第20回:怒りの炎へのプレリュード(&看板放火の真犯人について)『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード
さて、前回はウィロビーからミルドレッドへの手紙を解説したね。
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その次のシーンはディクソンとオカンのショートコントやったな。
マザコン息子と、ドナルド・サザーランドの髪型が好きって言うとる割にジャック・バウアーそっくりなオカンの凸凹コンビや。
面白いコンビだけど、あのシーン要る?
マザコンのディクソンが映画の最後で見せる「母離れ」への伏線のためだけの場面でしょ?
別に無くてもよくね?
浅はかな…
お前は脚本家兼映画監督のマーティン・マクドナーがこの作品に込めた想いを何も理解していないようだな…
なぬ!?
このシーンは短く、たいした意味もないように見えるが、実は「ある意図」のもとに作られている…
それは、この先の物語の展開を予告するものであり、マーティン・マクドナーが敬愛してやまない偉大な兄弟の代表作へのオマージュでもあるのだ…
偉大な兄弟?誰のこと?
映画界の偉大な兄弟といえば、コーエン兄弟に決まっているだろう。
あの母子コントのシーンは、コーエン兄弟の代表作『バートン・フィンク』のパロディになっているのだ。
マ、マジで!?
そうなんだよね。
あの短い会話の中に『バートン・フィンク』が凝縮されているんだ。
まずディクソンのオカンは「お前が仕事をさせてもらえるように、私が警察に話をつけてやる」と言う。
ディクソンが「やめてくれよ」と答えると、オカンは「退職金は出してもらえるんだろうね?」と聞き、勤続年数からその金額を皮算用してこう言った…
「連中も2000ドルは払うだろう」
これはニューヨークのバーでのシーンのパロディだな。
バートン・フィンクの代理人は「交渉すれば2000ドルは引き出せる」と言った。
ぐ、偶然だろ!
そしてディクソンのオカンは、新しく署長に就任したのが黒人であることに苛立った。
「the black guyなんか追いだしてしまえ!間違ってる!」
それに対しディクソンはこう吐き捨てる。
「南部も変わっちまったんだよ」
『バートン・フィンク』に黒人キャラは出て来ないよ!
黒人のコの字も出て来なかった!
だが、いつも『OLD BLACK JOE』を歌っていた南部の男は出て来ただろう?
その男と同棲している女に対し、バートン・フィンクはこう言った。
「なぜあんな奴と一緒にいる?出て行けばいい!」
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