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トイレのジーさま。

♪トイレには それはそれはキレイな
女神様がいるんやで

(植村花菜:トイレの神様より)

数年前、職場でのことだ。

血相を変えてトイレから戻ってきた後輩が、早口でまくし立てるように訴える。

「Gがいた!Gがいた!!
今トイレに行ったらGが真っ二つに切れていました!!
掃除のおばちゃんに早くなんとかしてもらわないと!!!!」

その場には私を含め、女性4人。

・当時50代後半の女性の係長(以下:係長)
・当時30代後半の先輩
・私(確か29だったと思う)
・後輩(20代半ば)

という構成だった。

まっ二つに切れたGに恐れおののく後輩。

私も先輩もギョッとして

「うわー、イヤやね!」

と言っていた。

後輩は続ける。

「なんでGがまっ二つに切れてるのか分からないです!!」

「はー恐ろしっ!!」

「早く掃除のおばちゃんなんとかしてくんないかな!!トイレ行きたいのに漏れちゃう!!」

まっ二つに切れたGはグロテスクな姿だったのだろう。

後輩は非常に動揺した様子で「じだんだ」を踏んでいた。

そんな後輩を見かねた係長が、心配そうにアドバイスした。

今、ボラギノールとかあるやろ?

その場の空気が止まった。

みな、係長が言ったセリフの意味を理解できなかったのだ。

沈黙を破ってくれたのは先輩だった。

「係長、それって痔の…」

そこまで言うと、ハッとした。

後輩は赤面して、慌てたように叫ぶ。

「違います!!痔じゃありません!!」

係長「えー?でもトイレで痔が切れたって…?」

後輩「違います!!!!
痔じゃなくてGです!!!!」

係長「ジい?
ジーって何のこと?」

後輩「係長、ゴキブリのことGって言わないんですか?!」

係長「あっ、ゴキブリねぇ!
なぁんだ!!
そら知らんかった(笑)」

後輩「もーっ!!

アタシが職場の上司たちに向かって痔が切れたって宣言するわけないじゃないですかー!!

恥ずかしーっ!!」

私はこの会話の横で、笑い転げていた。

まるで、殺虫剤をかけられて苦しむGのように。

どうやら係長には

痔が痛い!痔が痛い!
今トイレに行ったら痔がまっ二つに切れていました!!掃除のおばちゃんに早くなんとかしてもらわないと!!!!」

という風に聞こえていたようだ。

先輩はあとから私に耳うちした。

「たとえGと痔を聞きまちがったとしても、ふつう掃除のおばちゃんが話に出てくるわけないじゃんね?(笑)

係長、そこでおかしいと思わなかったのかな(笑)」

係長は、後輩が掃除のおばちゃんにボラギノールをぬってもらうために、おしりを突きだすシーンでも想像したのだろうか。

係長の頭の中を想像して、私はまた、台所の角で死ぬ前のゴキブリのように笑い転げたのだった。

トイレをきれいにしておかないと、女神さまではなく、ジーさまが集まってくるのかもしれない。

掃除のおばちゃん任せではなく、自分たちもきれいに使わないといけないな、と思いましたとさ☆

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