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2023年ルヴァンカップグループステージ第2節横浜FC-ヴィッセル神戸「萌し(きざし)は見えたか」

冷たい雨

三ツ沢では2週続けての雨となった。雨足そのものは先週に比べたらそう強くない。雷雨に苛まれた2021年のセレッソ大阪戦に比べたらどうってことはない。ただ、この時期の雨は身体を冷やす事がとにかく危険である。夏場の試合では気温も20度から30度あり熱が奪われる事は少なくとも、この春先の雨は体温を奪うには十分である。若いと新陳代謝が良いので気が付かないが、年を重ねたり子どもがいたりすると実感する。あるいは登山が趣味の方も認識しているはずだ。寒い時に身体を濡らす事が如何に命を危険に晒すことになるのか。だから登山のウェアは高級なものになればなるほど、如何に濡れないようにするか、身体を外気に触れさせないようにするかが考えられて設計されている。特に三ツ沢でのサッカー観戦は屋根もなく逃げる場所もない。

それにしても、"もう許してくれたって いいころだと思った。"

走れコウタロー

思っていたよりも神戸は前に出てこない。これもカップ戦ならではだろうか。Bチーム同士で試合開始で、様子見の展開に近い。ただ、時間を追うごとに横浜がボールを支配する展開になっていった。
まず井上が良い。古巣との対決で燃えていたのかどうかはさておき、ボールの受け方が良い。今までは、ユーリララとの交代が多くボールの奪取力に目をつぶって展開力に期待されて出場するシチュエーションが多かったが、この試合はユーリララとの中盤のコンビでこれまで以上に自身がボールを捌く回数も多く、引いてしっかりとブロックを作った相手ではなく奪いにくる相手をはがしながら前進ができたのが大きかった。

もう一つは、センターバックの吉野とマテウスのコンビ。ゲーム序盤は息が合っていない部分もあったが、吉野がマテウスのカバー役に徹したあたりからボールが奪われにくくなり、横浜がボールを握ることができた。対人はマテウスがまずまずのプレーを見せて前回出場したルヴァンカップ広島戦でのようなパフォーマンスとは見違えた。左利きのセンターバックでもあり今年の主将でもあるガブリエウが長期離脱の中では、彼がパフォーマンスを上げないと左からの展開に制限がかかってしまうという意味では悪くない出来だった。

そして、このゲームで一番の発見は林の左右での目途が立ち始めたことだろう。中村拓海のような鋭いクロスや積極的なオーバーラップは少なかったが、後半になると攻撃の際には彼がインサイドハーフのようなポジションを取り3バックにして中盤を支配しようとしたあたりに工夫が見られた。これはJ1開幕戦となった名古屋戦でも中村拓海が何度か見せたプレーに近い。彼の場合はここからのクロスや、裏に抜けた近藤へのパスがあったが、林の場合は中盤での数的優位を作るところと山下やカプリーニへのつなぎ役をこなして見せたことが新しい発見か。総じて左サイドバックは、和田、橋本、武田、林と4枚いるのに対して、右は中村、岩武が本職で岩武を真ん中で使うと右の控えがいなくなる。和田はボランチとしても使うこともあり、左右できるのであれば林の存在は大きくなる。

滑るのは

そういえばここ2週連続で、サッカー大好き芸人が三ッ沢に来場。Jリーグが呼んだのか、クラブが呼んだのかはさておき、特に春先に少しでも来場者を増やす施策を考えているのだろうという思いは伝わってきた。
Jリーグの無料招待策に批判をする方がいるが、サッカー観戦から離れてしまった人を取り戻す施策はクラブ個別では限界があり、リーグとして行っているのだろう。その一方で想定以上に2023年は来場者が戻ってきている感触もあるが、タレントのブッキングはかなり前から行う必要もあり起案時にはそこまで戻ってくると想定していなかったとすれば、この方法は間違っているとは思えない。
そのサッカー大好き芸人が来場した週に続けて雨とはついていない。彼らの芸も観客が少なく、笑いも拍手も少ないとただただ滑っているように見えてしまうのは哀しいものがある。ペナルティ・ヒデにおいてはこの三ツ沢を本拠地とした横浜フリューゲルス入団が決まっていたと聞く。

横浜の選手は滑ることはあまりなかったが、ボールコントロールがダメなのか決定機を決められなかった。後半ヒアンの2回の決定機も神戸GK・前川にセーブされてしまった。ヒアンのシュートのこぼれ球をユーリララが押し込むがこれも弾かれる。滑っているのは試合結果かもしれない。後半は横浜がボールを握って攻撃する回数も時間も長さを感じた。ただ、選手交代をした辺りからキレはなくなっていたと感じる。小川慶は左サイドでボールは持てるが、クロスが上がらなくなった。伊藤翔が入ってボールのキープできる面は増えたが、前を向く回数は減ってしまった。

結局は、神戸・大迫のゴールで後半40分に失点し、横浜は0-1で敗戦。神戸が後半に大迫、山口、武藤、イニエスタと主力級を投入しながらも持ちこたえていたが、残り5分をこらえきれなかった。

この試合も、試合終了後は雨が小降りになっていった。それでも先週の惨敗劇の後の雨のそれとは違っていたはずだ。ルヴァンカップで割り引いて考えなければならない部分は多くあるにせよ、手ごたえを感じていた方が多かったはずだ。ヒアンもJ1では特別な選手ではないが、それでもゴールに何度も迫った。これまでリーグ戦で出場が少なかった選手が、期待以上の活躍をした。それをどうリーグ戦につなげていくか。
リーグ戦は出場する選手がほぼ固定されてしまっている。それはチームが考える理想のサッカーに対して、控えの選手とはまだ差があると考えているのだろうか。それにしても、この神戸戦は後半は長い時間横浜がボールを握れていた。
他のクラブではとっくに花が咲いているが、横浜に遅すぎた春の訪れがあるのかもしれない。そんな思いを抱かせる、息吹が感じ取れた戦いであった。


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