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2022年J2第1節 横浜FC-大宮アルディージャ「叶わぬ夢、叶える夢」

2021年シーズンでJ1からの降格が決まってから3か月程度だが思ったよりも短く感じた。瀬古、松尾といった中心選手の移籍があった一方で、大半の外国人選手の残留とJ1でもそのチームの中心となっていた選手の横浜への移籍があり、そして年が明けるとキャンプがすぐに開始と、慌ただしく日は過ぎていった。

2022年シーズンの横浜の冒険がこの日から始まった。サッカーシーンが戻ってきた。サポーターも待ちわびていたが、この3人はもっと待ちわびていただろう。

齋藤功佑

齋藤功佑は昨年5月のFマリノス戦で肩と腕を負傷して戦線離脱し、最終的には手術を決断。J1残留をチームメイトに託したが、それは叶わなかった。フィールドに立つ事ができないまま戦線離脱する無念さは計り知れない。2020年限りで横浜を退団したハマのヴァンデイラ佐藤謙介から背番号8を受け継ぎ飛躍するはずだったが、逆に地面を這って過ごすことになるなんて誰が想像しただろうか。

前半40分、長谷川が前線からプレスをかけて奪ったボールを高木がつなぎ、齋藤が左足でゴールを射抜いた時は、喜びもそうだが長かったと安堵の様な感慨深い気持ちになった。

小川航基

その齊藤は後半開始早々にもチャンスメイク。手塚が裏に出したボールを追いシンプルに中にクロスを上げる。大宮DFがクリアし損ねたのもあるが、こぼれたボールに合わせて横浜は追加点。決めたのは小川航基。

サッカーファンなら彼を知らない人も少ないだろう。彼も2021年の活躍を嘱望されながらそれが叶わなかった一人。各世代別代表に選ばれ続け、東京五輪のエースストライカーとして将来を嘱望されていたが怪我に苦しみ、ライバルが結果を残す中で、磐田では新型コロナでのチーム規律違反があり評価を落としただけでなく、本人が認める様にルキアンにポジション争いで勝つ事が出来ず、母国開催の五輪の出場は叶わなかった。2021年はリーグ戦1ゴールと不振に陥った。

そのエースストライカーが復活の狼煙を上げた。決して美しいゴールではなかったが、ゴールを挙げるのがFWの仕事。キャンプからも調子は良い。私生活で不安の声があるのもサポーターが知っているが、横浜のサポーターは過去の事は総じて気にしない。過去は過去、今は今。目の前にいるのは、地元横浜に戻って来たストライカー小川航基である。地元のクラブをJ1に昇格させるのが2022年の彼の夢であってほしい。サポーターも今年1年で再昇格をするのが夢だ。

クレーベ

2021年苦しい台所事情でも輝きを放ち続けたのがクレーベだった。特に勝ち点を上げられなかった前半戦でも高さを生かしたポストプレーで味方を引き出し、時にはフィジカルの強さでポジションを取りゴールをねじ込んだ。新外国人達が合流し、彼らとどんなコラボレーションがあるかと期待していたが、逆にクレーベは負傷で8月以降欠場。チームはそこから合流したばかりの選手で前線を再編成しなければならず、プランが崩壊。最終節札幌戦で復帰した時には、既にJ2降格が決まっており運命の歯車のかみ合わせの悪さを呪った。

そのクレーベが投入されたのは、2点差を追いつかれて残り10分となったところだった。2点目を挙げた元日本代表の小川に代わって、元セレソンを後半残り時間が少ないところで投入できる豊富な攻撃陣を存分にいかした。クロスボールは彼を目掛けて入れるだけでゴールの匂いが漂い続けた。

最終的には、後半アディショナルタイムに前線でボールを受けた伊藤翔がヒールパスをすると反応していた山下が倒されてPKを獲得。これをクレーベが決めて3-2と大宮を逆転してゲームは終了した。約半年近くゴールの味を忘れたFWにゴールの味を思い出させるのは、全身に横浜の青い血を駆け巡らせるのと同じだ。昨年の大黒柱が戻ってきた。

3バック

上富田でキャンプを見ていた形と軸は同じ3-4-2-1だった。選手こそ何人か違えど、3バックがワイドに開いて、4のサイドの選手をさらに追い越す動きも見せたり、3バックの左右の選手がインサイドのレーンに入ってゲームを作るのが特徴的だ。攻撃時は2-3-2-3の強気な形になる。2点目は、中塩と手塚が得点の起点となった部分等は昨年では起きなかった形だろう。

守備はまだ完成されていないし、シーズン最初の試合で誰がどう捕まえるのか曖昧な部分もあった。2失点は反省点だが、当然修正も入るだろう。経験豊富な四方田監督がどう対応するのかも見ものである。競争は激しく誰が出ても同じクオリティを維持しやすいはずで、長丁場42節でさらにW杯イヤーで過密になる日程をどうこなしていくのか興味深いところである。
余談ではあるが、四方田監督は小学校に入学するまでは横浜市在住であり、彼もまた戻ってきた一人と言えるかも知れない。

昨年横浜はJ1残留の夢を叶える事ができなかった。だけど今年は、昨年以上の補強をして、再昇格に挑む。今年は夢を叶える。

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