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池田行謙さん歌集『たどり着けない地平線』を読む会に参加しました

短歌結社の一つである塔短歌会。その中でさらに、1973年・1974年生まれの会員で構成された会「柊と南天」があります。歌歴や入会時期はバラバラですが、同い年なのは共通点。昨年結成されて「柊と南天 第0号」を発行したのち、2回目の大きなイベントが今回の読む会でした。

著者の池田行謙さんも「柊と南天」のメンバー。2016年に第一歌集『たどり着けない地平線』を刊行されているので「柊と南天」主催で読む会を開こうという話が開催のきっかけです。

個人的に、歌会(かかい、と読むと最近知る)は数回経験があります。出席者が事前にテーマに合わせた一首を提出し、当日は誰の歌かわからない状態でみんなに配られて、容赦ないというか忌憚のない(どちらも一緒か)批評をし合うというイベントです。最後に誰がどの歌を詠んだか種明かしされ、またこもごも感想を言い合うところまでがセット。

読む会は初めてで、どんな流れで何が行われるのかさっぱりわからない状態で参加。主催側メンバーではあるので受付や設営を手伝いながら、周りの人に聞きつつ勉強です。

会は3部構成、第1部は池田さんが歌集のモチーフにもしていた小笠原の島々についてスライド紹介。池田さんは仕事で小笠原などの島に住んでいた経験があり、歌集にも景色が描写されています。歌集を読んで得た文字情報に加えて、ビジュアルで解説されるとまた違う世界が立ち上りました。

第2部はパネリスト4名で歌集の批評・感想を述べ合います。面白いと思ったのは、「これは何を指しているのか、上の句だけでは曖昧」という批評が出たとしても目の前の本人には聞かないこと。池田さんに「本人には聞かないんですね」と言うと「答え合わせの会ではないですからね」との返答。なるほど、その曖昧さも含めてみんなで読み込んでいくのが「読む会」なのか。

第3部は会場の皆さんからも意見を募り、パネリストも含めて議論します。小笠原に移住したあとの歌をまとめた後半で「歌に具体性が出てくる」というのが全体に共通の認識でした。その中でも固有名詞をどう扱うか、偶発や発見を文字に乗せる意義、語句の選び方など、いろんな意見が出ます。

でもやっぱり、ご本人は見守るしかない。パネリストとして登壇しているわけでもないので、本当に会場の後ろで静かに聞いているしかない。厳しい意見を聞くと居づらそうですが、みんなが自分の歌を題材に討論している場というのは著者ならではの贅沢かもしれません。歌会とは違う、面白いところだなと思いました。

「柊と南天」の皆さんとはメーリングリストでやり取りしていたものの、今回ほとんどの人が初対面。それでも何となく同い年の誼みのようなものがあって、すぐ打ち解けられました。今後は第1号の冊子を作るべく準備です。

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