第106話「僕とフリオと校庭で④」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日
スナックふかよみ
なんで気付かなかったんだろう…
よく見れば、そっくりなのに…
ということは…
他の有名人の登場シーンにも、こういう仕掛けがあるってことね。
では、そのへんも見ていきながら、2番の歌詞を解説していこうか…
2番は、こんなフレーズから始まる…
In a couple of days, they're gonna take me away
But the press let the story leak
二三日後って…
「僕」は、ある場所から「留置所へ移動」させられ…
それを「報道関係者」が「リーク」、つまり、こっそり伝えた…
これは…
磔の二日後… イエスの死から三日目の朝の出来事だね。
二人の天使が現われ、イエスが生きていること、そして必ず帰ってくることを告げた…
『墓の中の二人の天使』
ウィリアム・ホール
「僕」が帰ってくることをリークする二人組!
ミュージックビデオ冒頭のラッパー二人組じゃん!
その通り。
『僕とフリオと校庭で』の始まりを告げるラッパーの二人組、ビズ・マーキーとビッグ・ダディ・ケインは…
人々の前に現れ、イエスの復活を告げた「二人組の天使」の役割を、果たしていたというわけだ。
やられた…
そして歌詞は、こう続く。
When the radical priest come to get me released
We was all on the cover of Newsweek
「革命的な司祭」が「僕」を「リリース」し…
「僕ら」は「Newsweek」の表紙を飾る…
「僕」のことを「リリース」した「革命的な司祭」とは…
イエスの言動をまとめて発表した、使徒や福音記者のことですね…
おそらく、最も愛された弟子ヨハネのことだろう。
彼が書いたとされる『ヨハネの黙示録』は、まさに過激で革命的な内容だから。
『福音記者ヨハネ』
ピーテル・パウル・ルーベンス
そして「Newsweek」とは「一週間のニュース」という意味だから…
イエスのエルサレムにおける一週間の出来事をメインに描いた福音書『ヨハネによる福音書』のことね…
全21章の約半分が「最後の一週間」にあてられていた…
「New Testament(新約聖書)」の「New」も、あるわね。
2番のサビは1番と同じ…
これで『僕とフリオと校庭で』の歌詞解説は終わりです…
それでは、残された謎について解説しよう。
まずは「ミッキー・マントル」について…
ミッキー・マントルは、突然、バッターボックスに現れた…
それまで子供たちと遊んでいたポール・サイモンは、「信じられない」といった感じの雰囲気でした…
他の有名人には、こんなリアクションをしなかったわよね。
何か意味があるのかしら?
だって「Mickey Mantle」よ。
「え?」ってなるでしょ(笑)
どうして?
ヤンキースの熱狂的なファンであるポール・サイモンにとって、憧れの存在だったから?
ポール・サイモンは「Mickey Mantle」という名前に驚いたんだよ。
名前に?
だからポール・サイモンは、空を見上げたんだ…
まだわからない?
空高く飛んで行ったボールの行方を見てただけでしょ!
「Mickey」が現われ、空を見上げる…
ポール・サイモンは、この絵のイエスを表現していたんだ…
『ゲッセマネの祈り』
ジョルジョ・ヴァザーリ
ええっ!?
そして「Mickey」は…
呆然としていたポール・サイモンの隣に行き、肩を優しく抱く…
「落ち込まなくていい。大丈夫だ」と…
もしかして「Mickey」って…
天使Michael(ミカエル)のことだね。
『ゲッセマネの祈り』
カール・ブロッホ
なんてこった…
そしてミッキー・マントルの苗字「Mantle」とは…
「マント」という意味だ…
マント…
イエスは「いばらの冠」と一緒に「赤紫のマント」を着せられた…
『エッケ・ホモ』
ピーテル・パウル・ルーベンス
その通り。
「ミッキー・マントル」という名前は「ミカエル、マント」という意味…
だからポール・サイモンは彼をキャスティングしたんだ。この歌にピッタリだったから…
出来過ぎです…
それじゃあ最後のひとり、アメフト界一の人気者、ジョン・マッデンは?
彼に関する演出も、非常に計算されたものになっている。
てゆうかさ、ジョン・マッデンだけ校庭の中に入れてもらえないのって、かわいそ過ぎない?
しかも、ボードにいろいろ書いて、あそこまで熱く戦術を指導したのに、みんな真面目に聴いてくれないし。
すべてポール・サイモンが考案した演出だろう。
ジョン・マッデンが演じている人物は、そういうキャラだから。
演じている人物? そういうキャラ?
ジョン・マッデンは、彼自身を演じているんじゃなかったの?
彼は「ある有名な人物」を演じているんだ。
その人物は、いくつもの指示が書かれたボードを手にし、人々を熱血指導していた…
だけど人々は熱血指導をウザいと感じ、その人物の言うことを聞かないこともあった…
それってジョン・マッデン自身のキャラじゃん。
そしてその人物は…
「約束の地」を目の前にしながら、そこへ入ることは許されなかった…
神の罰によって…
へ? 約束の地?
わかりました!「モーセ」ですよ!
ジョン・マッデンは「モーセ」を演じていたんです!
『モーセ』ホセ・デ・リベーラ
あ、なーるほど。
「ボードに書かれた戦術」は「石板に書かれた十戒」で…
「入ることが許されなかった校庭」は「入ることが許されなかった約束の地カナン」なのか。
ガッテンガッテン!
そういえば…
『ヨハネによる福音書』には、モーセの言葉を信じない人々の逸話があったわね…
5:46「もし、あなたがたがモーセを信じたならば、わたしをも信じたであろう。モーセは、わたしについて書いたのである。
5:47 しかし、モーセの書いたものを信じないならば、どうしてわたしの言葉を信じるだろうか」
まさかモーセの登場がオチだったとは…
まだオチじゃないわよ。
最後にポール・サイモンの歩く姿が映るでしょ?
これが本当のオチ…
これが?
ただ左右反転しただけの映像ですよね?
本来なら「右から左」に歩く映像も撮るべきなのに、「左から右」に歩く映像を左右反転させて使った…
二度撮る手間を一度で済ませたんです。ハッキリ言って「手抜き」ですよね。
そうじゃないんだな。
あえて「左右反転の映像」を使ったんだ…
え?
なんで?
ポール・サイモンが「左右反転の映像」を使った理由は…
壁に書かれた「REALLY」という文字を「左右反転」させるため…
文字を「右から左」に読ませるためだ…
あ!
文字を「右から左」に読ませる…
ヘブライ語か…
雰囲気も似てますよね…
だから直前に、ボードで指示するジョン・マッデン、つまり「モーセの十戒」を配置したんだよ。
聖書の言葉であるヘブライ語やアラム語は「右から左」に文字を書く言語だからね。
これが『僕とフリオと校庭で』MVのオチだ。
どんだけ完璧主義者なのよポール・サイモンって。
もう変態レベルだわ。
あたしも、そう思う(笑)
やれやれ。これでやっと一件落着ですか…
ん?
どうかしました?
まだよ…
まだ終わっていない…
え?
阪神タイガース…
なぜ「阪神タイガースの帽子」をポール・サイモンは被っていたのか…
その謎が、まだ残ってる…
ああ!そうでした!
「阪神タイガースの帽子」に「全て」が集約されているんでしたよね!?
ポール・サイモンのメッセージの全てが!
その通り。
「阪神タイガースの帽子」は、ポール・サイモンのメッセージ…
彼の思想や精神性が凝縮されている…
思想や精神性が?
どんだけ?
ちょっと大袈裟じゃない?
あまり風呂敷を広げないほうが…
大袈裟でも何でもない。
「阪神タイガースの帽子」は、ポール・サイモンの「魂」だから。
僕には、ポール・サイモンの想いが、痛いほどわかる。
どんな想いで「阪神タイガースの帽子」を被っていたのか、痛いほどわかるんだ…
教官…
うふふ。おもしろくなってきた(笑)
どんな解説を聴かせてくれるのかしら。ねえ、深読み名探偵さん…
では話しましょう…
ポール・サイモンが「阪神タイガースの帽子」を被っていた理由を…
つづく
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