インターステラー_アビイ_ロードC

天才クリストファー・ノーランの「クーパー三部作」最終章『インターステラー』はビートルズの「あの名盤」⁉&父娘の再会は夢だった⁉後編

ついにこのシリーズも最後やな。

これでTHE ENDや。

おかえもんの妄想にここまでCOME TOGETHERしてくれて、みんなどうもありがとう。

ちなみに前回は主に『アメイジング・グレイス』を中心にした話だったね。未読の方は、こっちからどうぞ

あと、簡単な登場人物の紹介を。

ジョセフ・クーパー:主人公。かつて腕利きの宇宙船パイロットだったが、事故とNASAの廃止後は畑仕事に従事している。優秀な科学者だった妻を病気で亡くす。不思議な力に「選ばれて」、人類を救うプロジェクトに参加。

マーフ:ジョセフの娘。父母ゆずりの才能をもつ少女。不思議な力の謎に立ち向かう。

トム:ジョセフの息子。マーフと違い父母の才能を受け継げなかったが、一家の大黒柱として多くの受難に耐える(祖父や息子の死や苛酷な生活など)。

ブランド教授:クーパーのかつてのNASAでの上司。人類を救うプロジェクト「ラザロ計画」の責任者であり、クーパーにその任務を与える。

アメリア・ブランド:ブランド教授の娘。宇宙に運んだ冷凍受精卵を管理。

TARSとCASE:ラザロ計画を補佐するロボット。

もう前置きはいらないね。

「クーパー三部作」の完結編『インターステラー』は、ビートルズの最後のアルバム『ABBEY ROAD(アビイ・ロード)』が全編にわたって使われている。

曲自体は流れないんだけど、歌詞がそのまま物語の筋やセリフに使われていたり、曲の雰囲気をアレンジしたBGMが流れるんだ。音楽を担当したハンス・ジマーの腕が冴え渡っているね。よーく聴くと、映画全体のBGMが『アビイ・ロード』の各曲にちゃんと対応しているんだ。完璧なるオマージュだね。

そこまで!?

そうなんだよ。

僕も最初に観た時、不思議に思ったんだ。なんでノークリ(クリストファー・ノーラン)は、ここまで『アビイ・ロード』にこだわったのかなって。

でも、この動画を聴いてもらえば、その理由がわかると思う。

ビアンカ、準備はいいかな?

では、大好きなパパの誕生日に捧げる『ヒア・カム・ザ・サン』です。どうぞ!

Bianca Caniglia『HERE COMES THE SUN』

娘にこんなん歌われたら、涙腺崩壊ノアの大洪水や。

歌う前のメッセージが超泣ける…

きっとお父さんは彼女が赤ん坊の頃に『ヒア・カムズ・ザ・サン』を子守唄で歌ってあげてたんだろうね。

だから彼女は辛い時や悲しい時にこの歌を思い出すんだ。あの時の安心した気持ちが心の奥底に眠っていて…

この動画を撮るために、ビアンカは一生懸命ギターと歌を練習したんだろうね。たどたどしさの中に、父への心からの愛を感じる。

さて、この動画で何か気付かなかった?

ちょっと「ん?」って思わなかったかい?

え?

どゆこと?

彼女の「HERE COMES THE SUN」って「HERE COMES I SIGN」って聞こえるんだ。

「わたしのサインが届くよ」って聞こえるんだよね。

ビアンカ流に「SUN」を「SIGN」で歌うと、こんな感じになる。


わたしのサインが届くよ

もう心配いらない…

これまで辛い思いをずいぶんとさせたね

もう何年も離れているような気がするよ

わたしのサインが届くよ

だからもう大丈夫


映画の物語にぴったり!

ね?

映画『インターステラー』は、『アビイ・ロード』だったんだ。

まずはアルバムの収録曲を紹介しておこう。

<A面>

1 Come Together

2 Something

3 Maxwell's Silver Hammer

4 Oh! Darling

5 Octopus's Garden

6 I Want You (She's So Heavy)

<B面>

1 Here Comes the Sun

2 Because

3 You Never Give Me Your Money

4 Sun King

5 Mean Mr. Mustard

6 Polythene Pam

7 She Came in through the Bathroom Window

8 Golden Slumbers

9 Carry That Weight

10 The End

11 Her Majesty


この中でも「傑作」と言われる「B面」がメインになっている。

A面の歌も引用されてることはされてるんだけど、そこまで重要じゃない。いちおう全曲が映画に使われているから探してみると面白いんだけどね。このアルバムの曲以外にも、『WHEN I'M SIXTY-FOUR』とか『ハローグッバイ』がネタに使われている。 特に重要なのは『DON'T PASS ME BY』かな。

そして『オブラディオブラダ』の回収も!

だったね。

じゃあ次の曲にいってみようか。

masaki hataによる『BECAUSE』だ。

masaki hata『BECAUSE』

hataさん、素敵!

この曲はわかりやすいね。「世界」と「愛」を歌ったものだから。

シンプルな歌詞のすべてが映画の中で引用される。特にこの部分が利いてるよね。

Love is old, love is new

Love is all, love is you

ええ歌詞や。宇宙の神秘と人類の可能性を知った主人公クーパーにピッタリやで。

ジョンじゃないけど、ホントになんだか涙が出て来るよね。

だね。

次はB面の3曲目『ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー』。

孤高のファンキー姐さん、ミカエレの演奏でどうぞ!

Michaele Hannemann『You Never Give Me Your Money』

ノリノリやな。誰かの物真似をしとる清水ミチ子や。

ねえねえ、おかえもん。

ビートルズの曲って有名なアーティストにたくさんカヴァーされてるよね?

なんで今回のセレクトは知らない人ばかりなの?

わざとだよ。

だって有名な人のカバーを紹介しても面白くないじゃんか。ほとんど誰の目にもとまらないけど素敵なものを探して選んだんだよ。再生回数も100回くらいのから1万回くらいのものを選んでね。埋もれてる素晴らしい歌を、たくさんの人に聴いてほしいんだ。

殊勝やな。

さて、この曲はポールのピアノの旋律が美しい名曲だよね。

映画では地球から土星に向かってる途中で、この旋律をイメージしたBGMが流れる。土星の輪っかの前のシーンだ。地球からどんどん離れてしまい、乗員がホームシックになってる頃。

でもこの曲が素晴らしいのはメロディだけじゃない。歌詞の中の言葉の使い方も抜群に素晴らしいんだ。

だから『インターステラー』では非常に重要な曲になっている。

「あんたはうちにお金くれへん。なにこのけったいな紙キレ?なめとんの?」って歌詞がか?

ははは。直訳したらそうなるけどね。

まあ、こんな歌詞だ。大事な歌だから全部訳すよ。

You Never Give Me Your Money

作詞・作曲:レノン=マッカートニー

日本語訳:おかえもん

あなたは私に財産と呼べるものなど残してくれなかった

残していったのは、古ぼけた本の山だけ

まだ話し合いの途中だったというのに

あなたは一方的に打ち切った


俺はお前に真理を直接伝えることはできない

そして俺がどこにいるのかも

これが急場だってことだけはわかってほしい

すべてが無事に伝わっただろうか?

もうお終いのようだ


カネが無いから大学には行けない

住む家も無くて、お先真っ暗

すっからかんで、どこにも行けない

月曜の朝には、ずだぶくろ担いだ失業者が

黄色いトラックでゆっくり運ばれてくる

どこに連れてかれるのか、わかったもんじゃない

でも不思議な気分だ

どこにも行けやしないってのに

なんだこの胸の高まりは?

俺はイカレちまったのか?


こんな時はいい夢でも見るに限る

荷物を積んだリムジンに乗り込み、シケた世界とおさらばさ

エンジン全開で加速しろ!ついに夢が叶うんだぜ!

これがお前の夢だったんだろ?

涙なんか拭いちまえよ

1234567…

良い子は天国に行けるんだ

1234567…

偉大なる宇宙の真理の中へ


前半は、オヤジと娘のやりとりやな。

まず、オヤジに捨てられた娘の言い分。そして次がオヤジから娘への「無言の伝言」。

真ん中は、最初が子供の進路についての面談での会話。

それから「黄色いトラック」は、クーパーが家を後にするシーンだ。あの時だけ青いトラックが砂ぼこりで黄色くなっていたよね。

そしてクーパーは興奮してた。帰れる保証の無い旅だったのに。

あれはオスとしての本能だ。家族や故郷、そして過去を捨てることになるというのに、胸が高鳴ったんだよね。頭の理性はそれを否定するんだけど、体の本能はそれをずっと待ち焦がれていたんだ。

最後の部分はブラックホールのシーンだね。

ステーションにくっついている子機の宇宙船に乗り込んで、エンジン全速力で事象の地平面を周回する。そしてその遠心力を利用してステーションを目的地まで吹き飛ばす。

でもそこで子機を2つ切り離すんだ。ステーションを身軽にするために。クーパーの子機と、ロボットTARSの子機をね。

カウントダウンと「天国に行く」って歌詞がピッタリだよね。しかも2回歌われるから。

ミカ姐はそこ省略しとるな。気ィが高まり過ぎて、忘れてもうたか?

かもね。

さて、映画の中で『You Never Give Me Your Money』を想起させる悲しい音色のピアノのBGMが流れたあと、クーパーはホームシックにかかってる乗組員ロミリーを見つける。そして自分が聴いてたイヤホンの片側を渡すんだ。

それは「虫の声と雨音」だった。

美しい土星のリングの上を滑るように宇宙艇は進む。虫の声をバックに。

そうだった!

土星の輪がまるでレコード盤みたいで、そこから聞こえてくるようだったね!

ボイジャーのゴールデンレコードやな。

地球の情報や音楽を録音したレコード盤をボイジャー探査機に載せて、宇宙に放流したんや。宇宙人に見つけてもらうために。

天文学者で作家のカール・セーガンは、ビートルズの『HERE COMES THE SUN』を入れるべきって主張したんやけど、版元のEMIがなぜか許可を出さんかったんよな。(wikiはこちら

虫の音といえば、B面4曲目の『サン・キング』だ。

ケヴィン・ラドウィッグのギターでどうぞ。

Kevin Ludwig『Sun King』

ええな。あのシーンにぴったりや。

土星は英語で「SATURN」。つまりギリシャ神話のサートゥルヌスのことや。サートゥルヌスは「農耕」の神であり「時」の神でもある。

ちょうどあの場所に、将来「クーパー・ステーション」が出来るんやったな。まさにクーパーの王国や。でもクーパーはそこは気に入らんかった。畑に囲まれて、昔ながらのノスタルジーに浸った世界を。そんでクーパーは「時」を選んだんや。

そうゆうことだったね。

さて、B面の5曲目と6曲目は飛ばすよ。そんなに大事じゃないから。

大事なのは7曲目からのメドレーだ。

まずは名曲『ゴールデン・スランバー』と『キャリー・ザット・ウェイト』から。歌ってくれるのは、アンカーとベルの二人。

僕の大好きなカバーバージョンだ。

Anchor + Bell『Golden Slumbers / Carry That Weight』

ええな。なんかええ感じや。これ聴きながら死んだら気持ちええやろな。

なんだか映画の中のキャラに似てる。クーパーの息子トムとマーフの大人になった時の。

この歌も超大事だから、全部訳すね。

Golden Slumbers

作詞・作曲:レノン=マッカートニー

日本語訳:おかえもん

かつてはあったんだ。家に帰る道が

かつてはあったんだ。帰るべき家が

おやすみ、愛しい人。もう泣かないで

僕が子守唄を歌ってあげるから


黄金色のまどろみが君の瞼にひろがる

次に目覚めた時には

優しい微笑みに包まれてるだろう

だからおやすみ、僕の愛しい人よ

もう泣かなくていい

僕が子守唄を歌ってあげるから


うっうっう…

自分で訳してても泣けてくるね。

これは子守唄っていいながら、死を迎える人に向かっての歌だから。

主人公クーパーは、一度は死を覚悟した。自分が犠牲になってアメリア・ブランド博士と受精卵を守るために。

でもその前に、もう地球に住む人類を救うことが出来ないという事実を知らされる。つまり、残してきた子供たちは死ぬ運命にあることを知らされるんだ。

切ないよね。「父ちゃんが人類のピンチを救ってやる!絶対に帰って来るから待ってろよ!」って出発したのに、自分も家族も全員死ぬ運命になるんだから…

『Golden Slumbers』は、そんな子供たちへの申し訳なさが歌われているように思えてくる。「見殺しにして、ごめんな…」って。

あと、ラストのシーンにも通じるものがあるよね…

アメリアがエドモンズの星で深い眠りにつくところ…

そしてメドレーは8曲目『Carry That Weight』に繋がる。そしてこの曲の中で突然『You Never Give Me Your Money』のメロディと歌詞が途中に入るんだ。これがまた映画で上手く使われているんだよね。ポールも天才なら、ノークリも天才だ。

Carry That Weight

作詞・作曲:レノン=マッカートニー

日本語訳:おかえもん

息子よ、お前はそれを背負っていくんだ

それがお前の役割なんだ

この先もずっと


俺の枕はあげないよ

その代わりに招待状を送ろう

だが残念なことに俺は

パーティーのクライマックスを見届けられない



息子よ、お前はそれを背負っていくんだ

これから長きにわたって


最初は息子のトムのことやな。あいつは損な役回りやった。あいつなりに頑張って一家を支えてきとったのに。

でもこの歌詞の「boy」ってアダムでありアブラハムでありイエス・キリストのことだから、とっても重要な意味をもつ歌詞なんだよ。彼らが人類にとって重要な存在なように、トムもクーパー家には重要な存在だ。マーフが家出して祖父が死んだあと、ひとりで家を守り、土地を守り、頑張ってきたんだからね。長男の死もあったのにね。

真ん中に入るのが『You Never Give Me Your Money』のメロディで歌われる部分。

これは父から娘への歌だね。

あの砂嵐に襲われた書斎で、クーパーがマーフに「枕は自分で持って行きなさい」って言う場面があった。

そしてマーフにだけパーティーの「招待状」が届けられるんだよね。

でも送った本人は、パーティーの〆の言葉「ユリイカ!」を聞くことができない…

うまいこと話のスジ作りおったな。

そしてメドレーはいよいよ佳境を迎える。

B面10曲目の『ジ・エンド』だ。

ここには、映画『インターステラー』における最重要フレーズが登場するよ。よく聴いてみてね。

演奏するのは、謎の男Windy。

彼は『インターステラー』に敬意を表してかどうかはわからないけど、映画の世界を動画で再現しているんだ。

アナログレコード盤の上を滑るレコード針のカートリッジは、土星やブラックホールの環の上を周回する宇宙艇を想起させるね。

そして「重力波」も登場し、「時空の歪み」も再現しているという手の込みようなんだ。

ぜひ、映画のクーパーたちになった気分で聴いてみて頂戴。

Windy『The End』

す、すごい時空のゆがみだった…

ブラックホールの近くで音楽聴いたら、こんな感じなんやろな。

こんなに見事に『インターステラー』の世界を再現してるのに、再生回数がたったの500回って信じられないね。

もっと注目されていい作品だ。

おかえもんのノークリ解説を知らずにこの動画に出会っていたら、全然印象違うんだろうな…

たぶんすぐに止めてるかも…

さて、歌詞を紹介しようか。

その前に、君たちはすっかり忘れているかもしれないけど、僕が以前こんなことを言ったの覚えてる?

映画『インターステラー』では、父と娘は「再会できなかった」ってね。

ああ!そうだった!

どうゆうことなんだ!?

そのヒントがこの曲に隠されている。

The End

作詞・作曲:レノン=マッカートニー

日本語訳:おかえもん

なんてこと!ついにやったわ!

私の夢の中に来てみない?

今夜すぐに


最後になってみなければ

わからないことってたくさんある

The love you take

Is equal to the love

You make


なんで最初んとこ、女口調なんや?

そ、それって…

も、もしかして…

その通り。

僕はビートルズの『ジ・エンド』に託されたノークリのメッセージを、こう捉えた。

クーパーが太陽系に戻ってきた時、マーフはすでに仮死状態か植物状態にあった。映画の中では「2年間眠って」クーパーの帰還を待っていたことになってるけど、本当はもう完全に蘇生させることはできない状態だったんだ。

だけどマーフは、深い「夢の中」で父と再会できるように準備をしていた。たぶん『インセプション』に出て来るようなマシンを使って。

そうしてマーフは「夢の中」で父に大事なことを伝える。

彼がここにいるべき存在ではないこと…

そして彼には行くべき場所があることを…

そ、そ、そ…

そんなんあり!?

ど、どうして…?

それがノークリという男だ。

「クーパー三部作」の各作品は全然関係ない物語のようで、いろいろ繋がってるんだよ。だから三部作なんだけど。

「私の夢の中に会いに来て」って歌詞は、マーフにとって父と再会することが「夢」だったからじゃないの?

そうとも取れるじゃんか。

でもね、あのシーンをよく見ると、マーフの夢の中の可能性が高いんだよ。

クーパーが病室に入ると、マーフは家族たち大勢に取り囲まれていたよね。子供夫婦や孫夫婦、ひ孫くらいまでいたかな。

でもあの家族たちは、クーパーが入って来ても、チラッと見るだけなんだよ。何も言わないし、なんの特別な関心も見せない。「誰か入って来た」程度の様子だった。

これって変だよね?

い、いや…

連中はクーパーの顔、知らんかっただけやろ…

そんなことないよ。

だってクーパーは超有名人だよ。ステーションの職員も「まさかお目にかかれるとは!高校生の時にあなたをテーマにして論文を書いたんです!」って感動するくらいの人物になってるんだよ。人類の救世主マーフの父なんだから、歴史の教科書にも載っていて、誰でも顔を知ってるはずなんだ。

だからマーフの子孫たちも知っていて当然。しかも一族が生んだ伝説の英雄なんだから、もっと感動してもいいはずだ。

なのにチラッと見ただけで、あとは無関心。

これって、どっかで見たことある風景だよね。

夢の中に「異物」が入った時の、投影された人たちの反応…

ま、マジか…

マーフは植物状態で相当深い場所まで潜っているから、時空を超えて遠い銀河にいるアメリアのことを感知することが出来たのかもしれないね。

でないと知ってるわけがない。

もしくは、「エドモンズの星」でのアメリアのイメージが、全て「夢」で植え付けられたイメージだという可能性もある。

この場合、クーパーはマーフによって「インセプション」された可能性もあるんだよね。ちょっと怖いけど。

確かにそうかも…

ところで最後の部分だけ歌詞が英語のままなんだけど、これはやっぱり訳すのが難しかったから?

そう。

そしてこの歌詞が『インターステラー』にとって最も重要な歌詞でもある。

物語の中で、父と娘のコミュニケーションは、実は上手く伝わってなかった。

だって、クーパーは過去の自分に対して「行くな!」と叫んで「STAY」というメッセージを送ったんだ。「娘のもとに留まれ」ってね。

でもその「STAY」は違った意味に取られてしまった。

マーフは「ここにいろ」っていうメッセージだと思ったんだ。

でも、この勘違いが結果として人類を救うことになる。

あの時クーパーが未来の自分からのメッセージ通り「STAY」してしまったら、重力の謎を解き明かせないまま人類は滅亡していたからね。

『ハローグッドバイ』だね…

Lexxi Raine『HELLO, GOODBYE』

5次元世界から過去のマーフと自分の別れのシーンを見てるクーパーの状態そのまんまだよね、この曲は。

「ハロー」って言う自分と「グッドバイ」する自分。「行かないで!」って引き止める娘に対し「YES」って叫ぶ自分と「NO」と言う自分…

あまりにも完璧すぎて鳥肌が立つほどだ。

つまり

父は娘から「愛」を奪ってしまったけど、それが同時に「愛」をつなぐことになったっちゅうわけか。時空を超えて、意味も結果も反対になったんや。でも両方反対になったから、マイナスとマイナスでまた元に戻った。だから「イコール」なんやな。

そしてもう一つの解釈も込められている。

あなたが選ぶその「愛」は、あなたが一から作る「愛」でもある

ってこと。

それって、もしや…

ここで名盤『アビイ・ロード』が真骨頂を発揮する!

ポールがふざけて入れた隠しトラックみたいな戯れ歌が、新たな人類史を生む序曲になろうとは!

さあ!準備はいいかな、ジェス!?

「クーパー三部作」最終章『インターステラー』のフィナーレを飾る『ハー・マジェスティ―』を歌ってくれ!

Jess Walker『Her Majesty』

わお!

アン・ハサウェイかと思った!

ちょっと似てるよね。

さあ、歌詞を紹介しよう。

Her Majesty

作詞・作曲:レノン=マッカートニー

日本語訳:おかえもん

女王陛下はホント素敵な女の子

でもあんまり話をしてくれないんだ

女王陛下はホント素敵な女の子

だけど乙女心って天気みたいにコロコロ変わる

僕は彼女に言いたいんだ

とってもとっても愛してるって

だけどシラフじゃ言えないな

ワインを一樽空けたら言えるかな

僕の腹も樽みたいになっちゃうけど

女王陛下はホント素敵な女の子

いつか絶対に自分のモノにしてやるぞ


偉そうなことばっか言ってるわりには本心を伝えられないクーパーと、揺れ動いてばっかのアメリアにピッタリな歌詞だ!

そういやアメリアはエドモンズの星にコロニーをこしらえとったな。5000個の受精卵と共に。

そうだったね。

あれって何かに似てない?

わかった!

アメリアは「女王」なんだ!

自分のコロニー作って、大量の受精卵抱えて…

アリとかハチの女王と一緒だ!

ノークリ、細かいな!

しかも歌詞が完璧に活きてるやんけ!

素晴らしいよね。

ビートルズがあの戯れ歌で本当のTHE ENDになったように、「クーパー三部作」もあのシーンで完璧にTHE ENDになったんだ。

主人公の男は、ついに妻の死を完全に乗り越えて、未来へと向かった。

ひとりの人間に戻ってね。

2000年の『メメント』から2014年の『インターステラー』まで、14年間かけての長い旅だった。

苦難を耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!

そしてその軌跡を解明した僕自分を褒めてあげたい!

チョー気持ちいい!何も言えねえ!

ここまで頑張ったおかえもんに投げ銭してあげてね。

おかえもんを手ぶらで帰らせるわけにはいかないぞ。

これで完全にめでたしめでたしや!

おまけにクーパーは新しい星で「HOME」をおっ立てたっちゅうオチも用意されとる。

その名も『ニュー・ムーン・シアター』や。

映画『SING』より

ははは。あのコアラの声はマシュー・マコノヒーだもんね。

確かにこれでハッピーエンドだ…


と、言いたいところなんだけど…

まだ僕の中には完全にスッキリしないものが残っている。

まだあるんかい!

マーフが最後に言った言葉が僕の脳裏から離れないんだ。

なんか特別なこと言ったか?

マーフはクーパーに「あなたにはやることがある。ここに居てはいけない」って言った。

クーパーは「いったいどこに行けというんだ?」って聞く。

そしてマーフは答える。ただひと言。

「ブランド」

別におかしくないやんけ。

アメリアの苗字や。

そうなんだけど、この物語は「クーパー三部作」だってことを忘れたのかい?

まだ英国が輝いていた頃の栄光の思い出、ミニ・クーパーの物語なんだよ。だからビートルズの曲もたくさん使われた。かつて同時代に世界を席巻した両者だからね。

マーフによると、「ブランド」が「故郷」を離れ、遥か「遠い地」で「孤独」なまま「深い眠り」につこうとしているんだよ。

そこへ助けに行けって父に言うんだ。

どういう意味かわかる?

ブランド…故郷…遠い地?

わかったで!

「ブランド」っちゅうのは「クーパー」のことや!

その通り。

現在ミニ・クーパーはドイツのBMW社のもとにある。80年代以降経営がボロボロになったんで、BMWに売られてしまったんだ。

かつての英国の象徴だった車は、遠いドイツへ行ってしまった。

しかも映画の中にはクーパーだけじゃなくて他の英国車も登場人物の名前で登場する。

えっ?だれ?

クーパーの息子トムの奥さんの名前は「ロイス」だった。

ミニ・クーパーと並んで英国車の象徴だったロールス・ロイス。そしてロールス・ロイスもクーパー同様にBMW社の「ブランド」になっている。

しかも「ロイス」は砂塵をいつも吸い込んでるせいで、結核みたいになっていた。医者が来なければ、死んでたとこだったね。

さらに次男の名前は「クープ」だった。なんだか車の「クーペ」に似てるよね。「cooper」から「r」を取ると「coope」つまり「クーペ」になる。そしてクープも死ぬ寸前だった。

さて、映画と現実世界の中の事実を、あのマーフのセリフと重ね合わせると、どういう意味になるかな?

イギリスの手から遠く離れてしまった「ブランド」を助けろってこと…?

しかも「車」が今にも死にそうな状態だから…?

どうだろうね…

知らんのか!

きっと最新作『ダンケルク』に答えがあると思うんだ。

だってあれはドイツ軍から逃げ、欧州大陸からイギリスに撤収する話だもんね。

ノークリは絶対にいろいろメッセージを散りばめているはずだ。

ここまで見た限り、彼は謎を放置しない男だ。メディア向けに言うことと、考えてることは別なんだよね。彼は絶対に本心を明かさない。イリュージョニストだから。

というわけで、公開が楽しみだね、ダンケルク。

天才クリストファー・ノーランが、いったいどんな仕掛けを施したか今から気になるよ。

また繋がるのか!?

ダンケルクはどうぞIMAXシアターで!

そういや、ビートルズは『アビイ・ロード』の後にもアルバムを発表したんやったな。前に録音しとったけど、気に入らんかったんでお蔵入りしとったやつや。それを編集し直して発売したんやった。

なんやったけな、そのアルバム…

確か「ゲットバック・セッション」の録音やったはずや…

あんな有名なアルバム忘れるって!

『LET IT BE』だよ!

てことは、まだ続きがあるっちゅうことも考えられるな…

『GET BACK』なのか『LET IT BE』なのか…

ちょい待て。

A面がメインやったら、最後の曲はかなり問題やで…

ダーティー…マギー…

メイ…

David Brookings 『Maggie Mae』

僕の妄想にここまでお付き合いくださって、本当にありがとうございました。

ダンケルク編もお楽しみに!

せっかくええとこやったのに勝手に終わらすな!

ねえねえ、おかえもん…

ちょっと気になってたことがあるんだけど…

あの受精卵は「代理母でどんどん出産させる」ってアメリアは言ってたよね?

てことはアメリアのお腹を使ってやるってことでしょ?

ある程度人口が増えるまでは…

そこにクーパーが行くってことは、そのお手伝いをするってことだよね?

せやな…

好きな女に他人の子を孕ます仕事や…

そうやって次世代のために遺伝子の多様性を確保せんとあかん…

自分の直接の子孫やのうて、惚れた女が産んだ子を育てんとあかんのや…

これもなんか蟻とか蜂の世界に似とるな。オスの出番はあんまりあらへん。

似てるっていうか、アメリア・ブランドが「コロニーの女王」なんだから、そういう仕組みになるのは当然だ。

でも2人の間に女の子が生まれたら、人口増加計画も楽になるんじゃない?

男だったら困るけどね。何の役にもたたないから。

男ばっかりが優遇される聖書の世界とは真逆だね。でも新しい時代には、そっちが相応しいのかもしれない。

新しい「アダムとイブ」であるクーパーとアメリアの生活は、なんだか不思議なものになりそうだね。

新しい神話を作るのも、そう単純なハナシじゃないな。

じゃあ最後はラストの大事なメドレーを完コピした演奏を聴きながらお別れするとしよう。

この辺で大御所を出しておこうかな。創世記の再構築と新解釈に挑んだクリストファー・ノーランに敬意を表して、元ジェネシスのこの方に登場してもらおう。

皆さんお待たせしました!フィル・コリンズの登場です!

最後をバシっと〆てくれよ!

そういや、フィルがジェネシスと並行して活動しとったバンドがあったよな?

なんやったっけ?

ブランドX(笑)



『INTERSTELLAR』

(’14、邦題:インターステラー)

製作総指揮:ジェイク・マイヤーズ、ジョーダン・ゴールドバーグ、キップ・ソーン

製作: エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、リンダ・オブスト

脚本:クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン

監督:クリストファー・ノーラン

音楽:ハンス・ジマー

出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、エレン・バースティン、マット・デイモン、マイケル・ケインほか



YouTube視聴はこちら

Amazonビデオはこちら


<おまけ>

Rod O'Toole&Friends『DON'T PASS ME BY』

DON'T PASS ME BY

作詞作曲:リチャード・スターキー

日本語訳:おかえもん

(1番)

あなたのサインに耳を澄ます

何かを伝えようとする、その痕跡を

直接は届くことないメッセージ

あなたがノックしてくれるのを待っていたの

この古びた私の部屋で

これってもう私は見捨てられたってこと?

(2番)

飾り棚の上の時計がカチコチ動いたぞ!

誰かが手を振っているのが見えたけど

それは自分自身の手だったんだ!

君は今夜どこにいるだろうか?

私は広大な宇宙にひとりぼっちで

君に直接会うことはできない

これってもう君の愛が失われたってこと?

(サビ)

私を行かせないでくれ

つらい思いは、もうたくさんだ

わかっているだろう?「君」がすべてなんだ

その行動がどれだけ私を悲しませたのかわかるかい?

「君」が出ていく姿なんて見たくないんだ

私を行かせないでくれ

これ以上悲しませないでくれ

(3番)

あなたのこと疑ってごめんなさい

あんまりだったわね

きっとあなたはどこかで事故にあって

時計のネジを狂わせた

あなたは私にこう言ったの

いつか必ず帰って来るって

だから私は「STAY」の言葉通りここに留まった

あなたからの連絡を待ち続けていたの





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