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働きたかった。たとえ赤字になっても。

3人の子育てと仕事の両立を断念し、作業療法士の仕事をやめて専業主婦になりました。

「元専業主婦がIT企業を創業した」と言うと、驚かれます。それだけでなく、先日、日経新聞にも取り上げてもらう機会をいただき、今の状況を、当時の私が聞いても驚くと思います。

ただ、最初の一歩を踏み出さなかったら、今でも悩める専業主婦だったかもしれません。

最初の一歩とは、勇気をだして1時間700円のファミリー・サポートに子どもを預けたこと。そんなに勇気のいること?と思うかも知れませんが、私の体験談をシェアしようと思います。

働けば働くほど、赤字?!

子どもがたちが6歳、2歳、0歳のとき、子育てに専念するために、会社を退職することを選択しました。

理由は、仕事と3人のワンオペ家事育児をしながらも、子どもにイライラしない母親でいたいが、ひとり抱えきれず、キャパを越えてしまうことがあり、悩んだ結果、仕事を手放しました。

専業主婦になると心の余裕ができ、理想の子育てができました。

しかし、次第に社会から隔離されたような気持ちになり、自分は何も価値を生み出せていない人間だ、焦りや不安や虚無感を感じるようになり、はっきりした理由もわからず勝手に涙がでてくるようになっていました。

内省する中で、「少しでも働けばよい方向に向かうのではないか」という答えに行き着き、子どもたちを寝かしつけたあと、求人情報をみるのが日課に。

ただ、大きな壁がありました。

最初にぶつかった壁は、2歳と0歳の子どもたちの預け先です。距離などの問題で両親にみてもらう選択肢はなく、あらゆる情報を探した結果、最安で預けられる選択肢は、子ども1人あたり1時間700円で預けることができる、ファミリー・サポートでした。

ファミリーサポートとは、子供の送迎や預かりなど、子育ての援助を受けたい人と援助を行いたい人が、地域で相互援助を行う仕組みのこと。

つまり、時給1,000円のパートをするために、未就学児の子ども2人預けるのに1時間1,400円の費用がかかります。完全に赤字です。

少しでも働きたいを叶えるためには、お金を支払う必要がありました。

それだけでなく、時間の融通のつく仕事は限られていて、子育てをしている私には、職業を選択できる権利がないと突きつけられているようでした。

あれ?私は何のために働くんだっけ?
子どもとの時間を優先するために専業主婦になったのに、何に時間を割こうとしているんだ?しかも、働いても赤字だぞ?

働くことは無駄かもしれないと、諦めようと思いました。

でも自分の心の奥底にある、不安や焦りをこのまま無視することもできませんでした。夜泣いてるお母さんよりも、心の奥底から笑えるお母さんになりたいと思うと、諦めることができませんでした。

働いてお金そのものが欲しいというより、お金をもらえる価値あることをしたかったのだと思います。

はじめてのファミリーサポート

何度も悩んだ末、働く前準備として、まずファミリー・サポートに登録することを決めました。

ファミリー・サポートもすぐに利用することはできません。月に3回開催される説明会に参加し、サポートしてくれる方と事前打ち合わせしたあとに日程を決めて、やっと利用可能に。

説明会もオンラインではなく集団でのリアル開催。子どもたちを連れて電車で会場へいき、1時間の説明を受ける必要があって、想像すると気が重くなりました。正直。ここまでする必要あるのか?というゆらぐ気持ちも沸いてきましたが、「ある!」と自分に強く言い聞かせるようにしました。

登録、事前打ち合わせを完了し、やっと利用できるようになりました。まずはお試しに、下の子2人を1時間だけ預けてみました。

ドキドキしながら、自宅から自転車で10分もかからない距離に住んでいるベテランのママサポーターさん家に子どもたちを連れていきました。

子どもたちは2人一緒だったこともあってか、泣かずに楽しく遊んで過ごしていたとのことで、なんとか、預け先は確保できそうというところまで進みました。

赤字覚悟で働くと決めた

肝心の仕事に関しては、シフト制ではないものを探しつづけました。在宅で気軽にスタートできそうなオンラインで人と話すサービスをみつけて、ひとまず登録。

気軽なのはいいが、時給制ではなく成果報酬型でした。つまり、1時間子どもたちを預けるために1,400円支払っても、収入が0円ということもあり得るのです。

確実性のある時給仕事か、収入は不安定だが時間にしばられない成果報酬仕事か迷いました。ただ、子どもがいつ体調を崩すか分からないので、時間の融通がきく、後者を選択しました。

下手したら赤字です。それでもやると決意しました。

人からするとたかが1時間1,400円と思うかも知れませんが、それ以上の覚悟がありました。わざわざ専業主婦になったのに、わざわざ他人に子どもを預けて、働くことに何の意味があるのか。自分でも答えはわかっていませんでした。

だから、やるからには全力で結果を出すと腹をくくっていました。

やると決めたら、あとはとにかく実行するだけ。成功方法のブログを読み漁り、一つずつ試しました。嫌なことを言われても、馬鹿にされても、笑顔で流して、歯を食いしばってきました。

週に1、2日、最大3時間まで子どもたちの体調などに合わせて預けて働きました。もちろん最初は赤字だったり、日によって波があったりもしましたが人生そんなに甘くないと気にとめないようにし、継続しました。

徐々に、結果が出てくるようになり、安定して赤字ではなくなりました。

人に喜んでもらって、お金をいただくことができるようになったことが、泣くほど嬉しく感動したのを今でも覚えています。

大きな収穫は、お金よりも、自信でした。

子育てにも今まで以上に、前向きに取り組むことができるようになり、不安や虚無感もなくなっていました。

預け先がない、預けても赤字、条件にあった仕事がないなど諦める理由を探せばたくさんあります。やったことない事をはじめるのはとても勇気も必要でした。非効率的で、もしかしたらすべて無駄なことかもしれないという考えも脳裏をよぎりました。

それでも、できるから一歩踏み出すのではなく、やりたいから一歩踏み出すからこそ、新しい道が開けるのだと思います。

「赤字でもいいから、働きたい」という切実な願望。
働きたくても、働く選択肢がこんなにも少ないのかという社会に対する絶望と、それを乗り越えた先にみつけた働くことがこんなに楽しいことなのかと感動した原体験。

それが、「働く選択肢をつくる」というLivelyを創業する原動力となっています。

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