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第22回:なぜ火事のあとにジェームズはミルドレッドを食事に誘ったのか?『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード』徹底解説

さて今回は警察署火事シーンの後半部を、小人のジェームズ中心に詳しく見ていこう。

この映画『スリー・ビルボード』において、彼は「James the Greater(大ヤコブ)」の役割だったね。

イエスの弟子には「小ヤコブ」という人物もいるんだけど、あえて小人のジェームズに「大ヤコブ」の役を当てがったところに、脚本家マーティン・マクドナーのユーモアセンスが光る。

ちなみに「火事シーン前半部」はコチラ!

せやけど、あん時のジェームズにアンジェラが入っとるってホンマか?

うん。間違いないね。

火事場シーンでのジェームズにはアンジェラが憑依している。

明け方にジェームズは「こんど食事に行こう」とミルドレッドを誘うんだけど、それを言ったのもアンジェラだ。

マジですか!?

母親をデートに誘ったってわけ?

その通り。

せやったらアンジェラは他の場面でもジェームズに憑依しとるんか?

いや、ジェームズにはあの時だけだ。

なんでそんなこと言い切れるんだよ!

アンジェラは様々な人に憑依してるんだけど、必ず見分けられる「しるし」がある。

ジェームズの場合「髪型」でわかるんだ。

彼はいつもオールバックにビシっとキメてるんだけど、なぜかあの時だけ前髪が「アンジェラ状態」で右目にかかっていた…

ズコっ!細かい!

世間の目は欺けても、この僕の目は欺けないよ…

よっ!名探偵!

ではまずディクソン救助の一連の流れを見てみよう。

どこからどう見てもアンジェラだな。

全然意味がわからないんですけど…

前回解説したように、ディクソンはアンジェラの《声》を聴いた。

燃える事件ファイルの炎の中から、何かを訴える《声》を聴いたんだ。

迫害者サウロが眩い光の中で聴いたイエスの声やな…

『Conversion(サウロの回心)』

そしてディクソンはアンジェラ事件ファイルを手に取り、炎の中へ突っ込んで行った。

新約聖書『使徒行伝』第9章において、眩い光の中で倒れたサウロはイエスから「町のほうへ向かえ」と言われ「三日間、目が見えず、何も口に出来ない」ほどの重症を負ったので、ディクソンもそれに倣ったんだ。

可哀想なディクソン…

でも、それで迫害者サウロから伝道者パウロに生まれ変われたんだよね。

実を言うと、まだこの時点では「回心」が完了していない。

この後に連れて行かれる場所で「ある人物」に出会い「目から鱗が落ちる」のだ。

『使徒行伝』ではダマスコ、『スリー・ビルボード』では病院だな…

そんなところまで再現されているのか!?

この映画って『使徒行伝』の完全なるパロディなんだよ。

あとでじっくり説明しようね。

さて、炎に包まれながらメインストリートに転がり落ちたディクソンは、大事なファイルを守るために出来るだけ遠くへと投げた。

それを見て驚いたミルドレッドは2階から降りてくるが、路上で足取りが止まってしまう…

炎に包まれたディクソンの姿が、レイプされた後に焼かれたアンジェラの姿と重なってしまい、体が動かなくなってしまったんだ…

そういえば、あのファイルの中には…

焼け焦げて変わり果てた姿になったアンジェラの写真が入っていたんだよな…

そこに現れたのが小人のジェームズだ。

絶妙なタイミングで十字路の角を曲がって来た彼は、火事にも路上で燃える男にも全く驚かず、表情一つ変えずに上着を脱ぎながら、無駄のない動きでディクソン救助へ向かう…

<続きはコチラ!>



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