第8話「ジョセフ局長」~『GATTACA(ガタカ)』徹底考察~
そういえば『ガタカ』にも「ジョセフ」って人が出て来たね…
土星ミッションを強行した局長さんの名前が「ジョセフ」だった…
主要キャスト3人以外の登場人物の名前についても解説しないとね。
それぞれ皆、名前に重要な意味が隠されているんだ…
「JOSEF」は簡単や。
マリアの旦那で、イエスの戸籍上のオトン「大工のヨセフ」やろ。
そっちじゃないんだな。
養父ヨセフは聖書で活躍場面が無いし、聖人に列せられたのも随分と後になってからだ。
他にヨセフおったか?
イエス・キリストの物語で重要な役割を担う「JOSEF」とは…
「Josef of Arimathea(アリマタヤのヨセフ)」なんだよね。
アリマタヤのヨセフ?
「アリマタヤのヨセフ」とは、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの四福音書すべてに登場する重要人物…
サンヘドリン(ユダヤ最高法院)の議員でありながら、秘かにガリラヤ人イエスの弟子となり、イエスの処刑に最後まで反対し、十字架で処刑されたイエスの亡骸を引き取り、丁重に石室に埋葬した人物よ…
西洋社会では「Funeral Director」として葬儀・埋葬の守護聖人とされている…
だから「Director Josef」なのか。
宇宙開発局GATTACA(ガタカ)の局長ジョセフのキャラクターは、聖書における「アリマタヤのヨセフ」が元ネタになっているんだよ。
『マルコによる福音書』第15章に、こんな記述がある。
15:43 アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。
15:44 ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。
15:45 そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。
15:46 そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。
『ルカによる福音書』第23章では、こうだ。
23:50 ここに、ヨセフという議員がいたが、善良で正しい人であった。
23:51 この人はユダヤの町アリマタヤの出身で、神の国を待ち望んでいた。彼は議会の議決や行動には賛成していなかった。
23:52 この人がピラトのところへ行って、イエスのからだの引取り方を願い出て、
23:53 それを取りおろして亜麻布に包み、まだだれも葬ったことのない、岩を掘って造った墓に納めた。
なるほど。
ジョセフ局長も「有人土星探査」を待ち望んでいて、計画の中止を訴える他の幹部の行動には賛成していなかったもんね。
ちなみにアリマタヤのヨセフの肖像画は、このジェームズ・ティソのものが有名だ。
『アリマタヤのヨセフ』James Tissot
不思議な手のポーズだな。
どっかで見たような気もするんだけど…
五郎丸か?
懐かしい。あれ流行ったよね。
でもそうじゃない。
『ガタカ』の中で見た気がするんだけど…。気のせいかな?
よく見てたね。偉いぞ、ええじゃろう。
アリマタヤのヨセフのポーズは、主人公ヴィンセントがジョセフ局長に話しかけられた時に、こっそり再現されていたんだ…
ああ~~~~!
アンドリュー・ニコルって人は、油断も隙も無い監督ね…
まさに深読みし甲斐のある映画監督と言える。
さて、この「アリマタヤのヨセフ」は、四福音書の中マタイ・マルコ・ルカの3つでは同じように描かれている。
「密かにイエスの弟子になっていた、裕福で身分の高いユダヤ議員」という人物像だね。
だけど『ヨハネによる福音書』だけが、ちょっと違うんだ…
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