『ブラッド・シンプル』徹底解剖3「Sex, Picture, and Coffee service」
さて、私立探偵ローレン・フィッセルの「語り」による導入部が終わると、夜の雨の中をドライブするレイとアビーが映し出される。
その前に、前回を未読の人はこちらを先にどうぞ!
人間関係図も貼っとこか。
メルシーボークー、ナンボク。助かるよ。
ええんやで。ムッシュムラムラや。
イミフ…
さて、車中の二人はお互いの心を探り合っていた。
アビーは夫から最初の結婚記念日のプレゼントに銃をもらったことを話し、レイに対してこんな風に探りを入れる…
「その銃であの人を撃って、ここから逃げようなんて思ったりもするのよ…。あなたはよく我慢してるわよね…」
おい待てや。かなりヤバいこと言うとるやんけ。
こんなセリフやったか?
日本語字幕では結構省略されちゃってるんだ。ホントはかなりヤバいこと言ってるんだよね。
同情をひくために大袈裟に言ったのかもしれないけど、結果として彼女の願望通りになるんだもんね…
それを聞いたレイは、ここで自分のボスであるジュリアン・マーティのことには触れたくないので、こう答える。
「俺は奴に雇われてるだけだ。奴と結婚してるわけじゃない」
だけどアビーは諦めない。
「そうね…。私、時々こう思うの。あの人ちょっとオカシイんじゃないかって。例えば、心の病気とか…。それとも、オカシイのは私のほう?ねえ、どう思う?」
ちょっと怖い…
従業員のレイにとって、この状況は非常に「リスキー」だ。深夜のドライブの相手は、何と言っても「ボスの奥さん」だからね。後々のことも考えると、言葉選びも慎重にならないといけない。
それらを踏まえた上でレイは答える。
「聞いてくれ。俺は結婚カウンセラーじゃない。二人の間のことは知らないし、知りたくもない。俺はただ君のことが好きなんだ。ずっと前から…。もうすぐヒューストンに着いてしまうが、これからどうする?」
慎重やな。ちゅうか真面目なんやな。
真面目で責任感が強いんだね。そんなところをアビーに利用されてしまったわけだ。
そしてアビーは後ろから尾行していた車に気付いて、レイに車を止めさせる。
アビーは夫が自分の浮気に気付いていることを知っていた。素行調査されていることも。
このドライブに至った経緯は描かれていないんだけど、きっとアビーがレイに「誘う」ように仕向けたに違いない。彼女はレイが自分に好意をもってることを知っていたから、「誘いやすい」状況を作ったんだろう。
アビーは「確信犯」なんだよね。だからレイに「知らない車」だと言った。本当は探偵の車だと気付いていたのに…
こわっ!
この後も二人は「決定的な言葉」を避けながら駆け引きを続け、最後は道端のモーテルにしけこんだ。
二人の欲望と緊張感がよく伝わる、とてもうまいセリフ回しだったよね。
デビュー作の冒頭シーンや。コーエン兄弟も気合い入っとったやろ。
計算し尽くされたシーンだよね。微妙な言い回しと絶妙な間を駆使し、二人が深夜のドライブに至った背景をバッチリ説明している。
この冒頭シーンを観た映画関係者は、さぞかし唸ったことだろう。これだけでコーエン兄弟の才能を確信したと思うよ。
さて、次のシーンは違った意味で非常に興味深い。
モーテルでのベッドシーンやったな。
アビー役のフランシス・マクドーマンドは、この映画の撮影のあとに監督のジョエル・コーエンと結婚した。
このシーンを撮った時は、もう付き合うてたんやろか?
付き合ってたとすると、ちょっと興味深い!
自分の彼女と他の男とのラブシーンを撮影するんだもんね。どんな気分なんだろ?
そういう意味で「興味深い」と言ったんじゃないんだけどね。
この時アビーとレイの二人は、真っ暗な部屋の中で交わっていた。でもカーテンが開いていて、外の道路を車が通った時だけヘッドライトが窓から差し込み、裸の二人を照らしていたんだ。
そしてコーエン兄弟は、この二人以外にも「ある2つのモノ」を光で照らした。
しかもわざわざそれをアップで映すんだよね…
ある2つのモノをアップで?
なにそれ?
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