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2022年J2第13節ザスパクサツ群馬-横浜FC「錯覚」

途中交代で退いた小川。ベンチ脇から大きな声を出していたが横浜のロングボールで味方同士が被ってしまい、上手く収められなかったプレーでカラーコーンを蹴り飛ばし頭を抱えた。自分がそこにいたら収められたと考えただろうし、もう少し言えば自分がどこかで4点目を決めていたら厳しいゲームにはならなかっただろうし、物に当たった自分の愚かさ、チームメイトも必死に戦っているからこそそういったシーンが生まれるのもわかっているからこそやり場のない怒りが生まれた。
ただそれはサポーターも同じ。タイムアップの笛を聞いてもどかしい思いが募る。

強いと錯覚していた

ゲームは前半を終えた段階で0-3とリード。今日は久しぶりに横浜の勝利が見られると思っていた方も多いのか謎の安堵感がスタンドにあった。試合が終わっていないにも関わらず、強いと錯覚してしまっていなかったか。

とは言えそれは無理もない。試合の入りこそ、落ち着かない展開だったが、横浜対策を敷いた群馬の守備陣を翻弄。相手を5-4-1とさせて押し込んでいる間は横浜時間。これは町田戦でも同じ。サイドで優位に立ち、クリアされたボールを回収してゲームをコントロールする。
町田戦と同じく、ボランチがディフェンスラインに落ちてビルドアップする機会はそれよりも減少し、手塚はより高い位置でゲームメイクをする。彼が前にいる効果は縦にボールがしっかり入ること。前半24分は、手塚の縦パスを渡邊が散らして、小川のクロスに長谷川が飛び込んだもの。2試合連続ゴールを挙げた。

その6分後には、ゴールのおぜん立てをした渡邊がゴール。コーナーキックをフリーでヘディングで流し込んだ。群馬の選手が肘を使ったと抗議していたが、そもそも競り合ってもいない。群馬のマークミスなのか、何か錯覚があったのか、あれだけきれいに飛ばせてくれたら渡邊ならゴールして当たり前のボールだった。久しぶりの出場となったゲームで即結果を残した。FWはシステム的に3名程度ポジションがあるが、代表経験者や実績ある選手も揃う激戦区。その中でFW陣最年長の渡邉も存在感を示した。2週間で6試合をこなすハードスケジュールとなっている4月後半から5月上旬のゲームではこうした選手はかかせない。そして、本人もここからさらにチャンスをと考えているだろう。

そして極めつけは、イサカ・ゼインのゴール。右に展開したボールをそのまま一人で運び、左側を切られていたからカットインするではなく右足を振りぬいてゴールに転がした。サイドネットを揺らす絶妙のコースを突いていたゴールだった。雨で芝生も濡れていて、地を這うシュートは滑りやすかったのも幸いした。

ほぼ完ぺきな試合展開で群馬を圧倒。これを見たら浮ついた気持ちになってしまうのも仕方ない。前半は相手陣内で多くの時間を経過し、ハーフコートマッチの様相を呈していた。

まだ食べられるのだろうか

後半3分に失点してからは群馬の攻勢を浴び続ける。3点取って終わりではなく、守らずにさらに4点目を目指すスタイル。それが体力的にもメンタル的にもどこまで浸透しているのか自分にはわからなかった。悪い言い方をすると、3得点してお腹いっぱいになってもまだ食べろというのはある意味酷。それは四方田監督の采配であり戦術なのだが、その準備はどの位できていたのか。群馬は後半から左サイドの山根が輝く。中村拓もイサカもアップアップの状態になった。
ボランチも幸か不幸か、右側に手塚を当てたことで守備の網が作りにくくなり、かいくぐられて失点したのが3点目のミドルシュート。

前半横浜が18分で3点奪ったのと同じく、後半の18分間で群馬は同点に。油断があったのか、それとも体力の限界だったのか。後半最初からディフェンスラインを下げることも可能性としてはありうるが、それだと後半45分間サンドバッグになるのを耐えるだけになるだろう。贅沢かも知れないが3得点しても、まだ満足せず4点目を狙えと言った指示は中々届きにくい気もする。

それでもクレーべを入れて前線のポスト役が明確になり、後半44分落としたボールから松浦が右からクロスをいれ、山下が左にいたサウロ・ミネイロにパス。左足で流し込むだけだったが、シュートはクロスバーを叩いて枠を捉えることはできなかった。そして試合終了。3点リードを守れず3試合連続で引き分けることになった。

試合後引き揚げてきた長谷川とゴール裏が何かもめている。何を言われたか離れていた自分が知る由もないので、推測になってしまうがルールの問題はさておき一言二言文句が出るのは仕方ないだろう。引き分けにしても2試合連続で追いつかれての引き分けでは勝ち点1をもぎ取ったとは言えない。この試合では攻撃陣が3点取ったと思ったら、守備陣が3点を献上していたら、サポーターなら何点取れば勝てるのだと言いたくもなる。ただ3ゴールの攻撃陣を責めるのはお門違い。3試合連続で引き分けている間に、仙台が勝ち点9を3にして迫ってきている。前節や前々節は、こうした試合も長いシーズンの中であると言えたが、3点リードを追いつかれるのは滅多にない。

ここまで首位ではあるが、基本的に苦闘の歴史の方が横浜FCは遥かに長い。J1は過去通算3シーズンしか所属していないし、J2でも二けた順位の方が多かったりする。そういったチームが、J1昇格を経験し、降格したとは言え首位を走って目線が変わってしまったところはある。今までだと勝っても慎重で悲観的な見通しが多かったのに、前線からガツガツ嵌めてゴールをバンバン取れるサッカー強い!と自分たちを強いと錯覚していないだろうか。私たちはあくまでも挑戦者。過去J1に昇格したとは言え、3シーズンのうち2回が最下位で誇れるものなどないだろう。今首位でも将来は何も約束されていない。J2首位を誇っても仕方ない。J1に行くためのチェックポイント42か所の12か所目を最初に通過したに過ぎない。

頑張ってるは慰めにならない

ただ、このゲームをして「頑張っている」という評価の仕方はあまり良くないと私は考えている。サッカーに限らずスポーツの多くは、点数などで勝敗は明確である。その結果が芳しくない時に「頑張ってる」と言われて選手は気持ち良いのだろうか。私は嫌味にしか受け取れないから、結果が良くない時に「頑張っている」的な表現は極力避けている。育成年代なら「挑戦している」「トライしている」「頑張ってる」で評価してよいだろう。失敗も挫折も経験して上手くなっていく年代で、それがさらに次のステップを生む。
でもここはJ2。みんな上に上がりたくてプレーしている。成績が悪い下位のチームは強制的にJ3に落ちる。そういった天国と地獄が隣り合わせのリーグだ。選手も頑張っているからこそ、望んでいない結果にはNOと言った方がいい。みんな昇格したいから勝利が欲しい。追いついたでなく、追いつかれた引き分けで「頑張っている」「頑張った」は欲しかった結果を手に入れられなかった選手の何の慰めにもならない。

そこに愛はあるのかい

ここ数試合での応援の状況を鑑みてクラブもやっと重い腰を上げて注意喚起をした。

この記述を見ているとブーイングどころか、もっと酷い言葉が溢れているようだ。「愛があるかどうか」なんて言葉もあるけど、応援なんだから愛があるのが当たり前。プロサッカー選手が頑張るのがベースなのと同じ。愛情がなかったらそれは応援とは呼ばない。「愛がある」の大義名分で何を言っても良いとは思えない。愛されているかどうかを決めるのはそれを受け取ったクラブや選手である。
あとは本当にクラブが実行するかどうか。お客様は神様と錯覚していはいけない。誹謗中傷を繰り返すのは、神でも疫病神や死神である。情けは人の為ならずとして今までもそれを許してきた過去がある。サポーター内での自浄作用にも限界はあるし、他の観客の観戦体験を損なわない為にもクラブは有事の際は適切な対応を取るべきだと考えている。クラブがチームや選手を守らなくてどうする。

ただ一つ、サポーターは自分を錯覚してはいけない。それだけだと思う。自分たちが横浜FCファミリーの一員だと考えているなら、ルールを守ってひとつ屋根の下にいよう。罵詈雑言、誹謗中傷するのが、本当になりたい自分なのか。


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