見出し画像

2024JリーグYBCルヴァンカッ3回戦横浜FC-名古屋グランパス「陽の当たる場所」

ルヴァンカップは2024年に開催形式をこれまでのJ1クラブメインでの開催から、J1からJ3の全チームが参加するトーナメント形式に変更された。この変更により、特に下位カテゴリに所属するチームには様々な恩恵があることが報道されている。
サポーターの多いJ1クラブが大挙することによる地域への経済効果、普段より多い観客を入れての試合運営の課題洗い出しと改善、上位カテゴリーのチームや選手を相手にして高いパフォーマンスをすることで選手自身も個人昇格やこれまでと違った評価を手に入れることもできたりする。J3の場合は、J2所属経験があっても観客動員が低迷することは多々あるが、こうしたいわば格上の相手と対戦することで、地元クラブの再評価にもつながる面もある。

さて、その3回戦は横浜のホームゲームである。


陽は昇る

前半44分、櫻川のパスを受けた小倉が左足を振りぬくと名古屋ゴールに突き刺さった。これで小倉は公式戦2試合連続ゴール。どちらも櫻川からのパスを受けてのもの。前半何度映像を見直しても思い出せないが、彼が前半の途中でプレーの方向が変わった瞬間があった。しっかりと縦パスを入れて組み立て、強度の上がるタイミングがあった。そこから彼が試合の中で展開に絡みだしていた。

このゴールも自陣でボールを奪ったら自分で持ち上がってチャンスを作ったもの。前半早々に2失点したいら立ちを振り切るようなプレーで、ゴールをしても過剰なセレブレーションはなく、早く戻ろうと呼びかける姿が印象的だった。

彼の活躍は素晴らしいが、現在の横浜はJ2リーグではリーグ最少失点のチームでボランチは激戦区。井上潮音、ユーリ、和田、三田、状況によっては中野もこなせるので2つのポジションを5から6名で争っていること。
小倉のプレースタイルを見ていると、三田のような長いボールも蹴ることもできるし、和田のような気の利いたポジションもとれるので、起用も悩ましい部分がある。
ただし彼はこの日のゴールのようにFWを追い越す動きもするので、それは他のボランチの選手にはない動きかもしれない。四方田監督にとっては嬉しい悩みである。

陽と陰と

小倉の活躍の陰でシャドーの選手たちは、影が薄かった。新井は負傷退場という不運はあったが、効果的なゲームメイクはできず。唯一相手をフェイントで交わして際どいシュートを放った部分で存在感は示せたが、しっかりとブロックを作った相手を切り崩すまでは至らなかった。球離れの遅さでボールをロストするシーンもあり、悩みは深い。

さらに新井の負傷退場で出場したコンフォンも負傷退場。15分程度のプレーで、岡山戦ほどのプレーは見せられないまま退くことになった。試合中の負傷は不運と考えているが、これによってこの試合の采配もかなり制限されてしまい、後半の3枚替えもやむなしとなった。
シャドーのポジションは、小川、カプリーニ、伊藤と3枚がフル回転。櫻川が出場する際に、高橋がこのポジションに入ることもあるが、前線の選手が替えの利かない状態のため、本来はこのポジションに入った選手はチャンスであったが、それも叶わないままだった。

公式戦初出場となった室井は、後半になってボールをよく呼び込めていた。献身的に走り回れるまで回復しているのであれば、リーグ戦での決定力不足にあえぐチームを助けてくれるだろうが、まだ連携はほとんどないまま。彼の出遅れもリーグ戦での得点力不足に影響していると思っている。

コンフォンが退いたシャドーのポジションには三田を移動させた。負傷退場が続いた結果の産物ではあるが、小倉が中盤に入った場合はこうなるんだろうなというデモンストレーションに近いものを見た気がしている。それは小倉への信頼性が増した部分なのだろうと思った。

影をも踏ませぬ差

試合は開始5分と7分に名古屋に連続でゴールを与えたところから始まった。左サイドの守りの連携が全く取れていない。村田が名古屋・榊原について絞った状況で、サイドに張っていた名古屋・中山にボールが出る。村田は慌てて戻るが、加速した中山に振り切られてクロスを許すと中にいた名古屋・永井に決められてしまう。
村田のポジショニングが曖昧な部分もあったが、ほかの選手が中を埋める前提で佐藤はポジション離れて追い出しに行ってもよかった。立ち上がりの集中力のない時間に失点。

その2分後には、今後は中山が抜け出すと見せかけて上がってきた榊原にパス。折り返しを名古屋・野上に決められてさらに失点。ギアを上げる前に連続失点で畳みかけられてしまう。5バックだとしても、中盤から入ってくる選手を誰も捕まえられないと失点してしまう。影をも踏ませぬとはこういうことをいうのだろう。

公式戦出場が少ないメンバーが多くなり、ボールの奪いどころへの意識もバラバラでゴールを献上して、名古屋が少し落ち着いてからしかボールを持てなくなった。横浜は1-3とされて後半30分に選手交代を3人行った。2点差を追いかけるとしても中々ハードルは高いのだが、それでも運動量や連戦への疲労を考慮するとギリギリの采配だろう。

結局この采配は機能せず、中村拓海が終盤まで疲労したメンバーが多い中でも中盤のこぼれ球を拾うようなタフネスを見せたが、ゲームとしてはそれ以上動くことはなかった。

まだ道は続く

この日の観客は3423人。いつもの天皇杯と同じ位だろうか。クラブもメールを何度も配信したりと、やれることはしていたとは思うが、そもそも年間シート適用外だったり平日夜だったりと、いつものサポーターが少ない分新しいファンを取り込めたかはわからない。

この日富山は昨年のJ1王者神戸を破る快進撃を見せた。観客は8000人を超えていた。この三ッ沢でのゲームではそういった観客動員数のような地域のクラブ感はなく、名古屋くらいになると関東圏のサポーターも多く宿泊してのような大きな経済効果もないだろう(岡野町界隈のラーメン屋は多かった)。
むしろYSCCがFC東京と試合をした時のほうが観客数は多かった。在関東のファンの数も多いからだろう。

と報道で言われるような効果も感じられないまま横浜のルヴァンカップは幕を閉じたが、小倉が頭角をメキメキと伸ばしたのは収穫だ。次はもっと陽の当たる場所でプレーを見てみたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?