ様な "変化" は日本にも起こりうる。「(国債で)借金してお金を使いまくるシルバー世代」が若干心配だが、世代交代でようやく "変化の兆し" も見える。
「円安」に襲われている日本は今まさに "悲観" の状態。"懐疑" を経てパクス・ジャパニーズ(日本による平和)が訪れる事を祈りたいが、さて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?