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フリーランスライターが企業の情報発信をお手伝いするときに陥りがちな4つの罠

みなさん、こんばんは。フリーランスライター・ブックライターの岡本実希です。

独立して1年半がたち、幸いなことに様々なお仕事をする機会をいただきました。そのなかで学んだことや、同業者の方に教わったことを、少しずつ忘備録的にまとめていこうと思っています。

まずは「フリーランスライターが企業や団体の情報発信をお手伝いするときに気を付けたいこと」について。

執筆という「タスク」ベースでの仕事依頼

フリーランスライターとして活動していると、企業や団体の情報発信のお手伝いをさせてもらうことがあります。

・社員インタビューの執筆
・社内イベントレポートの執筆
・社内制度の紹介記事の執筆

などがこれにあたります。フリーランスライターの場合、これらの仕事に対して都度請求書を発行して報酬をもらう。つまり「執筆」というタスクに対して報酬をもらうことが多くなります。

一方で会社員の場合、「あなたはチームリーダーです」「あなたは新規事業のプロジェクトメンバーです」といった形で仕事を任されることが多いのではないでしょうか。つまり、これはロール(役割)に対して報酬をもらっている状態です。

これらは、単なる仕事の仕方の違いに見えるかもしれません。

しかし、タスクベースで契約を結んでいる場合、気を抜くとある「罠」に陥ってしまうことがあるように思います。

そこで今日は、フリーランスライターが企業の情報発信をお手伝いするときに陥りがちな4つの罠について書いてみたいと思います。

記事を書くこと・情報発信することが目的になっていないか

まず一つ目の罠は、「記事を書くこと・情報発信することが目的になってしまうこと」です。

「イベントレポートの執筆をお願いします」
「社員インタビューの執筆をお願いします」
「情報発信のための記事の執筆をお願いします」

こうしたタスクベースでの依頼があると、ライターは「記事を書くこと」「情報を発信すること」が目的だと無意識のうちに勘違いしてしまうことがあります。

しかし、背景にある目的は様々です。

採用が目的の場合もあれば、インナーコミュニケーションの活性化が目的の場合もあります。サービス、商品の認知拡大を目的としている場合もあるでしょう。

さらに「採用」と言っても、

・応募数が少ないのでまずは認知拡大を目指したい
・応募数は多いが、理念に共感してくれている人からの募集が少ない
・応募数は多いが、求めているスキル要件を満たしていない人からの応募が多い

など、課題は多岐にわたるはず。

情報発信の目的は、現状理想状態の間にあるギャップ(課題)を埋めることにあります。現状・理想状態・ギャップ(課題)を把握した上で、目的を定めて執筆する。これらの設定によって、記事に取り入れる情報や書き方は大きく変わります。

「記事を書くこと、情報発信を目的にしない」というと、至極当たり前すぎて「そりゃあそうだよね」と感じるかもしれません。しかし、記事の細部にこだわっているうちに「記事を執筆する」「情報発信を行う」という手段が目的化してしまうことは珍しくないのではないかなと思います。

・「記事を書くこと」「情報発信すること」は手段であり目的ではない
・目的は、現状と理想状態のギャップ(課題)を埋めること
・記事のテーマ設定、インタビュイーの選定、構成の作成に至るまで全てを「目的」に沿って行う

クライアントにとって、そして読者にとって本当に役にたつ情報発信を行うためには、ライターが独りよがりにならず、常に上記を意識しておく必要があると実感しています。

「より多くの人に届ける」ことだけを是にしていないか

次に陥りがちな罠は「より多くの人に届けることだけを是にしてしまうこと」です。

コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんは、著作「ファンベース」のなかで、マーケティング施策には以下の2つがあるとしています。

①そのブランドや商品の認知を拡大し、好きになる「きっかけ」をつくる短期・単発施策
②そのブランドや商品を強く愛し、支持してくれるコアファンをつくる中長期ファンベース施策

つまり、浅く広く知ってもらうための施策と、深く支持してくれる少数の人を生み出す施策があるということですね。

記事もこれと同じだと思います。

「浅く広く知ってもらい、認知を拡大するための記事」と「より深く知ってもらう・より深く好意を抱いてもらうための記事」があり、両者は記載する情報や書き方が全く異なるはず。

その違いを踏まえずに「ただたくさんの人に届けることが是だ」と思い込んでしまうと、結果として真に届けたかった人に届かなくなってしまう可能性があります。

自分が今執筆している記事は、どんな読者にどう読んでもらうことを想定しているのかをしっかり先方とすりあわせつつ、書かねばなりません。

インタビュイー以外からも情報収集できているか

そして、3つ目の罠が「インタビュイー(取材対象者)だけから情報収集をしようとしてしまう」ことです。

例えば「社員インタビューの執筆」といったタスクベースで仕事を依頼された場合、情報収集をする相手はインタビュイーだけ、といった状態に陥りかねません。

しかし、ここで他の社員の方にも話を聞ければ、

・インタビュイーと他の社員の方は、会社に対して共通して感じている魅力があるようだ
・インタビュイーは他の社員の方と比べて、特にこの点を会社の魅力だと感じているようだ

のように、よりインタビュー内容を解像度高く捉えることができるようになります。

また、他の社員の方や、サービスの利用者の方に「あなたから見て、●●さん(インタビュイー)はどんな人に見えますか?」と質問すれば、インタビュイーが自覚していないような魅力がでてくるかもしれません。

つまり、インタビュイー以外から情報収集することによるメリットはとても大きいと言えます。

もちろん、ワンショットのインタビューでそこまでできないよ…という方もいるかもしれません。その場合は、

・取材に同席したインタビュイー以外の人に、取材後に雑談的に話を聞いてみる
・社員の方のSNS等を見て、情報収集をする

といった方法も考えられます。

インタビュイー以外からも情報を得ることで、より発信が多面的で深みのあるものになるのではないでしょうか。

書いた記事を活かす視点をもてているか

そして、4つ目の罠が「書いた記事を活かす視点を持てない」ことです。

よく、ライターは「書いて終わり」の人が多いという話をよく聞きます。執筆というタスクベースでの依頼になると「届ける」という部分に目が向きづらくなってしまう人も多いのではないでしょうか。

また、たとえ届けたいという気持ちがあったとしても、SNSのフォロワー数が少なく「シェアしても、なかなか届かないんだよな…」と悩んでいるライターの方もいるかもしれません。

しかし、先日クライアントの方から、こんなふうに声をかけてもらい、気づいたことがありました。

「社外向けに書いてもらった記事でしたが、メンバーにも読んでもらいたかったので社内報でも流しました」
「イベントを開催する際に、記事を紙に印刷して会場に貼りました。来てくれた人が読んでくれて感想をくれたんですよ!」

つまり「届ける」とは、何もSNSで拡散することだけではないんですよね。ここまで最初に想定できていれば、クライアントに「こんな方法で記事を活用してみたらどうですか?」と提案できるかもしれませんし、最初から様々な場面で記事を使うことを想定して、作り方を工夫できるかもしれません。

まずは届ける意識をもつこと。そして、届け方のバリエーションをもちたいものだなと感じました。

そもそも「タスクベース」という考え方自体が無意味

ここまで、タスクベースで依頼を受けているライターが「企業や団体の情報発信をお手伝いするときに気を付けたいこと」について書いてきました。

しかし、読んでいただくとわかるように、結局は「クライアントの目的に沿って、読者にとって価値のある記事を書く」ということに集約していくのだと思います。

そう考えると、一部分を切り出した「タスクベース」という考え方自体がナンセンスなんですよね。

でも、やっぱり構造上、忘れてしまいがちになることも多い。だから記事を書くたびに、しつこくしつこく思い出していけたらいいのではないかなと思っています。

※フリーランスでもタスクに落とし込まれていない状態でお仕事を依頼いただくこともあり、フリーランス=タスクベースの仕事、会社員=ロールベースの仕事、とは一概には言えません。この記事ではあえて構造をわかりやすくするために構造を簡略化して書いています。

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