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E206:ねぇ先生、それ痛い?


母が懐かしそうに、その話をするまで、
私自身には、まるで記憶がなかった。

3歳の私は
「とりあえず確認しないと気が済まない子」
だったらしい。

小さい頃から私の目の治療をしてくれていた
今は亡き大先生が、母にため息をつきながら言ったそうだ。

「源太は、他の子となんかちゃう、面白い子やわ」
「え? どういうことですか?」

先生によると、3歳の私は
先生の医療行為を一つ一つ確認する子だったらしい。

「それは痛いの?」
「どのぐらいで帰れるの(治療が長いの)?」

そして、「ちょっと痛いよ」と言うと
泣くのかと思いきや、

「うん、わかった…」と言って
真剣な顔で、じっとその一部始終を見ているのだそうだ。

事前に確認して、覚悟して、そして「試合」に臨むような、そういう子だったらしい。

その治療が痛みを伴うものか、否かで、顔つきが変わるのだそうだ。事前確認の上の、覚悟みたいなものか。

回診の時も、他の子はギャーギャー泣くのに、
私ったら、先生をじっと見つめて、その白衣の袖を引っ張りながら、
「あとどれぐらいでお家に帰れる?」と聞くらしい。…迷惑な子である。

病棟には、もっと大変な子がたくさんいて、
先生は、そういう子たちの治療に専念したいのに

白衣の先生の姿を見つけるなり
3歳の私がちょこちょこかけ寄ってきて、白衣の袖を引っ張りながら
「ねー、あしたの(治療)は痛い?」
「僕はいつ帰れる?」
と聞いてくるから困り果ていた、らしい。

…らしい、
を連発しているが、全部幼き日の私のことである。

この辺の記憶は全くないので、
母の説明に頼るしかない。

トラバーチン模様とか、
どうでもいい事はよく覚えているのに、

この辺の先生とのやりとりは、全く覚えていない。

ただ、覚えてないけれども
それはきっと私に違いないと思う。 
思い当たるふしがあるからだ。

今も、私は無意識に聞いている。
とくに歯医者で。

「あの、今日の治療は痛いですか?」
「時間どのくらいかかります?」

私は確かに、「事前に教えて欲しい人」なのである。
気楽な気持ちで椅子に座って、激痛を伴う治療だったら心の整理ができない 笑

そうして、無意識に確認していたら、先日、仲のいい歯科衛生士さんに、衝撃的なことを言われた。

「あ、大丈夫ですよ。源太さん、誰が担当しても大丈夫なように『源太さん、痛いの苦手』と申し送り事項ができているので…」

…え?


歯医者での話を母にしていたら、
母が「いくつになっても変わらないのねー」と

さっきの3歳の頃のエピソードを教えてくれたわけである。


それにしても、「源太さん、痛いの苦手」って
何それ 笑笑

そんなこと
カルテに書いてあるの?
どんなふうに?

もう、痛い以上に恥ずかしい…

穴があったら入りたい…


【連続投稿: 127日目    ライランⅡ:  38日目】

今日は38日目です

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